教育情報化最前線

千葉県学校法人成田山教育財団 成田高等学校付属小学校 1人1台活用の壁「持ち帰り」「家庭学習」 授業も宿題も[発表ノート]
児童の取り組みやすさを重視

成田高等学校付属小学校は2021年4月に、4年生以上の児童を対象にBYODによる1人1台端末を導入。『SKYMENU Cloud』の[電子連絡板]を活用し、学校と児童・保護者間の情報共有の効率化を図る取り組みをベースとして、導入当初から端末の持ち帰りを毎日実施しながら1人1台端末の活用を日常化しています。同校の取り組みについて、ICT推進委員長の佐々木 健視 教諭にお話を伺いました。

佐々木 健視教諭

学校法人成田山教育財団 成田高等学校付属小学校

[電子連絡板]を活用し、1日1回は必ずツールを使うことが定着

本校は「成田山新勝寺の宗教的使命の達成と地域文化の向上」を目的に創設された成田高等学校の付属小学校として、小・中・高等学校12年間の一貫した教育活動を進めています。1学年35名程度の単学級で構成しており、全校児童は213名。教職員は非常勤・事務職員も含めて20名という小規模な学校ですが、教科別担当制を取り入れることで複数の大人の目で児童を見守り、きめ細やかな指導を行ってきました。

2021年4月、4~6年生を対象に学校指定のタブレット端末(iPad)を費用は保護者負担で購入いただき、1人1台端末の環境を整備しました。なお1~3年生は、学校が所有するiPadとMicrosoft Surface各40台を活用しています。4~6年生の端末は児童の所有物ですので、原則として毎日自宅へ持ち帰り、登校時に持参しています。

当初は「毎日持参させて、使わない日が続いてしまうのではないか」という不安を感じていた教員がいたのは確かです。しかし[電子連絡板]の活用をベースに置き、最低でも1日1回は端末を使う場面を設けることで、児童も教員も使い慣れていき、現在は宿題を配付して取り組ませるといった活用も日常的に行われるようになってきました。

持ち帰りの実施に向けて、想定しうる注意点を洗い出して明文化

1人1台端末の導入と端末持ち帰りの実施にあたって、想定しうる限りの注意点を洗い出し『インターネット(iPad等)運用規定』をまとめ、児童・保護者と端末利用のルールを共有しました。例えば、利用できる場所は学校内と自宅のほか、先生や保護者が許可した場所に限るといった内容です。さらに利用時間や使用できるアプリケーションなども明記しました。

そのほか、「メールは使用せず用事があるときは学校で話す」「人が嫌な気持ちになるコメントはしない」といった使用上の注意も明文化しました。

学校指定の端末ですので、初めから使用できるアプリケーションや機能、閲覧できるWebサイトには制限を設けています。しかし、児童が適切なICTリテラシーを身に付けるためにも、何もかもを禁止にするのではなく、保護者も含めてルールを理解して活用することが大切だと考えています。そのためのツールとして、デジタル・シティズンシップが自主学習できるオンライン教材も導入しました。

しかし、実運用が始まれば当初の想定外の問題が起きることは避けられません。そのときは、問題にきちんと向き合って対処するという方針で運用を始めました。

問題が起きたときは、誰が主体となって対処するかを切り分ける

問題に対しては、長年の教育相談のなかで培ってきたノウハウを、ICTに当てはめて考えています。新たな問題が発生したときには、①学校で指導すべきこと、②家庭教育でお願いしたいこと、③ICT機器の使用上の不都合などで問題視はしないこと、に切り分けて対処しています。

具体的には、メールは使用しないというルールに反して、児童同士でメールのやりとりをしていたことが発覚した事例があります。このとき、管理者の教員はメールのログが確認できることを児童に伝え、ルールを正しく守るよう指導しました。一方で、夜遅くまで端末を使用しているという場合には、児童と保護者で話し合っていただくようお願いしています。そのときに、話し合いの上で端末にスクリーンタイムを設定することも提案します。

問題視すべきでないと判断した例では、[電子連絡板]の記載に間違いを見つけた児童が、教員にメールを送って知らせたことがありました。メールは使用しないというルールですが、連絡事項の間違いを速やかに訂正するための行動ですから、問題視すべきではないと判断しました。それ以降、同様のケースがあれば保護者に相談の上で連絡してもらうよう、運用規定の一部を改訂しました。

