学習指導要領/教育の情報化

長期の臨時休業における学校の取り組みから学ぶ 新しい時代をつくるMORI・TECH(守谷型 EdTech)の推進 プログラミング的思考の育成やオンラインでの「遠隔教育」「学校・家庭の連携」を重視

嶋田 知成

守谷市教育委員会指導主事

MORI・TECH(守谷型 EdTech)の推進

国のGIGAスクール構想が前倒しとなり、1人1台のタブレット端末の活用が目前に迫ってきました。ここ数年、「エドテック」という言葉が注目されるようになりました。エドテック(EdTech)とは、エデュケーション(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉です。簡単に言えば、進歩の著しいIT技術を教育分野に生かす取り組み全般を包括する概念です。

守谷市では、令和元年度より新しい時代に必要な情報活用能力を育成すべくプログラミング教育を中核とした「MORI・TECH(守谷型 EdTech)」を推進しています。子どもたちがコンピュータを効果的に活用していく力をつけるためには、その仕組みである「プログラム」を学び「プログラミング的思考」を育成することが大切です。

新学習指導要領では、プログラミング教育の必修化などICTを活用した教育の推進が求められています。守谷市では「新しい時代をたくましく生きぬく人づくりをめざして」という合言葉の下、「守谷の子どもに付けたい力」の一つとして「情報を活用できる力」を掲げています。

ICT機器を活用するための教育環境の整備

守谷市では、平成27年度よりすべての普通教室および特別教室に、70インチの大型電子黒板や高速無線LANのアクセスポイントを設置しています。また児童生徒3人に1台程度のタブレット端末(市内2,000台)を配置するなど、充実した環境を整えてきました。そしてすべてのタブレット端末には学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』が導入され、ICT機器の活用が日常的に進められてきました。これらの恵まれたICT環境をより有効に活用するためのプランがMORI・TECHです。このMORI・TECHは、新しい時代に必要な情報活用能力を育成できるよう、次の3つのプランから構成されています。

  • プログラミング的思考を育成する守谷スマートスクールプログラム
  • Web会議システムを活用した遠隔教育の推進
  • オンライン学校・家庭連携サポートシステム

国が示すGIGAスクール構想では1人1台のタブレット端末の活用がされ、学校教育の在り方は大きく変わることでしょう。国全体でICT機器が活用できる教育環境を整えることは素晴らしいことです。しかしながら、最も大切なことは教師がICT機器を活用し、子どもたちが新しい時代を生きる力を身に付けることではないでしょうか。そのためには、各教育委員会では、環境整備を進めるとともに、ICT機器を活用するための教育プランを学校と連携しながら策定することが大切です。MORI・TECHは現場の情報教育担当の先生方とのやりとりを繰り返しながら作ったプランです。以下、プランについて述べていきたいと思います。

プログラミング的思考を育成する守谷スマートスクールプログラム

1つ目は、プログラミング的思考を育成する守谷スマートスクールプログラムです。守谷スマートスクールプログラムでは、小・中学校の9か年の連続した学びの中でプログラミング的思考を育成していきます。下の図は、守谷スマートスクールプログラムの小・中学校全体計画概略です。小学校中学年では年間20時間程度、総合的な学習の時間において、問題解決的な学習課題と関連させながら、プログラミング体験を中心とした情報活用能力の育成を行っています。中学年で情報活用能力の基盤を育成することで、義務教育の後半でスムーズにコンピュータを活用した授業ができるようにしています。

小学校高学年では、中学年までに学んだことを生かして、身近な問題を解決するプログラムを作る力を付けます。今後、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)化はますます進むことでしょう。さまざまなモノにインターネット接続機能を付加して、相互に連携させるIoTについて学ぶことは、新しい時代を生きるために欠かせない力と言えます。守谷市では、身近なモノとセンサやスイッチなどの機能を組み合わせ、プログラミングすることで、さまざまなアイデアを形にできるプログラミング教育を行っています。例えば、総合的な学習の時間では、近隣の福祉施設を児童生徒が訪問して施設の要望を聞き、生活に役立つプログラムを作成しており、室内の温度が下がるとアラームが鳴るプログラムや朝日を浴びると歌いだす人形など創意工夫あるプログラムを作成しています。

Web会議システムを活用した遠隔教育の推進

2つ目は、Web会議システムを活用した遠隔教育の推進です。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、Web会議システムが一躍注目されるようになりました。守谷市では平成27年度から中学校区の児童生徒の意見交換や病気療養中の児童生徒へのオンライン授業などに活用してきました。ここでは遠隔教育のこれまでの取り組みを踏まえ、今後の展望について述べます。

守谷市では、小中一貫教育を推進してきましたが、施設間の距離が離れているために、日常的に交流ができないということが課題でした。この課題を解決すべく取り入れたのがWeb会議システムです。同じ中学校区の小学生がオンライン上に集まりそれぞれの地域の特色について紹介する社会科の授業、インターネットを通して小・中学生1,000人が一堂に会して地域の街づくりについて協議するオンラインフォーラムなど、現場の先生方が試行錯誤しながら実践に取り組んできました。この取り組みにより、一貫教育の推進において移動時間の削減や場所の確保といったことが容易になりました。また、Web会議システムを活用して、猛暑時やインフルエンザ流行時における教室からの全校集会への参加等も盛んに行われています。

今後は、国のGIGAスクール構想によりオンライン授業も一層進むと思われます。守谷市では病気療養中の児童生徒に対してのオンライン授業にも取り組んでいます。

対象の児童生徒からは「勉強が遅れてしまうのが心配だったけれど、先生からもらったプリントやテレビでの授業で友達と同じ学習が進められるので安心しました。」といううれしい声を、保護者からは「Web会議システムで学習した後の家庭学習の取り組み方は、1人でやるときより見違えるほど意欲的になります。」という意見をいただいています。

守谷市ではこれまでのノウハウを生かして、児童生徒と保護者のニーズに合わせたオンライン授業を実施していきたいと考えています。具体的には長期休業期間中のオンライン学習相談会の実施です。生活のリズムが乱れがちな長期休業中に児童生徒が自宅からオンラインでつながり、学習計画に従って家庭学習を進めます。オンライン学習相談会では数名程度のグループに分けることも可能ですので、教科ごとの少人数指導や同じ課題に取り組んでいる児童生徒同士の学び合いも可能です。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、今後も一部オンライン授業が行われていくことでしょう。しかし、それはあくまでも対面授業を補完するものであり、メインになることはありません。人とのつながりを実感できる遠隔教育を守谷市では推進していきます。

オンライン学校・家庭連携サポートシステムおよび今後の展望

3つ目はオンライン学校・家庭連携サポートシステムです。守谷市では、家庭のコンピュータやタブレット端末を使って、家庭学習での利用が可能なオンラインデジタル教材を取り入れています。今後は国のGIGAスクール構想に合わせ、持ち帰りを想定した1人1台のタブレット端末の導入を考えています。端末にはデジタルノートの機能を取り入れ、オンライン上で宿題の配付や提出ができるようにしたいと考えています。オンライン上での課題等のやりとりができれば、Web会議システムと組み合わせ休業期間中の学習機会の確保が可能になると考えています。また通信環境が整っていない家庭に対してはWi-Fiルータの貸し出しも可能にしていきます。休校になっても学びが途切れない教育環境を守谷市はつくっていきます。

(2020年9月掲載)