教育情報化最前線

校務用スマホがもたらす校務DXの促進校務DXの推進に向けた校務用スマートフォン導入効果検証
鹿児島市立福平小学校
校務用スマホが加速させる、チームとしての学校 即座に共有できる安心感が確かな「同僚性」を育む

民間では当たり前になってきた、業務用スマートフォン。近年、学校現場でも私物スマートフォンの利用が課題となるなか、教職員の働き方改革と校務DXを進めるためにも、校務用スマートフォンの導入を検討する自治体が出てきています。今回は、2025年10月から校務用スマートフォンおよびSky株式会社の校務スマート化支援アプリ「SKYMENU Mobile」を市内の1小学校に導入し、実証研究に取り組んでいる鹿児島市様に取材。実証校・鹿児島市立福平小学校の藤 隆博 校長や先生方、保護者に、本実証研究の現状や将来の展望についてお伺いしました。

授業の様子をYouTubeでご覧いただけます

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隆博 校長

鹿児島市立福平小学校

松山 美香 教頭

鹿児島市立福平小学校

山元 知史 教頭

鹿児島市立福平小学校

上村 夏樹 教諭

鹿児島市立福平小学校

情報共有を密にし、安全安心で質の高い教育をめざす

藤﨑校長本校は、児童数が増加傾向にある市南部に位置する、児童1,153名、教職員79名の大規模校です。安全安心で質の高い教育をめざすなか、教職員間の情報共有が重要だと感じ、「同僚性」を基盤にした学校づくりを進めています。情報を共有するための連絡手段のニーズが高まっていたときに木田教育DX担当部長から実証研究のお声がけをいただき、お受けしました。

教職員同士が細やかに連絡を取り合えば、その内容を目の前の子どもの指導や授業改善に役立てられるでしょう。こうした積み重ねが質の高い教育につながっていくと思います。もし何かトラブルが起こっても、すぐに連携できる。そして、困ったことを同僚にぱっと聞ける環境自体が教員の安心につながり、それがまた質の高い教育の実現に寄与すると考えています。

Wi-Fi通話
必要なとき、必要な人にすぐ通話できる
校内放送半減の効果も

松山教頭実証研究の内容を伝えたとき、ほとんどの教職員が前向きな姿勢を示していました。校務用スマホであることを分かりやすく示すために、共通の水色のストラップをつけ、「SKYMENU Mobile 校務用」と書いたステッカーを貼った状態で使用しています。

上村先生校務用スマホが使えるようになると聞いたとき、最初に抱いたのは期待感でした。実際、タブレット端末と違って扱いやすいですし、子どものノートをさっと撮って電子黒板に映し出すといったように授業でも活用できるので、毎日使っています。

松山教頭退校する際は職員室のレターボックスへ収納し、朝来たらまた取り出して使うといった運用をしています。

上村先生以前、必要なときは私物スマホを使って、ほかの教職員と連絡を取り合うこともありました。この場合、帰宅後であっても連絡できてしまいますが、校務用スマホを持つようになってから、仕事とプライベートを明確に区別でき、うまく切り替えられるようになった気がします。また、私物スマホには同僚全員の連絡先を登録しているわけではありません。みんなが共通のスマホを持つことで、教職員間の連絡が取りやすくなったと感じます。

山元教頭やはり、[Wi-Fi通話]の利便性は高いですね。例えば、緊急の呼び出しが必要になった際、以前は校内放送で対応していましたが、授業中は使えないため、教室まで伝えに走っていました。校務用スマホがあれば伝えたい先生だけに電話できるので、とても楽になりました。本校は北棟と南棟、建て替え中の新校舎に代わるプレハブもあって敷地が広く、教室間の移動に時間がかかるので特に助かっています。