国語は授業も宿題もすべて[発表ノート]で

毎日の帰りの会で[電子連絡板]を使って明日の予定などを確認。保護者も同じ内容を閲覧できる
図1毎日の帰りの会で[電子連絡板]を使って明日の予定などを確認。保護者も同じ内容を閲覧できる

全校で[電子連絡板]を活用しており、学級ごとの連絡板に翌日の時間割、持ち物、宿題、そのほかの連絡事項などを記載し、帰りの会で確認しています図1。この[電子連絡板]の活用については、前回の取材で詳しくお話ししたとおりです。

課題ごとに分けられた[提出箱]を見れば提出状況がひと目で分かる
図2課題ごとに分けられた[提出箱]を見れば提出状況がひと目で分かる

4~6年生では、宿題の配付や回収(提出)に端末を活用することが増えました。本校で使用している『SKYMENU Cloud』と「Google Classroom」には、ほぼ同等の機能があり、教員によってどちらのツールを使うのかは異なるのですが、私は[提出箱]図2がとても使いやすいので『SKYMENU Cloud』を使っています。

[発表ノート]で作成したワークシート。佐々木教諭は児童がフォーマットを変更することも許可している
図3[発表ノート]で作成したワークシート。佐々木教諭は児童がフォーマットを変更することも許可している

私が担当する国語では、普段の授業から『SKYMENU Cloud』の各機能を使っており、児童が取り組むワークシートも[発表ノート]で作成したものばかりです。図3は、ことわざや故事成語の意味や由来、使い方などを調べて記入するという課題です。このとき、フォーマットは自由に変更しても構わないことにしました。例えば「使い方」の枠を広げて例をたくさん書く、意味や使い方を絵で表現するなど、児童が自分なりに取り組みやすいように工夫できる余地を残しています。こうした活動を授業の中でも行いながら、残りを宿題として持ち帰って取り組ませることも多いです。

宿題で端末を活用するメリットの一つが、忘れ物が実質的になくなることです。もし自宅に端末を忘れても、コンピュータ教室の端末を使ってログインできます。逆に、学校に端末を忘れて帰ったとしても、自宅の端末でログインすれば宿題に取り組めます。また、回収の際に[提出箱]を見れば、未提出の児童がひと目で分かります。もし宿題に取り組めていなかったのであれば、どこまでできているのかを[回収]機能で確認し、あらためて取り組ませることもできます。

漢字テストを毎週配信し、学習習慣を維持する

また本年度の夏休みには、児童の学習習慣のペースを崩さないために、毎週火曜日に漢字ドリルを基にした確認テストを[配付]し、その週のうちに[提出]するという取り組みをしました。児童も、毎週どこまでドリル学習を進めなければならないかを考えて取り組んでくれたようで、保護者からもおおむね好評でした。教員としても、新学期初めに宿題の確認や評価のための負荷が集中せずに分散できるので、とても効率的だったと思います。

しかし、端末の活用は、紙の代替手段ではないと考えています。すべての児童が取り組みやすくなるには、どんな工夫をすればいいのか。そのねらいを明確に持つことが大切だと思います。ワークシートのフォーマットを固定化しないことも、長期休業期間の宿題を小まめに配付することも、従来はできなかった取り組みです。

児童が主体的に学ぶ姿をめざし、先を見据えた取り組みを続ける

本校も、当初から「こうしよう!」と決めて活用を開始できたわけではありません。まずは[電子連絡板]などを通じて、『SKYMENU Cloud』などのツールを使う機会を増やすことから始め、現在はどのように活用すれば効果的なのかを模索している段階です。しかしその先には、児童が端末を道具として使いこなすようになり、例えば、夏休みの自由研究をまとめる際に、自分の判断で[発表ノート]を使うようになる。そうした姿をめざし、先を見据えて一つずつ取り組んでいます。まだ課題も多く、改善を重ねていく必要はありますが、継続することで学びの質の向上につなげていきたいと考えています。

(2022年10月取材 / 2022年12月掲載)