ICT活用教育のヒント

SKYMENU Cloud 新機能[気づきメモ] 仲田 祐也 茨城県 緑桜学園 那珂市立芳野小学校 教諭の実践を振り返って教科の力と情報活用能力を両輪で育む

学習指導要領において、学習の基盤となる資質・能力として、言語能力、問題発見・解決能力とともに情報活用能力が位置づけられ、教科横断的に育む姿勢が一層強く打ち出されました。そしてGIGAスクール構想の実現によって、学校のICT環境が整備されたこともあり、これまで以上に学習者自身が主体となって情報手段を活用する学習場面を想定することが重要になってきました。けれども、学校現場からは、情報活用能力を育む授業について「具体的なイメージを持ちにくい」といった声も聞かれます。
本稿では、授業を参観させていただいた茨城県の緑桜学園 那珂市立芳野小学校 仲田 祐也 教諭の実践を振り返って、新機能[気づきメモ]の活用ポイントや情報活用能力の育成について考えます。
※[気づきメモ]機能は開発中です。仕様や画面は、予告なく変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。

佐藤 幸江

放送大学 客員教授

探究のスパイラルで情報活用能力を育成

社会科や総合的な学習の時間は、目的や課題意識をもって情報を収集し、整理・分析して、自分の言葉で考えをまとめるという一連の学習活動を通じて、子どもたちが情報活用能力を発揮できる時間です。

仲田先生は、「わたしたちの生活を自然災害から守るために、どのようなことが大切だろうか」をテーマに、子どもたちに災害を複数の視点から追究させ、収集した情報を[気づきメモ]に記録。様々な手段で収集した情報(メモ)をまとめて振り返る学習活動を設定することで、学習の内容に迫りつつ、どのような情報が重要なのか、何がキーワードなのかを考える力も鍛えていました。さらに、このような追究する学習活動を単元計画の中で4回(4時間)設定されており、繰り返し追究させることで、いわゆる「探究のスパイラル」をつくられていました図1

[気づきメモ]を、情報の共有や情報を取捨選択するツールとしてうまく授業に取り入れ、社会科の見方・考え方を育みながら情報活用能力をも身に付けさせていました。とてもうまい授業展開だと思います。

図1探究のスパイラル
[出典]文部科学省【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

メモのリアルタイム共有を生かし、対話を充実させる

さらに[気づきメモ]の[グループメモ]機能を使ってつなげれば、子ども同士でお互いの気づきを閲覧できます。友だちが目的を達成するためにどのような情報を収集しているのかを知ることができるわけです。「なぜその情報を選択したのか」「どのような考えを持っているのか」と気になった子は、友だちの席に行って対話しながら取り組んでいました。

情報を共有する時に、他者との「対話」は重要です。画面上で「この情報がいいな」と友だちのメモを単純にコピーするのではなく、メモを見て「どうしてその情報を持ってきたのだろうか」「このグラフや表から、どうしてそう思ったのか」を考え、友だちとの対話を通じて自分の理解にするのです。仲田先生が一つの単元の中で何度も追究させることで、対話をたくさん経験させていたのは、素晴らしい点です。

なお、低学年などでは手書きで残したメモでは、読み返して文字が読めないとか、メモだけではうまく相手に説明できないという場合があります。[気づきメモ]は、写真や画像もメモとして残せるので、対話の場面でうまく使ってほしいと思います。もちろん、こうした仕組みを有効に活用したとしても、子ども同士の対話まで発展しにくい場合もあります。そうした場合は、教師が対話の場面を意図的に作ることが、重要です。「友だちの情報でどんなところ良かったか」「なぜ良いと考えたのか」「こういう考えをもっている人がいるのだけれど、みんなはどう?」など声をかけて対話を促すと良いでしょう。

先生の『いいね』で、子どもの背中をそっと押してあげる

仲田先生は、子どもたちが追究をしている間、教員機で[気づきメモ]の画面をチェックし、大事な情報を発信している子に『いいね』を付けていました。学びのプロセスの中で、学習者の学びを見取ってすぐに評価できる[気づきメモ]の優れた機能の一つです図2

先生から『いいね』をもらった子どもたちは、うれしそうでした。これまでの授業であれば、子どもが書いたことや考えたことを教師が確認して、評価してあげられるのは、1時間で数名程度だったと思います。けれども[気づきメモ]を使えば、子どもたちのさまざまな気づきに目を通して、『いいね』で瞬時に評価を返せます。「この子は、前時よりもよく気づけるようになっている」「いつも積極的に発信しない子がメモをしているから『いいね』で応援してあげよう」という配慮もできるわけです。『いいね』という小さな働きかけで、子どもは自信をもち学習に関われるようになります。うまく使いたい機能です。

図2

[気づきメモ]から[発表ノート]へメモ(情報)を取捨選択し、まとめる

授業の終末では、友だちや自分のメモを振り返り、情報を整理。本時の追究によってどのような考えを持ったのかを[発表ノート]にまとめ、提出させていました。[気づきメモ]は、[発表ノート]にすぐデータをコピーできるので、この仕組みをうまく使って学びのまとめや振り返りをさせていました。従来の、紙で振り返りやまとめをする際に単に「書き写す」という時間を省ける、優れた仕組みだと思います図3。問題解決のプロセスの中で「情報活用能力」を育み、さらに振り返りや教師の評価にも生かせる。[気づきメモ]の活用メリットがよく伝わります。

図3

教科書や資料集で調べることも重要。撮影して記録、共有

情報活用能力の育成の視点として、仲田先生がまずは教科書や資料集で調べることを大切にしていたことも見逃せないポイントです。子どもたちは教科書を読んで大事だと思った情報を抜粋して[気づきメモ]に入力したり、図版や写真を[カメラ]で撮影したりして、記録していました。教科書や資料集は、子どもたちの「知りたい」が詰まった宝の山です。そこを起点にして、そこでも分からないこと、もっと調べたいことをインターネットなどで調べさせてほしいと思います。

メモをたくさん取って言語化して記録しておけば、メモが第二の脳のように機能してくれます。[気づきメモ]の登場によって、メモの情報を友だちと交換できたり、まとめに使えたりと、メモするという行為の価値が飛躍的に高まったと思います。私たち大人も会議や打ち合わせなどで使えば、役立つように思います。

子どもの「気づき」を生かし、誰一人取り残さない学びへ

ここまで仲田先生の授業から[気づきメモ]の活用について見てきましたが、[気づきメモ]を活用できる場面は、授業以外にもたくさんあると感じました。例えば、朝の1分間スピーチで、発表を聞きながら気づいたことや感想をメモにして共有するといったことでも使えると思います。「私のスピーチで、みんながこんなに考えてくれたんだ」ということが分かれば、スピーチを楽しく感じられるでしょう。

学級会などで活用も工夫できると思います。これまでの学級会では、説明された原案について、特定の声の大きな子だけが質問したり、意見を主張したりして進行してしまう場合がありました。例えば、原案に対する意見を[気づきメモ]に記録させて言語化。教師がみんなの意見を見て、『いいね』をしたり、「おもしろい意見だから、もうちょっと詳しく聞きたいな」などと拾い上げて紹介したりしてもよいと思います。そのような積み重ねから「みんなで考える」という学級の風土も育まれます。これは「誰一人取り残さない」というGIGAスクール構想の理念にも通ずる部分ではないでしょうか。

先生方にはぜひ、「育てたい子どもの姿」について見通しをもって、この[気づきメモ]というおもしろいツールを有効活用していただければと思います。

(2023年8月掲載)