上村先生校内放送で呼ばれても、校庭にいたり、教室が騒がしかったりすると聞こえないことがあるので、校務用スマホだと気づきやすくて良いですね。写真

写真校庭でもWi-Fiの電波が届くので、児童にトラブルが発生した際などもその場ですぐに連絡できる

山元教頭校務用スマホを使い出してから、校内放送の頻度は半減しました。結果的に、校内放送や電話の取り次ぎを担当している事務職員の負担も軽減されました。これまでは、外部から教員宛てに急ぎの連絡が入ったとき、いったん業務の手を止めて個人情報が含まれた文書や通帳などをすべて片付けた上で、各教室へ走って伝えに行く必要があり、本当に大変だったと思います。

上村先生特別支援学級の担任の先生は、「授業中、クラスの子どもがパニックを起こしたときも、校務用スマホに電話をもらえるので、すぐに迎えに行ける」と話していました。また、「校庭にぽつんと一人でいる子どもを見つけたとき、その子のそばを離れずとも関係者に連絡し、落ち着くのを一緒に待ってあげられる」と語っていたのが印象的でした。

ToDoプラス
タスクを見える化し、
学校組織全体で業務をやり遂げる

上村先生私がよく使っているのは、[ToDoプラス]です。期限のある提出物などを簡単に登録しています。やり終えたら消せるので、確認がしやすいです。事務職員の方々含め、広く使われているようです。

松山教頭事務職員は、保護者や市教委、業者などから教員宛てに電話があったら、まず内線で取り次ぎます。不在の場合、これまでは伝言のメモ書きをその教員の机の上に置いていました。ただ、なかなか職員室に戻らず、伝わるのが夕方になってしまうことも。校務用スマホが整備されてからは、[ToDoプラス]でタスクを登録し、メモを残しておくようにしているのだそうです。

上村先生時間が空いたとき、教室にいながら自分のタイミングで確認できるのが良いですね。

松山教頭われわれ管理職は教員に業務を依頼する機会が多いのですが、相手にも自分にもToDoを共有できるのが便利だと感じています。誰に何を依頼したか忘れないよう、今までは自分用の控えを含めて付箋を2つ書いていたので、手間がずいぶん減りました。図1

図1ToDoを登録すると、自分にも相手にも共有され、対応・伝達漏れ防止につながる

山元教頭管理職が全教員のToDoを確認し、負担を把握できるのも良いと思います。校務分掌は各教員に平等になるように割り当てているつもりではありますが、実務では偏りが生じる可能性もあります。[ToDoプラス]で見える化されれば、適宜作業を分担して進められますし、これは学校組織として業務を遂行していくために非常に大切なことだと感じます。

セーフカメラ
校務用スマホによる撮影が、
子どもだけでなく教員自身も守る

藤﨑校長今回の実証研究に協力したもう一つの大きな理由が、カメラ機能にありました。昨今の盗撮事件を受けて保護者の皆さんに不安が広がるなか、校務用スマホを使うことで福平小学校は安全な場所だと伝えたかった。また、本校が大切にしていることの一つに、文部科学省の「生徒指導提要」の「生徒指導の実践上の視点」に記載されている「安全・安心な風土の醸成」があります。これは、いじめや暴力行為などがなく、安心して授業や学校生活を送れる風土を、教職員の支援の下で児童自らがつくることを示すものです。これに基づき、教職員による盗撮は絶対にない学校だと伝える必要があると考えました。

松山教頭保護者や地域の方々に子どもや校内の様子を広く知っていただくことは、学校の大きな役割の一つです。しかしこれまで、撮影に私物スマホを使うことが多かったため、利用が制限されてからはどう対応すればよいか悩んでいました。タブレット端末は小脇に抱えて移動しなければならず、行事などでは活用しづらい。また、デジカメは数台しかないため、使いたいときに使えない可能性があります。

山元教頭そんなときに、ちょうど実証研究が始まり、宿泊学習や運動会で早速校務用スマホを活用。子どもたちの様子を撮影し、学習ポータルサイト経由で保護者に共有しました。タブレット端末やデジカメを使っての撮影と比べると、機動性の違いをあらためて感じました。

