「貼り紙」で情報セキュリティ対策を意識づける

前回は、自治体や教育委員会で定められた「情報セキュリティポリシー」や「情報セキュリティ対策実施手順」の内容を、全教職員で定期的に確認していただきたいと述べました。ルールの確認は、最低、年に一度は行っていただきたいところです。

春には、人事異動がありますが、異動の有無にかかわらず、全教職員にルールブックを配付することで、「定められたルールの存在を知らない教員がいる」といった事態を避けることができます。

情報漏えい事故の多くは、身近なところ、身近な要因で起きています。多忙ななかでもできるだけ日常的に、自然と意識できるような対策が必要です。

とはいえ、年に一度や二度の研修では、日常的に自然と意識できるようには、なかなかなりません。これは学校という組織だけではなく、企業においても同じです。そこで、特定の情報を日常的に意識しやすくする手段として、多くの企業や官公庁では「紙に書いて貼ること」が行われています。

例えば、コピー機の周辺や操作パネルの周辺に、「コピー台から原紙を取り忘れていませんか？」と書いた紙を貼るだけで、原紙の取り忘れがないよう意識されやすくなります。また、職員室の中に、「個人情報の管理を適切に」と書いた紙を貼り出しておけば、日常的にその文字を見る教員は、自然と意識しやすくなります。プリンタに、「情報セキュリティ対策に関係する印刷物の校外持ち出し厳禁」と書いた紙を貼っておくだけでも、相応の効果があると思われます。

裏紙の利用、児童生徒の個人情報漏えいの原因に

学校では「学校便り」「学級通信」「保健だより」「PTAからのお知らせ」など、多くの印刷物が用いられます。それらは、余らないように配慮して作成されていると思いますが、余った印刷物の廃棄はどのように行われているでしょうか。

印刷物は、シュレッダーで処分すれば、情報セキュリティ対策としては有効ですが、シュレッダーが職員室のどこにあるか知らなかったり、そもそもシュレッダーがあるのかどうかも知らないという教職員の方がいらっしゃるかもしれません。

また、経費節減、環境保護のために、裏紙を利用することは良いことと思いますが、その裏紙に児童生徒の住所や成績情報などの個人情報は記載されていないでしょうか。成績処理の途中の印刷物を裏紙としてうっかりメモ用紙にしてしまうといったことも実際に起きています。

学校での業務に紙が不可欠であり、使わないという選択肢がない以上、もっとも多く利用されている紙への配慮をお願いしたいと思います。

個人の携帯・スマホの処分にも注意が必要

前回、ICTの新しい技術やサービスに、ルールが対応できているかの確認を行っていただきたいと述べました。その場合、学校単独で新しい技術やサービスに対するチェックを行うことは、効率的とは言えません。学校と教育委員会、自治体が一緒になって、チェックを行う機会を設けていただきたいと思います。

教職員の方々の中にも、ブログをはじめとするSNSを利用されている方が多くおられます。こうしたサービスは、今後も新しいものが提供されていくことでしょう。こうしたサービスを個人的に利用する場合も、個人情報の取り扱いを意識していただく必要があります。

教職員の方々も、フィーチャーフォンやスマートフォンといった携帯電話を利用しておられる方がほとんどだと思います。その携帯電話の中には、ほかの教職員の連絡先や、撮影した写真などが保存されているだろうと思います。

個人で利用している携帯電話を機種変更する際、内部のデータをどのように処分しておられるでしょうか。『【2】実行できるルールづくりと周知の徹底を』の記事で、リース契約が切れたコンピュータの処分について触れましたが、同様のことが、教職員が個人で利用している携帯電話にもいえます。さまざまな情報セキュリティ対策のソフトウェアが用意されているコンピュータに比べ、スマートフォンに関しては、そうした情報セキュリティ対策を行っている教職員の方は少ないのではないでしょうか。

スマートフォンは、高額であることもあって、下取りや中古買い取りといった形で手放す方もおられます。もし、下取りに出した携帯電話の中に、個人情報が保存されたままになっていたら、どうでしょう。

個人で利用している携帯電話以外にも、自宅のコンピュータやデジタルカメラの処分についても同じことがいえます。コンピュータウイルスに代表される、個人情報を抜き取ろうとする手口は、年々巧妙になっています。そうした情報や対策も、できるだけ多くの教職員の方々で共有していただきたいと思います。

（山本 和人：Ｓｋｙ株式会社 ICTソリューション事業部）

（2015年3月掲載）