研究会・セミナー

情報教育の原点に返り、「次世代の学び」を問う

日本教育工学協会(会長 堀田龍也 東北大学大学院教授)は、2014年10月24日(金)、25日(土)に、第40回となる全日本教育工学研究協議会全国大会「JAET京都大会」を開催されます。同大会の実行委員長を務められる、山本弘道・日本教育工学協会副会長、京都市立音羽小学校校長に、京都の情報教育の取組や今大会のポイントをお話しいただきました。

JAET出発の地 京都で迎える40回大会

日本教育工学協会は昭和46年4月に教育工学の充実・発展にかける10数名の教育関係者の熱い思いで設立され、昭和48年10月には、西之園晴夫先生(京都教育大学名誉教授)を中心に、第1回教育工学研究協議会が京都市で開催されました。そして約40年後、全国40都道府県からの約5,000名の会員、毎年秋に1,000名規模の全国大会を行うまでに発展してきました。

そして、この平成26年、全国大会は40回の節目を迎えることとなり、再び出発の地である京都を会場に開催することとなりました。

節目の大会として、大会のテーマに「子どもが主役となる 次世代の学びとは」を掲げました。このテーマは「次世代には、1人1台以上のタブレット環境の実現、ネットワー クによって情報の共有や協働的な活動の実現によって、学習の方法そのものが根本的に変化する可能性がある。ICTは情報処理の道具であって、子どもたちの情報処理活動(あらゆる学習活動や能力の育成)に深く関わっていること、どう使えば子どもたちの能力を高めることが出来るのかを見据えていく必要がある」と永野和男先生(聖心女子大学メディア学習支援センター長・教授)から示唆いただき、設定しました。

ICTにとらわれない、京都の情報教育

京都では、今まで、ICTを活用しながらもICTにとらわれず、常に子どもたちの情報活用能力の育成、そして子どもが主体となる教育の推進に取り組んできました。今大会を通じて、今一度、情報教育の原点に返り、「次世代の学び」を問いたいと考えています。

情報教育の原点は「考える力」を育てることにあります。ICTは時代と共に進歩しますが、あくまで道具です。それらを用いて子どもたちが行う「情報処理活動」の中に学びがあり、そこに焦点を当てて考えなければなりません。

しかし、タブレット端末などICTを活用して、情報を収集し、話し合いや発表をすれば「情報活用」ということではありません。

「情報活用の実践力」は、「課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力」とされています。この「創造」という言葉がとても大事です。子どもたちが情報を収集するだけでなく、集めた情報をもとに自分なりに整理、理解し、そこから自らの考えを「創造」する。そのうえで発信、伝達されなければなりません。そのためにICTを利用することに価値があります。

「子どもが主役となる、次世代の学び」とは

不確実で変化の激しい21世紀を生きる子どもたちには、確かな学力や豊かな心、健やかな体といった「生きる力」を育むことが求められています。しかし、これまでの情報教育は、問題解決の方法を教え、それをルーチン化させていただけなのではないか、という反省があります。ルーチンでは解決できないような難しい課題、問題に直面したとき、主体となってそれらの問題に立ち向かい、乗り越えられるような人間としての「強さ」や「たくましさ」を育むこと。「生きる力」を育むことをもっと視野に入れた情報教育がこれからは必要だと感じています。

さらに「教育の情報化ビジョン」が示されて以降、児童生徒1人1台の学習環境、タブレット端末等を活用した実践研究が活発化してきています。21世紀を生きる子どもたちは、1人1人の子どもたちの多様性を尊重しつつ、それぞれの強みを発揮させる個に応じた教育を行うとともに、異なる背景や多様な能力を持つ子どもたちがコミュニケーションを通じて協働して新たな価値を生み出す力が求められています。

今大会では、子どもが主役となる次世代の学びについて、公開授業、講演会、シンポジウム、分科会を通じて多くの先生方と共に考えたいと思います。

タブレット活用授業からICTを使わない授業まで

大会1日目(10月24日)の午前は公開授業です。小学校4校、中学校2校、高等学校1校、特別支援学校1校で授業を公開します。タブレット端末などを活用した実践から、ICTを活用しない情報教育の授業が展開される予定です。どの公開授業校も情報教育は当然のこと、各校独自の研究テーマも持ちながら実践が展開されます。

午後には、本会場「京都テルサ」で基調講演、シンポジウム、7つのワークショップが開催されます。基調講演では、「次世代の学びのために ~これまでの40年、これからの40年~」と題して、永野和男先生に講演いただきます。

大会2日目(10月25日)には、8つのテーマに分かれての分科会発表、40回記念映像資料の視聴、シンポジウムが催され、盛りだくさんの内容になっています。

今大会が、全国の先生、教育委員会関係者にとって、大きく次の時代に思いを馳せる機会になればと考えています。

子どもが主役になる次世代の学びとは

大会1日目 10月24日(金)

公開授業会場:市内公開授業校
受付 9:00~
授業公開 9:45~(会場校によって時刻が前後します)
全体会・分科会会場:市内公開授業校
受付 12:00~
開会行事 12:45~
基調講演 13:15~
「次世代の学びのために ~これまでの40年、これからの40年~」
永野 和男(聖心女子大学メディア学習支援センター長・聖心女子大学教授 / 日本教育工学協会 常任理事)
40回記念シンポジウムⅠ 13:50~
「子どもが主役となる次世代の学び ~多角的見地から教育を考える~」
分科会Ⅰ(ワークショップ) 15:40~
  1. 1. 教育の情報化推進のための地域・学校における戦略づくり
  2. 2. ICT活用を学校としてどのように発展させるか
  3. 3. ニュース制作
  4. 4. 情報活用の実践力をどのように育成するか
  5. 5. シンキングツールの授業での効果的な活用と可能性
  6. 6. 教員のICT活用指導力向上のための研修
  7. 7. 発達障害のある児童生徒のためのICT活用
ミニセミナー 17:30~

大会2日目 10月25日(土)

全体会・分科会会場:京都テルサ
受付 9:00~
分科会Ⅰ(実践報告) 9:10~
  1. 1. 授業におけるICT活用
  2. 2. 情報教育
  3. 3. 情報モラル・セキュリティ
  4. 4. 特別支援教育における教育の情報化
  5. 5. 校務の情報化
  6. 6. 教員研修・サポート体制
  7. 7. 教材・アプリケーション開発
  8. 8. 21世紀型学力と教育の情報化
昼食・休憩・見学 11:20~
40回記念映像資料視聴 13:10~
40回記念シンポジウムⅡ 13:30~
「子どもが主役となる次世代の学び ~情報教育を軸にした校内研究~」
閉会行事 15:10~15:30
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(2014年8月掲載)