ICT活用教育のヒント

解説茨城県那珂市立芳野小学校 黒羽 諒 教諭の実践から学ぶ【Part2】 ICTを「文房具のように」活用する青写真を各学校で描いてほしい

本稿では、質的変容を遂げつつある黒羽学級の子どもたちの学びや黒羽教諭の働きかけについて着目し、その意義や今後の方向性を確認する。

小林 祐紀
茨城大学 准教授

学習のためのインターネット利用にあたって

黒羽教諭の勤務する自治体では、取組時点においてWi-Fiは整備されていない。したがって、接続速度や安定度にやや不安のあるモバイルWi-Fiの利用ではあるが、いよいよ子どもたちのインターネットデビューを迎えた。当然、家庭において動画配信サイトを視聴したり、オンラインゲームで遊んだりした経験を有する子どもたちは複数いるだろう。しかしながら、オンラインの通信教育を除けば、学習のためにインターネットを利用する経験はそれほど多いとは思えない。だからこそ、黒羽教諭もかなり慎重にインターネットの活用を進めようとしている。

インターネットの特徴を分かりやすく指導することに留まらず、基本となる検索方法についての解説も同時に実施している。また前回に引き続き、機を捉え学習のためのツールであることを教師自身の言葉で語っている。このような場面における教師の語りは重要であり、指導するべきことは指導するという、黒羽教諭のぶれない姿勢を確認することができる。

黒羽学級で活用されているポケットWi-Fi

情報モラル教育、情報教育全体計画の見直しの必要性

1人1台の教育用コンピュータの活用により、これまでの情報モラル教育の展開は再考される必要性があるだろう。情報モラル教育に関しては、情報モラル教育を「情報社会の倫理」「法の理解と遵守」「安全への知恵」「情報セキュリティ」「公共的なネットワーク社会の構築」の5つに分類し、小学校低学年、中学年、高学年、中学校、高等学校の5つの発達段階に応じた指導目標を示した「情報モラル指導モデルカリキュラム」が公開されている(文部科学省 2007)。それによると、例えば「情報には誤ったものもあることに気づく」、「情報の発信や情報をやりとりする場合のルール・マナーを知り、守る」といった指導内容は小学校3年〜4年の中学年と想定されている。あくまでもモデルカリキュラムという位置づけであるがゆえに、アカウント認証の重要性と正しい利用法の理解等も含めて、必要に応じて下学年に指導内容を移行させるといった見直しがすべての学校において求められるといえよう。

文部科学省(2007)情報モラル指導モデルカリキュラム(2021年2月7日確認)

子どもたちの使いたいという思いを尊重する

インターネットの利用に限らず、自習時間の活用においても黒羽教諭の一貫する指導原理を確認することができる。それは「子どもたちの使いたいという思いを尊重する」というものであり、たとえ使っている内に、遊びになってしまったとしても、注意を促すに留め、決して使わせないという選択肢を採用しない。この点は非常に重要だと考えている。使わせない(一部機能を利用させない)ことは、一時的には問題行動を減少させる。しかし、使わせないという選択肢を採用することは、子どもたちにとっては使い方を学ぶ機会を逸することを意味する。整備が進み、活用当初の数年は多少の混乱はどうしても起こりうる。だからこそ、段階的に使用する機能を定めることを含めて、ICTを「文房具のように」活用する青写真を各学校で描いていくことを求めたい。

自習時間にタブレット端末を活用する児童

持ち帰りのスタートは慎重に、かつ大胆に

いよいよ黒羽学級においては、インターネットの利用に続き、タブレット端末を各家庭に持ち帰り、家庭学習と教室における学習をシームレスに展開するための準備を始めている。家庭に持ち帰ることで起こりうるトラブルや不慮の事故はもちろん、家庭のネットワークに接続することへの保護者の理解等は家庭への持ち帰りを進める上で必要不可欠である。保護者に不信を与えるようなことがあると、期待する取組を実施できない事態に陥ってしまう。したがって、できる限り慎重に、丁寧に進めるべきであろう。

一方、準備が整い、タブレット端末を持ち帰り始めた際の実践は、段階を意識することも必要であるが、大胆に進めていきたい。紙幅の都合で多くを語ることはできなかったが、「家庭学習と教室での学習をシームレスに展開する」取組や、「学習の個性化」を意識した1人1台のタブレット端末活用「充実期」を迎えた子どもたちの学びがどのように展開していくのかとても楽しみにしている。

(2021年1月取材 / 2021年5月掲載)