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セミナーレポート タブレット端末活用セミナー

討論を通じて公害(四日市ぜんそく)とは何かを再考する~タブレット端末を活用してグループで1つの見解を出す~

学年、教科・領域、実際に利用したICT環境

授業の様子

自分事として公害を捉え直し、議論

5年社会「わたしたちの生活と環境」の補助教材として、「公害をこえて」という教材が準備されています。本実践では、この教材を補充・応用として授業に取り組みました。四大公害病を理解するだけではなく、主として四日市ぜんそくを扱いながら、討論をとおして、当時の人々のジレンマ、そして環境を守ることの真の大切さを感じてほしいと考えました。

単元は5時間計画で、タブレット端末は4時で活用しました。4時では学習課題を「当時の四日市の人々は、石油化学コンビナートができることに賛成したか、反対したか」としました。

授業前半は賛成派、反対派で討論を行いました。反対派からは「私は反対したと思います。こんなにもひどい病気になり、苦しむことに賛成するなんてありえないと思います」などの意見が出され、賛成派からは、「私も賛成したと思います。このころは高度経済成長という時代だし、工場ができれば働けるし、給料が増えるだろうから賛成したと思います」などの意見が出されました。その後、四日市市市歌をとおして当時の人々の思いに迫り、当時の人々にとって公害とは何であったのか再考させました。子どもたちは「公害とは何か」はすでに学習しているが、当時の人々の思いに寄り添い、公害を自分事としてとらえた上で、公害をどのように定義付けるのかを考えさせたいという教師の思いがありました。ここで協働的な学びとして、タブレット端末を活用しました。

班で意見を交わし、タブレット端末にまとめる

タブレット端末を囲んで班の意見をまとめる。意見が活発に交わされる班4人で話し合わせ、結論をタブレット端末に書き込ませました。タブレット端末という、ICT機器を中心にして、話し合いが積極的に行われました。

岩﨑先生の実践発表にあったように「制限」や「枠組み」を、私も大事にしています。ここでは、公害について一文でまとめるように指示しました。枠があることで、どのような言葉を入れようか、今までの学習を一言でいうならば、どう伝えればいいだろうか、と子どもは一生懸命考えます。

教員用のタブレット端末では、全部の班の様子が見てとれます。停滞している班、あるいはまとまらない班、一本化できない班には私が助言に入っていきました。助言は、みんなの話を整理し、これは共通しているから大事なのではないかと伝えてあげました。

また、まとめでは、限られた時間の中で10班全部発表とはいきません。私は、似ているけれど違うことを言っているグループを取り上げて、「似ているけど違うよね。どこが違うんだろうね」ということを返しながら、授業を進めていきました。

教員機画面で各班の状況を把握し、吟味

教員機で、各班のタブレット端末画面を一覧で確認できる本実践は、10班で行いましたが、限られた時間の中ですべての班の状況をつぶさに見ることは至難の業です。そんな中、教員用タブレット端末で各班の書き込みの状況がわかり、どのようなことを書いているかを把握できました。支援が必要な班に対して、必要なだけの支援をしてあげたい。逆に、しっかり考えてまとめつつある班に私が口をはさむことによってより混乱させてしまうこともあります。そう思うと、タブレット上で状況を把握し、効率的に動き回れるということは非常によかったと思います。

授業時間の45分できっちり収めるということにも成功したと思います。

「試行錯誤が容易」「すぐに発表ができる」

私は、子どもたちがタブレット端末を活用するメリットを次の2点と考えています。

1つは試行錯誤が容易であること。本時で、タブレット端末を使わない場合、おそらく画用紙を細長く切って、短冊にして、ペンを各班に一本渡して書かせていたと思います。そうすると、書き始めるまでに、時間がかかる上に、書いたら最後、もう消せなくなってしまう。タブレット端末を使えば、何度もやり直しができ、あるいは子どもたちの意見が変わるたびに、よりよいものになっていきます。

ボタン一つで、電子黒板にタブレット端末の画面を送信そして、もう1つは電子黒板への画面送信が容易で、すぐに発表できることです。ホワイトボードにしろ、短冊にしろ、前に持ってくるだけで多少時間がかかってしまう。タブレット端末と『SKYMENU Class』があれば教員機から、電子黒板に送信する、その一つの行為だけですぐ発表できる。

ICTを活用していると、授業が止まってしまうという話を聞きますが、今回の授業に関してはそのようなことはありませんでした。むしろ、電子黒板への転送も含めて、スムーズに進んでいました。学び合う子どもたちの姿を作り出すのに効果的であると思いました。そして、このような仕組みを活用しながら、学び合いを促進するような教師が、これから求められると、この授業を通して感じました。

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(2013年月6月掲載)