上村先生「SKYMENU Mobile」の[セーフカメラ]なら、アプリ内のカメラ機能で撮影するとすぐにクラウドへアップロードされ、スマホ本体にはデータが残りません。教員がデータを管理しなくて済みますし、不適切な利用がないことが明らかになるので、教員を守るという側面でも大切な仕組みだと思います。

松山教頭行事などの際、撮影係を担当することが多いのですが、子どもたちを堂々と撮影できるようになり、心理的な負担が軽減されました。

上村先生また、撮った写真が教職員間で自動共有されるのも便利だと思います。同僚の先生は、「運動会などの全校行事の際に撮影が分担できれば、一人でたくさん撮らなきゃいけないと気負わなくて済む」と話していました。図2

図2子どもたちやその活動を記録した写真・動画を、安全かつ円滑に共有できる

山元教頭われわれ管理職は、研究授業などにおいて、ほかの業務で参観できなかったとしても報告資料を作らなければならないことがあります。そんなとき、現場で撮影した先生から提供されるのを待たなくても、自分で写真を確認・利用できるのはありがたいですね。

藤﨑校長[セーフカメラ]の「全員で共有される」という環境は、教職員の倫理リテラシー育成にもつながるのではないでしょうか。何より、教職員が効果を実感できることが一番です。それが、子どもたちや保護者の安心にもつながります。

保護者の方にもお話を伺いました

「安心の見える化」が、学校へのさらなる信頼を生む

校務用スマホの導入については、2025年9月の学校だよりで事前に通知してくださっていました。そして、11月の運動会で、すべての保護者が校務用スマホを使っている先生方の姿を見たのではないでしょうか。ストラップの色がとても分かりやすいので、子どもがカメラを向けられていても安心だと思いました。もちろん、先生方を信用して子どもを学校へ送り出していますが、より明確なかたちで「安心」を表現してくれていると感じています。

子ども、特に低学年は、たまたま先生方がいないタイミングで何かトラブルが起きることがありますよね。先生方は多くの業務があり、教室を離れなければならない場合もあると思います。ただ、校務用スマホを使うことで職員室に戻らなくて済み、その分教室に長くいて子どもを見ていただけるというのは、保護者としてもすごく安心です。

生み出された時間を、子どもたちの
安心とより良い学びにつなげる

松山教頭校務用スマホを使い始めてから、「教室まで歩く」「誰かを探す」といった時間が短縮され、効率化されたと思います。

上村先生これからもっと時間が生まれたら、その時間を毎日の授業準備に充て、子どもたちのより良い学びにつなげていきたいです。時間にゆとりを持てると、自分自身の心にもゆとりを持てる。これは、子どもたちにも良い影響を与えると思います。

ある先生は、「子どもたちには、『何かあったときはクラスに帰っておいで』と伝えている。5分以上かかる職員室に行っていた時間がなくなれば、その分教室にいられる」と話していました。

藤﨑校長実際に教職員が子どもたちと向き合う時間が増え、子どもたち自身もそれを実感していると、私は感じ取っています。先生と話す時間が増え、何かあればすぐに対応してくれる環境が、子どもにとってプラスに働いています。そして松山教頭が言うように、移動時間の削減という具体的な成果も出ています。校務用スマホの活用をはじめとした校務DXを進め、仕組みを変えれば、教員の働き方まで変えていけると確信しています。

ただ、校務用スマホを持っているのが教員だけでは、その効果は半減してしまうでしょう。なぜなら学校運営は教員だけでなく、事務職員や学校用務員、図書館司書など、さまざまな人との連携の上で成り立っているからです。本校も、校務用スマホを活用して全員で連携することで、さまざまな課題により丁寧に対応できるようになってきています。これからも、同僚性を基盤とした「チーム福平」として、子どもたちを支えていきたいと思います。

(2026年1月取材)