情報教育/プログラミング/情報モラル

コンピュータ教室で育む「情報活用能力」

札幌市立屯田北小学校 教務主任の朝倉 一民 主幹教諭は、“情報専科”として、各学年の先生方と連携し、コンピュータ教室での学習指導の充実を図られています。タブレット端末の活用が盛んな同校において、コンピュータ教室での学習指導に注力される理由やその取り組みについてお話を伺いました。

朝倉 一民 札幌市立屯田北小学校主幹教諭

朝倉 一民 札幌市立屯田北小学校主幹教諭

子ども主体のタブレット端末活用へ

本校は、平成28年度にコンピュータ教室の機器更新が行われ、教員機を含め41台のデスクトップ型コンピュータと学習活動ソフトウェア『SKYMENU Pro』が整備されています。普通教室には、札幌市の整備で導入された大型テレビと市の整備に加えて学校予算で購入した教育用ノートPC、実物投影機があります。教育用ノートPCは、デジタル教科書を利用できるので、ICTで教材を提示するといった活用が定着しています。

そして、本校独自の取り組みで、タブレット端末を活用した授業に力を入れています。タブレット端末は、研究助成などを利用して揃えました。平成25年ごろから少しずつ台数を増やし、現在では56台の端末があります。タブレット端末の活用は、教師に1台の環境で教材を提示する、子ども1人1台でドリルアプリの問題を解く、といった従来の授業スタイルを変えない形の活用から始まりました。そこから授業研究を重ね、現在では子どもがインターネット検索をして調べる、理科で実験の様子を動画で記録する、校外学習に持ち出して撮影し、写真を基に資料を作成して発表する、といった子どものICT活用が広がっています。教師主体の授業から子ども主体の授業へと変化してきています。

校外にタブレット端末を持ち出して観察 / 実験の様子を動画で撮影

「タブレット端末」も「コンピュータ教室」も活用

インターネットで調べ学習。以前よりも動画で情報を集める子どもが増えたため、全学習者機にヘッドホンを設置したこのようなお話をすると、「タブレット端末ばかり使われていて、コンピュータ教室は使われていないだろう」と思われるかもしれません。けれども、本校ではそういったことはありません。タブレット端末の活用が広がっても、コンピュータ教室は変わらず授業で活用されています。先生方は、タブレット端末とコンピュータ教室のそれぞれの良さを考え、目的に応じて使い分けています。

具体的には、タブレット端末は先ほど述べたような子どもたちが思考力・判断力・表現力を働かせ、アクティブに学習活動に取り組むような場面で使われています。高学年で多く利用される傾向があります。

一方、コンピュータ教室は、「情報活用能力」の3つの要素である「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」を育む場所として、1年生から6年生まで広く活用されています。後述する「情報教育カリキュラム」に沿って、低学年では例えばマウスのクリック、ドラッグの操作といったコンピュータの基本的な操作の習得。中学年以降からはローマ字の学習に合わせたキーボード入力の練習、インターネットでの情報検索、プレゼンテーションソフトウェアでの資料作りや発表などを行っています。

ペイントソフトで1年生が作成した運動会の招待状。マウス操作を練習した

情報教育カリキュラムに沿った指導を「情報専科」でサポート

「情報活用能力」は一朝一夕に身につくものではありませんから、学校全体で連動し、段階的、系統的な指導が必要です。そのために最初に取り組んだのは情報教育として指導すべき内容の「見える化」、つまり「情報教育カリキュラム」の作成です。札幌市教育委員会の情報教育カリキュラムをベースに、本校のICT環境、ソフトウェア、教材コンテンツを踏まえて、実効性の高い内容をめざしました。

カリキュラムは、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つを柱に、ある程度行き戻りしながら指導することを想定して、1・2年、3・4年、5・6年という大きなくくりで身につけさせたい力や学習活動を定めました。各学習活動の欄には、使用できるICT機器やアプリケーションを記載し、どのようなツールを使ったらよいのか参考にしてもらっています。これによって、自分の学級の子どもたちがどのような経験をし、どのようなスキルを身につけているのかがわかりますから、ICTを活用した授業を考える際の拠り所になっています。

けれども、先生方にもICT活用の得意不得意はありますし、情報教育のために1時間丸々を割いてじっくり指導できるような余裕もありません。すべての先生方が情報教育カリキュラムに沿って授業を展開することに難しさがあります。

このような状況を踏まえて、本校では「情報専科」と称して、教務主任である私が「情報教育カリキュラム」の各項目をどの教科、単元でどのように指導できるのかを先生方に助言をしたり、T・Tとしてコンピュータ教室での指導を支援したりしています。情報専科を設けたことで、情報教育やICT活用について気軽に相談してもらえるようになり、情報教育の取り組みが学校全体で充実してきています。

4年社会:[発表ノート]でプレゼンテーションの基本を学ぶ

例えば4年生では、社会で警察署や消防署、防災センターに見学に行ったので、学級担任と相談して学習のまとめとプレゼンテーションの学習を絡めて実践しました。授業はコンピュータ教室で行いました。初めてコンピュータでプレゼンテーション資料を作成する子どもたちだったので、冒頭では、まずテキストの量や文字の大きさ、写真の見せ方などプレゼンテーションの基本を押さえてから作業に取り組ませました。

プレゼンテーション資料は、『SKYMENU Pro』の[発表ノート]で作成しました。[発表ノート]を利用した理由は2つあります。

1つは、「プレゼンテーションの基本をしっかり学ばせたい」ということです。多くのプレゼンテーションソフトウェアは、表現するための機能がさまざまに搭載されています。そのため、子どもたちは、文字の色やフォントのデザイン、アニメーションなどの見た目の工夫に関心が向きます。けれども、それは4年生に学ばせたいプレゼンテーションの基本、つまり「伝えたいことに沿って写真やテキストを効果的に見せる」ということに直接関わりのないことです。その点、[発表ノート]は、授業でプレゼンテーションを学ぶときに本当に必要な機能が揃っていて、操作性もシンプルなものでした。プレゼンテーションを初めて学ぶ4年生に適していると考えました。

