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富山市では、実物投影機や電子黒板が日常的に使える環境になっており、どの学校でも、ICT機器がごくごく当たり前に使われています。「ICTが日常になる」、私たちはすでにそう考えています。
タブレットPCなどの情報通信技術の革新とともに、教室の環境も変わりました。しかし、よくわかる授業をいかに工夫するかという教師の授業づくりに関する考え方は変わっていません。教育工学の考え方の中に、テクノロジーが教育の方法を変えていく後押しをする、というものがあります。テクノロジーが変わることで、学習環境も教育の方法も変わっていくのです。同時に、教師の意識が新たなテクノロジーを生み出します。教師が「もっと効果的で、よくわかる授業をしたい」と考えることが新しい技術を生み、そしてその技術で、また新しい教育方法が生まれていくというサイクルが理想的です。教師が、「一日の授業で、今日より明日、明日より明後日、児童生徒の何が問題で、どう改善していくか」といった、イノベーションの意識を持ち、既存の伝統的な教育方法に対して改革していくというマインドが、教育を変えていくと思います。
例えばノートは、書いたもの、文字や絵しか共有できませんが、そこにテクノロジーを使うことで、写真や動画、さらにそれらを動的に動かしながら説明できます。ICT環境が日常になれば、今までやっていたことを、より効果的・効率的にでき、その結果として児童生徒の考えを深める時間を増やせます。
工業社会から知識基盤社会に変化する中で、型にはまった問題を解けることも重要ですが、これからはそれだけではなくて、「複雑で新しい問題をどうやって解決していくか」という問題解決能力をどう育てるかが課題になっています。アクティブ・ラーニングなど、自分で新しい問題に挑戦していく力と同時に、ICTを活用する力、グローバル社会に対応できる言語力や表現力が必要となります。
また、授業形態について、先生が主導する伝達主義的教授法に対応した授業や、児童生徒が中心になる構成主義的な学習方法に対応した授業などがあります。どちらが良い悪いという問題ではなく、学びを広げるという観点では、どちらも必要です。教えるべきことは、教師がしっかり教えるべきですし、児童生徒主導で考えさせること、 それも必要です。
児童生徒が中心だからといって、自分たちで課題を見つけ、自ら解決するという活動だけでは困ります。課題が追求に値する課題になっているか、その活動を通してどのような能力を習得させるのか、教師がしっかりと把握し指導することも、学びを広げるうえで非常に大事です。伝達主義的な教授法であっても、例えば、何を電子黒板に映せば児童生徒たちはわかるのかを考える、これはやっぱり教師の指導力だと思います。
ICTの技術はどんどん進化します。しかし、教師は、流行を追いかけるのではなく、変わってはいけないものが何なのかを知らなければなりません。一方で、自らの教育方法をどのように変えられるのか。私たちは常に学び続けることを求められています。
研究会レポート 全国教育工学研究協議会全国大会 JAET2015 富山大会
【基調講演】広げよう学びの世界 − Innovation & Challenge in Toyama −
山西 潤一(富山大学教授 / 日本教育工学協会常任理事)
公開授業、シンポジウム、ワークショップ
【講演】学びの世界を広げるICTへの期待
堀田 龍也(東北大学大学院情報科学研究科教授)
(2015年12月掲載)