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セミナーレポート タブレット端末活用セミナー

「大地は語る」ボーリングの結果から地層の重なり具合を推測せよ

学年、教科・領域、実際に利用したICT環境

授業の様子

班1台タブレットで、撮影、推測、発表

本実践のねらいは、「地層モデルのボーリング結果に基づいて、地層の重なりを説明できる」としました。海や湖に堆積した砂や泥が重なり、それぞれ広い範囲で長い年月をかけて地層は形成されています。教科書では、広島市の街の下に広がる地層の様子を、ボーリング結果をもとに紹介していますが、それでは分かったつもりで終わってしまう。実際に自分たちで寒天地層モデルをボーリングし、その試料をもとに地層の重なりを体感しながら推測する力をつけるために本実践を行いました。

4色の寒天地層を用意し、ストローで任意の5カ所にボーリング。そして取り出した試料を並べ、地層のつながりを推測させました。そのとき、班1台のタブレット端末を活用しました。

各班で寒天地層モデルをボーリング

写真を比較し、考察を深める

中学校理科学習指導要領の解説には、根拠を示して考察させたりすることがポイントと書かれています。タブレット端末を使って、ほかの人に説明するときに、自分たちの説明を裏付ける証拠写真を撮影するように指導しました。

比較表示画面右図では、2つボーリングの試料が並んで表示されていますが、『SKYMENU Class』では写真を並べて比較表示ができます。生徒たちは東西方向と南北方向で撮影した画像を比べ、地層のつながりを[マーキング]機能で書き込みながら考察を深められました。

このようにタブレット端末と『SKYMENU Class』を組み合わせれば、撮影、加工、画面転送を、教師の手をまったく介することなく行えます。生徒が自分たちで解決し、自分たちで発表できます。私は非常にゆとりを持って各班の活動を見守れました。また、生徒たちは、自分たちで撮影、加工し、画面転送で発表することをとおして、「何を伝えないといけないか」と自ら課題を把握し、撮影したものが証拠画像になり得るのかどうかを吟味していました。そして、証拠を示すために、マーキングでわかりやすく線を引いたり、半透明の色を使ったりして工夫している班もありました。短い時間で中身の濃い学習ができました。

画面をすばやく共有・把握

[画面転送]機能で、全員に見せるために電子黒板に転送したり、例えば1班の端末画面をほかの班の端末画面に転送したりして、全員で1班の内容を吟味できました。そして、教員用端末では各端末の作業状況をリアルタイムに確認できるので、「こっちの班はもう2つ並べて見ているんだな」「こちらの班は1つの画像について吟味しているんだな」と状況を詳しく把握できます。

干渉する目的ではなくて、特に遅れがちのところに支援にまわる、全体を把握する、という意味で有効です。台数が増えれば増えるほど、効果があると感じています。

端末にデータが残らないから安心して使える

これまでにさまざまなタブレット端末を活用して実践してきましたが、一番困ったのは、端末に保存されたデータの管理です。例えば、1年1組の授業でタブレット端末を使い、10分後には3組で授業がある。同じ内容で授業をするのですが、各端末には、前の授業のデータがまだ残ったままになっていて、次の生徒たちに見えてしまうのです。

しかし、今回利用した『SKYMENU Class』は、ユーザ管理を行えるので、各組の班ユーザでログオンすれば、校内のサーバ上の各班専用のフォルダに撮影した写真やデータを保存できます。端末にデータが残らないので、次の授業でも安心して使えました。

普段から「話す」「聞く」「書く」を積み重ねる

タブレット端末の活用にあたっては、アナログ場面での指導が大事だと思っています。これまで生徒たちには、班で1枚のホワイトボードを使わせ、とにかく書き、人の話を聞いて、書き換える。これを繰り返し指導しました。

受け身だった生徒たちも、自分たちが話さないと進まないことを理解し、少しずつできるようになってきました。このようなアナログ場面での積み重ねがあって、初めてタブレット端末が授業で活きる。

「制限」をかけることで、工夫が生まれ、知恵が伸びる

理科の授業であれば、各班に1台のタブレット端末で十分です。台数を制限し、中学生が男女の恥ずかしさなどを超えて、頭を突き合わせて学習する意味でも必要なことです。

発表するときは原稿を持たないように「制限」しています。「制限」をかけることで、工夫が生まれ、彼らの知恵が伸びる。

また、自分の意見が受け止められるという安心感がある中で、かかわり合い、よりよくなるという協働の経験を積ませておくことが重要です。例えば、自分の考え、他者の考えを合わせて、班の最適解を求める時に「どうしても伝えたいから、画面に映し出して説明したい」と切実感を持ち、自分の言葉で表現できるようになります。

授業の体感速度が変わった

最後に、私自身の感想ですが、授業の体感速度が変わりました。今までは1時間かけて指導していた内容が、少し早く終わるようになりました。より新しい発想で授業を組まなければならないと感じています。

また、生徒たちはすぐにタブレット端末を使いこなします。生徒に操作を説明してもらうなど、デジタルネイティブの習得能力の高さをうまく使うことも大事です。これからは、子どもたちから授業のアイデアや意見を集め、授業づくりに参画させたいと思っています。

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(2013年月6月掲載)