もう1つのねらいは、「協働的な学びの実現」です。コンピュータ教室の授業というと、1人の世界で黙々と作業をするイメージがあると思います。しかし、そういった経験は、学校でなくても家庭や日常の生活で経験できることです。子どもたちが学校に来て学ぶ価値は、「30人、40人の学級の仲間が集まって学ぶこと」にあります。

[発表ノート]の[グループワーク]で資料を協働で作成。グループで相談しながらまとめたこの視点でコンピュータ教室の授業を考えたとき、1人ひとりがコンピュータで作業をしつつ、簡単な操作でグループでの協働作業が行える[発表ノート]の[グループワーク]は理想的な仕組みでした。

授業の様子を見ると、子どもたちは写真の見せ方やテキストの量、文字の大きさなどに注目して作業をしていましたし、まるで普通教室で授業をしているときのように自然な形で周りの友だちに相談したり、教え合ったりして学ぶ姿を見ることができました。

このような学習活動を継続して実施することで、伝える力や協働で学ぶ力を身につけさせたいと考えています。

コンピュータの原理原則の理解につながる学習活動を、
教師が意図的に埋め込むことが必要

PC教室の学習環境を生かし、「情報の科学的な理解」を

「SKYMENU Pro」の[教員機画面送信]機能で、サーバ上のフォルダから写真を選ぶ操作を説明コンピュータ教室で授業をする際は、「情報の科学的な理解」、特にコンピュータの原理原則の理解につながるような学習場面を設定するようにしています。例えば本時では、見学に行った際に教師が撮影した写真をあらかじめサーバの共有フォルダに保存しておきました。授業中に子どもたちにサーバ上のフォルダまでアクセスするように指示し、画像を選んで挿入する操作をさせました。もちろん、写真のデータを全学習者機のデスクトップに配付することも可能なのですが、あえて手間のかかる操作を取り入れました。そうすることで、ファイルの概念やフォルダの階層構造、ネットワークというものに子どもの目を向けさせられます。今、子どもたちの周りには、タブレット端末やスマートフォンなどの便利で簡単なICT機器がたくさん普及しています。その便利さゆえに、その中にあるコンピュータやその仕組みについて意識することがありません。コンピュータの原理原則の理解につながる学習活動を教師が意図的に埋め込むことが必要だと考えています。

さらにいえば、これからの子どもたちに求められる力は、コンピュータが得意で、使えるという力だけでなく、AI(人工知能)をも操って仕事をする力です。コンピュータが得意な人と苦手な人の差は、コンピュータの原理原則への理解の差にありますから、今まで以上に意識して指導する必要があります。コンピュータ教室には、その指導の源となる要素がたくさんありますから、学習環境を最大限に生かした授業を心掛けています。

PC教室での指導の充実が、
タブレット端末の効果的な活用につながる

これまで授業におけるタブレット端末の活用研究を継続してきて、実感していることが1つあります。それは「コンピュータ教室の指導の充実が、タブレット端末の効果的な活用につながる」ということです。コンピュータ教室で段階的・系統的に学び、「情報活用の実践力」を身につけた子どもたちは、インターネットで情報を調べたり、アプリなどで情報をまとめたりする場面で、タブレット端末などの操作に手間取ることがありません。その結果、限られた授業時間を有効に使えるので、学習のより深い部分にまで辿りつけます。この実感があるので、本校としてはタブレット端末を使った授業も、コンピュータ教室での授業も変わらず続けていきたいと考えています。

コンピュータ教室の活用についてさらにいえば、本校では休み時間にコンピュータ教室を、子どもたちに開放しています。図書委員のように「情報委員」を設け、委員の子どもが中心となって運営しています。

休み時間中、子どもたちは学習者機に導入されている学習用コンテンツで、キーボード入力練習やマウス操作の練習を行っています。ネットサーフィンやYouTubeの視聴は原則禁止にしています。

ちょっとした取り組みですが、情報活用の実践力の底上げにつながっています。

「学校の説明責任」の視点から情報教育の位置付けを見直す

新学習指導要領では、「情報活用能力」は学習の基盤となる能力として位置付けられ、「カリキュラム・マネジメント」の重要性も強調されています。「情報活用能力」はまさに教科横断で学ぶ内容ですから、本校においても学校全体、そして教師1人ひとりが「情報教育カリキュラム」を基に、教育課程の中の位置付けをより意識しながら取り組んでいきたいと考えています。ですので、情報専科は、あくまで情報教育を確実に推進するためのアイデアの一つに過ぎません。

とはいえ、小学生のスマートフォン所持率は年々高まっており、SNS利用に起因するトラブルが増加傾向にあります。情報モラル指導は、待ったなしの状況です。スマートフォンなどの利用は保護者による家庭での指導が前提ではありますが、子どもたちを守るためには、学校での指導は欠かすことのできない状況になっています。

そして、このような状況であるからこそ、「各学校、各学級でどのような指導が行われているのか」「指導が確実に行われているのか」といったことを学校が把握し、保護者など学校外に対して明確に説明できることが重要になってきています。

課題はさまざまにありますが、「学校の説明責任を果たす」という観点からも情報教育の位置付けを見直し、さらに学校全体で確実に指導していくための体制づくり、カリキュラム・マネジメントをこれからも考えていきたいと思います。

(2018年7月掲載)