学習指導要領/教育の情報化

長期の臨時休業における学校の取り組みから学ぶ 今こそ授業改善効果的なオンライン授業をめざして

村井 万寿夫

北陸学院大学教授

教育の再考:教育の原理から

先生が教え、子供が学ぶことは、これまで一対のものとして認識されてきました。ところが、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の対策から休校措置が続き、先生は子供たちに教える機会がなくなり、子供たちは先生から学ぶ機会がなくなりました。
そこで先生たちは考えました。教えるための材料、すなわち教材を子供たちに届けることによって学ぶことができると。このことは【図1】のように表すことができます。
教育学では「授業とは、教師と教材と学習者の相互作用からなる」とされています。まさに【図1】のとおりであり、三者の関係が保たれることが教育の原理であるといえます。この関係がコロナによって断ち切られる状況が全国の学校で起こりました。

教育の再考:授業の構造から

子供たちの手元に教材があることで学びが生まれます。確かにそうですが、それだけではなかなか学力が身に付きません。子供たちに、いわゆる「学力差」が生じることにもなります。
そこで、学力が身に付くための授業は【図2】で示すように、先生と子供の間にいくつもの「行ったり来たり」が生じる状況にあることが求められます。
例えば、先生がある事柄や事象を提示し、それに子供が反応する。先生は子供の反応を元に質問し、子供がそれに答える。このように、先生と子供たちの間で何度も行ったり来たりする構造が授業にはあります。
この行ったり来たりすることを教育学では「相互往還作用」といいますが、この作用もコロナによって断ち切られたといえます。

教材:休校中の届け方

先生たちは子供たちに教材を届けたいと考え、さまざまな方法が採られました。先生が準備した課題やプリントを子供が学校に取りに行く。あるいは、子供の自宅に郵送する。これらの方法のほかに、インターネットを利用する方法も採られました。これが「オンライン授業」と呼ばれるようになった契機といえます。
インターネットを使うと、先生は一度の操作で担任する子供全員に課題やプリントを送ることができます。しかし【図2】で例えると、先生から子供に課題を提示するという一方向のみです。子供からの反応には一定の時間や手続きを要します。そこで、「相互往還作用」を実現するためのオンラインによるリアルタイム授業が行われるようになりました。
Web会議システムを利用することによって、教室での授業に近い形を実現することができます。また、クラウドコンピューティングソリューション(以下、クラウド型グループウェア)を利用することにより【表1】のような授業を行うことができるようになります。
これらの授業のいずれも、先生と子供それぞれが1つのアカウントを持つことによってできるようになるので、クラウド型グループウェアが注目されています。私の地元の金沢市でもすべての小中学校の児童生徒と教員にアカウントを割り当てています。
以上のように、子供たちの家にインターネットにつながるコンピュータ環境があって、クラウド型グループウェアとそのアカウントを用意すれば、先生たちは教材を提供しやすくなり、子供たちは授業を受けやすくなります。
このことから、今後のコロナの第2波、第3波に対応できるように、1人1台タブレット端末導入を全国の各自治体で急いでいて、これがいわゆる、GIGAスクール構想の対応といえます。

効果的な授業を実現するためのATOモデル

先述したように、タブレット端末の導入によってオンライン授業が実現できますが、それだけでは子供たちに確かな学力が身に付く授業にはなりません。子供たちに、どんな学力を身に付けさせるために、どのような教材を、どのようなオンライン方式で提供するのか、これを明確にすることが重要です。
このようなことから、【図3】に示すオンライン授業を効果的に行うためのモデルを考案しました。本モデルは「学力の観点の次元」「教材タイプの次元」「オンライン方式の次元」の3次元で構成してあります。学力(Academic ability)、教材(Teaching material)、オンライン方式(Online form)の頭文字を取ってATOモデルと称することにします。
教材のタイプは、4月、5月の休校期間中のオンライン授業を筆者独自に調査・分類するとおおむね4タイプになりました。「解説型」は、新しい知識について教科書の内容を基に子供たちに分かりやすく説明することを主にした教材です。「記述型」は、ある事柄や事象について子供たちの考えを自由に書いてもらうことを主にした教材です。「調査型」は、ある事柄や事象について教科書や資料などを元に調べることを主にした教材です。「体験型」は、先生から提示された実技や実演を子供たちが実際に体験することを主にした教材です。
ATOモデルを基にすると、オンライン授業は単純計算で48タイプを想定できます。例えば、知識(A)を獲得させることをめざし、解説型の教材(T)を作成して、ドキュメント配信方式(O)によって、オンライン授業を実現することができます。
このように、学校での対面授業ができないからオンライン授業を行うといった1次元的な考えではなく、本モデルが示すように3次元的にオンライン授業を考えて実施することが重要であると考えます。

協働的な学びを実現するオンライン授業

オンライン授業では、先生から教材が提供され、子供は在宅で1人で学習することになります。いわば、「個別学習」の状況になるといえます。
一方、学校においては友だちと一緒に学習するため、いろいろな考えに触れるなかで一人一人の思考が高まっていきます。これはオンライン授業ではなかなか実現できないことと言えます。だからといって手をこまねいているだけではいけません。何とか工夫して個別の学びだけでなく、協働的な学びを実現させたいものです。
その方法の一つに、Sky株式会社の学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』の[ポジショニング]があります。これを利用すると一人一人の考えを共有することができます。
次に紹介するものはコロナ禍になる前の授業例ですが、オンライン授業で使えるようになると、学校でも家庭でも協働的な学びを実現することができます。

[ポジショニング]機能を活用した協働的な学びの授業例

小学6年道徳科「本当の友情とは何か」(実践者:清水 匠 茨城大学教育学部附属小学校教諭(実践時))という授業です。
読み物資料の中で、主人公たちは親友の誕生日にサプライズプレゼントをするために内緒でプレゼントを準備します。しかし、その親友は1人だけ理由が分からないまま、仲間に入れず寂しい思いをしてしまいます。このとき、自分だったらサプライズのことを打ち明けるか、誕生日まで内緒にしておくか考えます。
このように「打ち明ける」「内緒にする」のどちらの立場(ポジション)を採るか、[ポジショニング]機能の画面にプロットします。そして、その理由を書き込みます。
この際、クラスメートの状況も見ることができるとともに、任意に選択して、あるクラスメートの考えを読むことができます。子供側でいうと、全員の状況が分かるし、一人一人の考えも分かります。
ここに協働的な学びの要素を見いだすことができます。
教室でこの機能を使った学習を経験しておくことで、自宅でも使えるようになります。
今後のオンライン授業では、このように、クラウド型グループウェアを活用するなかで協働的な学びについても実現していくことが課題になると思います。

(2020年8月掲載)