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- 【実践発表】1人1台環境の実践から(2)タブレット端末1人1台の環境における実践
ICT支援員の時間割を作成、全教室を支援
3人のICT推進リーダーで活用を推進
本校では普通教室、特別支援学級、特別教室、体育館の計30教室に無線アクセスポイントが設置されています。指導者用デジタル教科書は、国語・算数・理科・社会4教科全学年分と、5、6年には外国語も導入されています。さらに、文部科学省が開発した学習者用デジタル教科書も導入され、実証を重ねています。
ICT活用を促進させるために、低・中・高学年に各1名のブロックリーダーを置き、その3名が中心となり、機器やソフトウェアの使い方の研修、新任者への研修、夏休みには集中研修会も実施しました。
ICT支援員は1名配置されており、全21学級を週1回1時間、必ず支援に入っていただけるようにICT支援員の「時間割」を作りました。授業に入っていただくことで、先生方は安心して授業を行え、ICTの活用意識が高まりました。また、授業での活用方法についてのアドバイスや、年度当初には、先生方と協力してすべての教室で子どもたちに電子黒板やタブレット端末を使うための「きまり」を指導してもらっています。
3年:タブレットに調べたことや考えをまとめる
社会の「町の探検」でグループごとにタブレット端末を持ち、校外に出かけ、町の様子をタブレット端末のカメラで撮影させました。
学校に戻り『SKYMENU Future School』の[もぞうし]機能を使って、画面上の共有ワークスペースにグループで色や字の表し方、写真を貼り付けるなどの工夫をして上手にまとめていました。1人ひとりがそれぞれに書き込めるので、より素早く、効率よくまとめられました。
算数でも、子どもたちが[もぞうし]機能を使って自分の考えを書き、電子黒板で提示しながら発表しました。先生は、発表を聞きながら板書して、子どもたちの考えをまとめるなど、デジタルとアナログをうまく使い分けた実践が展開されていました。
4年:カメラ機能で草花や実験の様子を撮影
理科で、季節を感じられる物をタブレット端末のカメラで撮影しました。季節ごとの写真を撮りため、3月に1年間の記録をまとめました。また、電気の流れの学習では、グループごとに1台のタブレット端末を用意して、各グループの記録者が実験記録を[もぞうし]機能に書き込みました。書き込んだ内容は、すぐに電子黒板に表示できるので、一斉に結果を共有でき、非常に効率的でした。
6年:タブレットで資料画像を拡大表示
社会で、縄文時代の様子を表した資料画像を、教員機から子どもたちのタブレット端末に一斉配付し、それを参考にタブレット端末で縄文時代の様子を検索させました。画像を拡大表示することで、今までよく見えなかった詳しい様子が見え、新しい発見をする子どももみられました。
家庭への持ち帰りや交流学習でも活用
タブレット端末の家庭への持ち帰りも実施しました。学校で習ったことを生かしながら宿題に取り組んだり、新たな挑戦をしてみたりと、子どもたちは非常に興味を持って取り組みました。県外の3校のフューチャースクール校と交流学習も行いました。初めは子どもたちも緊張した様子でしたが、慣れてくるとさまざまな質問が飛び出し、楽しく交流できました。
課題解決のための学び合いにつながった
ICTをほぼ毎日活用、活用教科が広がる
これまでの3年余りの実践から見えてきた成果としては、①全クラスで支援員なしでもICT機器を活用する授業が増えたこと。②タブレット端末上に作った問題をクラス内で共有し、課題解決のための学び合いにつながったこと。③電子黒板を指し示して、わかりやすく説明する力が培われたこと。④タブレット端末とノートを意図的に使い分けるようになったことが挙げられます。
また、平成22年度と平成23年度に先生方にとったアンケート結果からは、ICT機器の活用が、ほぼ毎時間すべてのクラスで行われるようになるとともに、さまざまな授業で機器を活用する先生が増え、活用の幅が広がってきたことがわかります。
課題としては、①ICTの利活用のための研修が多く、先生方の負担が重くなったこと。②ソフトウェアによって、機能の使い方が違ったり、データの保存が煩雑だったりすること。③学習者用デジタル教科書の不備や不具合が多く、授業の進行に支障が出たことがありました。
今後は、教師が、単元のどこで、どんな機能を使って学習させると効果的なのかを十分に研究を行い、児童の意欲や学力向上につなげていくことや学年に応じた操作スキルはどの程度がよいのかリテラシーを明確にすること、ICT支援員による授業支援を一層充実してくことも重要であると考えています。
ペンずれ、充電器の劣化など、2年目からトラブル増える
効率化、個別指導の充実、表現力の育成に効果
ICT環境が導入された効果として、①授業準備が効率化したこと。②個別指導がやりやすくなったこと。③子どもたちの理解状況や進度が把握しやすくなったこと。④カメラ機能を使った表現活動や創作活動が増え、表現力が高まったこと。⑤タブレット端末で資料を作成することで構成力や資料活用力がついてきたことがあります。
課題としては、①子どもたちは、慣れによって利用が粗雑になってきたこと。②機器の活用が増えたことで、タブレット端末の充電器の劣化が進んだこと。 ③電子黒板・タブレット端末・カメラ機能の不具合や修理が増えたことがあります。
具体的には、キーボードのキートップが外れたり、ハードディスクの故障やそれが原因でソフトウェアが起動しない、カメラ画面が反転したりする事例もありました。特に「ペンずれ(ペンと画面の座標位置ずれ)」はひどく、何度も調整が必要でした。2年目からは、ペンずれを直すソフトウェアを入れ、授業の合間にペンずれを直させるといったこともありました。タブレット端末の連続使用可能時間も年々減っています。2年目ごろから、少しずつの充電パックを交換しています。
FS環境がない学校に異動するのが不安
3年間で教師の意識に変化
導入当初は、教師がICT機器やソフトウェアの操作に慣れず、機器を活用することにためらいがみられました。しかし、デジタル教科書の使いやすさやノート・資料・動画等の効果的な提示、子どもたちの意欲や集中力の高まり、楽しく取り組む姿に触発されて徐々に活用が広がってきました。子どもたちにとっても、電子黒板やタブレット端末を活用することでわかりやすく楽しい授業ができたという意見が多く、効果を実感しています。
3年間、フューチャースクールの環境で過ごした教師、児童は、ICTを使うことが当然のようになりました。特に先生方からは「フューチャースクールの環境がない学校に異動するのが不安」という意見も挙がっています。先生方の意識が大きく変化してきたことが、本事業の最大の成果であると思います。
これからの授業、これからの教室を考える タブレット端末の整備動向、活用実践を踏まえて
中川 一史 放送大学教授(コーディネーター)、坂 惠津子 大阪市教育センター総括指導主事
村井 万寿夫 金沢星稜大学教授、岩﨑 有朋 鳥取県岩美町立岩美中学校教諭
タブレット端末活用セミナーレポート
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タブレット端末の整備動向、活用実践を踏まえて
中川 一史 放送大学教授(コーディネーター)、坂 惠津子 大阪市教育センター総括指導主事
村井 万寿夫 金沢星稜大学教授、岩﨑 有朋 鳥取県岩美町立岩美中学校教諭
(2013年月7月掲載)