ICT活用教育のヒント

Q&A オンライン教育と著作権よくあるご質問

前回に引き続き、2020年4月28日より施行された改正著作権法第35条について解説します。前回では法改正のポイントや授業目的公衆送信補償金制度についてご説明しました。今回では、教育の現場における著作物の取り扱いについて、具体的な事例に即してよくあるご質問とその回答をご紹介いたします。 本稿は『改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)』に基づいてまとめたものです。

野方 英樹

一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS) 理事

教科書を用いた(紙面や映像等を映す、スライドを映す、音声を聞かせる、音読する)授業を撮影した動画を配信したいのですが、指導用デジタル教科書はいかがでしょうか。

著作権者等の許諾を得ないでできる著作権法第35条の対象となる動画の配信は、授業が行われる単位の児童生徒への配信に限られます。補償金制度の下では、授業を撮影した動画に教科書に掲載されている著作物が映ったり、指導用教材の音声や映像等が入ったりしても、通常の場合は大丈夫です。先生が教科書を掲げる、読み上げる、パワーポイントのスライドに埋め込むなど、当該授業の過程でその目的の範囲であれば利用の方法は問いません。
指導者用デジタル教科書も指導者用デジタル教材も指導用教材の一種ですので、同様の利用方法が可能です。なお、学習者用デジタル教科書については、当該児童生徒分を購入していれば、同様の利用方法はもちろん、著作権法第33条の2により、児童生徒に対して直接配信することも可能です。いずれの場合も詳細は運用指針をご覧ください。

教科書の教師用指導書中の提示用資料や児童生徒配付用資料を用いた授業をオンライン配信することには著作権者等の許諾が必要ですか。

必要ありません。条件は教科書と同じです。左の回答をご覧ください。なお、教師用指導書(付属ディスクを含む)掲載の資料のうち何が児童生徒配付用のものであるかについては、利用規約・使用許諾書等を確認なさったり、発行会社へお問い合わせになったりしてください。

児童生徒がすでに購入している直接記入する問題集、ドリル、ワークブック、テストぺーパー(過去問題集を含む)等の資料に掲載されている著作物を問題解説などのためオンライン授業で映すことは著作権者等の許諾を得る必要がありますか。

児童生徒等がすでに購入しているものを映し出すだけであれば、「小部分」の利用であれば著作権者等の許諾を得なくても映すことは可能です。ただし、それらが掲載されている資料の購入等の代替となるような形でコピーや公衆送信する場合は許諾を得てください。

オンライン教育でYouTube等の動画共有サイトを使う場合、注意する点を教えてください。

著作権者等の許諾を得ないでできる著作権法第35条の対象となる動画の配信は、授業が行われる単位の児童生徒への配信に限られます。学校のWebサイトもそうですが、何の制限もせずに、インターネット上にアップロードしてしまうと誰でもアクセスできてしまうため、許諾を得る必要が生じます。限定配信の機能を用いるなどして、配信先を限定してください。

※YouTubeの場合、著作権侵害防止のための仕組みの働きにより、動画に使われている著作物によっては、第35条に沿った利用であっても権利侵害等の警告が表示されたり、広告が表示されたりする場合があります。これはYouTube側の仕様によるもので、現状での回避は難しいことをご理解ください。

教育委員会がこの制度を利用して、著作物を公衆送信することはできますか。

この制度の対象となる主体は、著作権法第35条第1項において「教育を担任する者及び授業を受ける者」と規定されています。このため、個々の教員や児童生徒等ではなく、教育委員会等の組織が主体となる場合は、この制度の対象外となり、権利者の許諾を得る必要があります。なお、新型コロナウイルス感染症対策による休校期間の学習のための著作物利用については、著作権者が特別の配慮をしている場合もありますので、関係の著作権等管理事業者等にお問い合わせください。

一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会 SARTRASは、オンライン教育推進と著作権保護の両立をめざしています。ぜひ、ご理解とご協力をいただきたくお願いします。なお、誌面に掲載できなかった質問については、Webサイトでご紹介しておりますので、ご参考にしてください。

SARTRAS Webサイト:https://sartras.or.jp/


(2020年12月掲載)