研究会・セミナー

11年継続した情報教育の成果を公開

全15学級で「情報モラル指導」「情報活用」の授業を実践

本大会では、京都市内8校で40の授業が公開された。

公開授業校の一つ、京都市立藤城小学校(辻 喜則 校長)は、「情報活用能力を基にした生きる力の育成~ことばの力を育て、豊かに伝え合い、主体的に学び合う子をめざして~」の研究主題のもと、平成15年から11年間継続して情報教育の研究に取り組まれている。

独自に作成されたカリキュラム表に基づいて情報モラル指導を展開されており、タブレット端末など新しいICT機器を活用した実践にも積極的に取り組まれている。公開授業では「情報モラル指導」「情報活用」の2つのテーマで、15学級すべてで授業が公開され、多数の参観者が集まられた。

コンピュータ教室でネットトラブルを疑似体験

表示された画面を信用し、安易にダウンロードしてしまう3年の学級活動で行われた情報モラルの授業「不適切な情報に出合った時の対応の仕方を考えよう(実践者:西村 佐知子教諭)」は、コンピュータ教室で行われた。

各学習者機には、情報モラル指導用に作成された「ゲームサイト」のショートカットが予め配付されており、西村教諭は子どもに何も知らせずに自由にゲームに取り組ませた。ゲームを進めていくと「ダウンロード」を促す画面が突然現れ、画面に書かれた内容を信じてダウンロードしてしまうと、ゲームができなくなってしまう。

「何が起こったかわからない」という子どもたちに対して、西村教諭は、安易にダウンロードしたことが原因であることを告げ、わからない画面があれば、「必ず大人に相談する」ことを指導された。さらに、ビデオ教材を活用して、アダルトサイトや掲示板など、さまざまに気を付けなければならないことも伝えられた。

まとめでは、今日学んだことを手紙にまとめて家の人に伝えることとし、家庭への働きかけとされた。

タブレット端末を囲み、プレゼンを練り合う

お互いの発表を聞き合い、改善策を検討する6年社会「新しい日本、平和な日本」(実践者:堀川 紘子 教諭)の授業は、グループ1台のタブレット端末を配付して行われた。

本単元では、これまでに戦後の日本の復興と 発展の様子について、毎時の学習を通して興味を持ったことや知りたいことを図書資料やタブレット端末、電子辞書等を使って調べてきている。学習のゴールを「学年全体での発表会」に設定され、子どもたちは、グループで1台のタブレット端末を使って発表資料をまとめてきた。

本時は、各グループで作成した資料を使った発表練習に取り組まれた。図書室内には、プロジェクタが3台あり、2つのグループに1台が割り当てられている。子どもたちは、主体的に動いてプロジェクタの準備・調整を行い、お互いに発表を聞き合った。ペアのグループに対して「今と昔の写真を並べて表示したほうがわかりやすいと思う」「文字をもっと大きくしたほうがいい」など、気づいたことや感想を積極的に伝え合い、より良い発表にするために修正を重ねていた。

「学習支援カード」で、情報活用の実践力を育む

分科会Ⅰの様子。多数の先生方が参加された分科会Ⅰでは、7つのテーマでワークショップが行われた。「明日からできる!教科の中での情報教育」(座長:木村 明憲 京都教育大学附属桃山小学校教諭)では、情報活用の実践力を教科学習の中で育成するために開発された「学習支援カード(パワーチェックカード)」や「情報ハンドブック」を用いたワークショップが実施された。

「学習支援カード」は、学年ごとに身につけさせたい情報活用の実践力を「情報を集める」「情報をまとめる」「情報を伝える」の3つの「領域」に分類し、子どもにもわかりやすい言葉とイラストで具体的に記されている。教員と子どもがともに、日々の授業や家庭学習でカードに記載されている力を確かめ、意識しながら学習を進めることで情報活用の実践力を身につけられるという。

ワークショップでは、この「学習支援カード」と、より具体的にわかりやすく情報活用の場面を紹介した冊子「情報ハンドブック」を配付され、参加された先生方がグループで単元計画を検討。教科の指導の中でどのように情報活用能力を育むのか、議論が交わされた。

座長を担当された木村教諭は「常にカードを意識することで、教科横断的に情報活用能力をつけられる。情報活用能力の育成は、情報の収集やまとめの質を向上させ、最終的に学力の向上につながる」と強調された。「学習支援カード」などは今後Webサイトなどで公開される予定だ。

教員用タブレット端末を配付、活用率52%

分科会Ⅱの様子分科会Ⅱでは、10の分科会に分かれ、80の発表が行われた。浦 嘉太郎 堺市教育センター主任指導主事は、「教員用タブレットの活用による授業改善」をテーマに発表。同市では、平成25年度に全小学校の全普通教室に1台ずつ、計1,500台のタブレット端末を教員の指導用として整備。教員がタブレット端末を指導用に活用し、授業改善に取り組む授業スタイルを「堺スタイル」とされている。

今年度6月に、タブレット端末が配置された小学校の全担任教員を対象にアンケートを実施し、その活用度を調査したところ、教室で行った全授業数のうちタブレット端末を活用した授業は52%に上り、高い活用率を示していると報告された。

今後は、より効果的なタブレット端末活用をめざし、大学研究者などを交えた授業研究を展開され、好事例の開発と共有による活用促進と、実践者の育成を図られていくという。

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(2014年12月掲載)