教育情報化最前線

校務用スマホがもたらす校務DXの促進校務DXの推進に向けた校務用スマートフォン導入効果検証
鹿児島市教育委員会
安全な写真撮影と密な情報共有の確立へ 校務用スマホが拓く、教育現場の新たな未来を探る

民間では当たり前になってきた、業務用スマートフォン。近年、学校現場でも私物スマートフォンの利用が課題となるなか、教職員の働き方改革と校務DXを進めるためにも、校務用スマートフォンの導入を検討する自治体が出てきています。
今回は、2025年10月から校務用スマートフォンおよびSky株式会社の校務スマート化支援アプリ「SKYMENU Mobile」を市内の1小学校に導入し、実証研究に取り組んでいる鹿児島市様に取材。鹿児島市教育委員会の木田 博 教育DX担当部長と、実証校・鹿児島市立福平小学校の藤﨑 隆博 校長や先生方、保護者に、本実証研究の現状や将来の展望についてお伺いしました。

木田 博

教育DX担当部長
文部科学省 学校DX戦略アドバイザー

教員が有用性を感じられることこそが、校務DXの最初の一歩

本市には2025年度、小学校78校、中学校39校、市立高等学校3校の計120校があり、約4.9万人の児童生徒が学んでいます。校務DXの推進が求められるなか、文部科学省が作成した「GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリスト」や「教育DXロードマップ」に基づき、市全体で取り組みを進めています。

校務DXでは、これまでの業務を根本から見直す必要があります。しかし先生方は非常に忙しいため、まず初めにデジタル化の有用性を感じてもらうことが大切です。

本市では2023年、保護者向けデジタル連絡機能を含む学習eポータルを一括で導入しました。これにより、保護者へのお便りをデータで一斉配信するようになった学校では、印刷の手間が省け、問い合わせの電話も明らかに減ったといいます。子どもの渡し忘れによる伝達漏れも解消。保護者も仕事や家事のスキマ時間に目を通すことができ、双方にメリットが生まれました。このように、身近な部分からメリットを感じてもらうことが、校務DXの推進につながると感じています。

安全の基盤は「情報共有」だからこそ、私物スマホを使わざるを得なかった

教育活動における安全の基盤は、情報共有です。教職員は常に子どもたちの状況を把握し、行動しなければなりません。外部から怪しい人物が侵入するなど、予期せぬトラブルが起こる可能性もあります。子どもたちを守るために、即座に周囲と連携しなければなりません。だからこそ、教員は私物スマートフォン(以下、私物スマホ)を使わざるを得ない状況にありました。

しかし昨今、教育現場でも私物スマホの不適切な利用についての報道が相次ぎ、2025年7月には文部科学省が通知を発出。私物スマホの利用が制限されました。

そもそも、私物の端末を業務利用するという曖昧さが問題です。民間企業では、従業員に業務用スマートフォンを支給し、私物と分けて使うことがすでに浸透しています。本来であれば、児童の個人情報を含む機微な情報を扱う学校現場では、公的なものへの記録を推進すべきです。

また、私物スマホで情報をやりとりすると、過剰共有につながりかねません。不正アクセスや端末の紛失による情報漏えいの心配もあります。子どもの安全を守るため、そして先生が安心できる環境を提供するためにも、校務用スマートフォン(以下、校務用スマホ)の整備が重要だと考えています。

校務用スマホが、校務DX実現の基盤になる

校務用スマホを使えば、教職員間でより細やかな情報共有ができるようになります。日常的な情報伝達により、小さなことでも何らかの情報が頭の隅に残っていれば、トラブルの予兆を察知し、事前に回避できるかもしれません。たとえ何か問題が起きたとしても連絡を取り合い、迅速に対応することで、子どもの安全を守ることができます。

また、組織で管理する公的な端末の場合、セキュリティポリシーに則して利用されます。不正アクセスや端末の紛失など、もしもの事態に備えた対策ができるので、先生方も安心して校務に活用できます。

  校務DXには、「既存の業務を効率的にできる」「できなかったことができるようになる」という、2つのベクトルがあると考えています。個別に連絡できれば、直接会いに行く手間が省け、業務がより効率化されるでしょう。互いのタスクが見られる状態であれば、すべての先生方の動きを把握しておける。そして何より、教員も子どももお互いが安心して写真撮影ができるようになる。校務用スマホと「SKYMENU Mobile」の組み合わせがあれば2つのベクトルを実現でき、校務DXの実現基盤になるといえます。

校務用スマホの有用性を、市内有数の大規模校で検証

このような校務用スマホの有用性を検証する目的で、2025年10月から市立福平小学校で実証研究を始めました。児童数1,000名超の大規模校であり、情報共有がいかに大事か身を持って感じている学校です。また、多様な世代の教職員が勤めており、ここで活用できると実証できれば別の学校にも広げていけると考え、協力を依頼しました。

驚いたのは、実証研究が始まって間もないうちに、ほとんどの先生方が首から下げて日常的に使っていたことです。実際に便利だと感じたからこそ、使っているのだと思いました。また、どう使えば業務がより効率的になるか、自発的に考えていた姿も印象に残っています。

福平小学校の校務用スマホの詳細と運用ルール

「全体最適」に基づいた整備が、校務DXの実現につながる

自治体が何かの課題を解決するためにツールを導入する際、部分最適で考えることが多いのですが、それぞれを上手に連携できず、結果的に手間がかかってしまうケースがあります。そうならないためにも、校務用PCや校務支援システム、学習eポータルなどを「全体最適」で使えるかたちで整備することが、校務DXの実現にとって重要だと考えます。 そしてその核となる存在が、校務用スマホです。「SKYMENU Mobile」をはじめとするさまざまなアプリケーションやほかのシステムがうまく連携して校務を効率化し、結果的に子どもたちの命を守ることにつながるよう、強く期待しています。

(2026年1月取材 / 2026年5月掲載)