情報教育

教科「情報」実践報告

授業で話し合いを

授業で話し合いをする時の指導のポイントについて紹介します

諏訪間 雅行(神奈川県立平塚湘風高等学校 教諭)

諏訪間雅行

【あらまし】

授業で話し合いを行う際、グループを決め、○○○について話し合ってくださいといっても、それだけではうまくいかないことが多い。対象とする生徒にもよるのだろうが、少なくとも私の場合はそうだった。そこには何らかの指導のポイントがあるのだろう。現在の私は、初めて授業で話し合いを行うときには、机の付け方から細かく指導をしている。プロフを題材にした情報モラルの授業を例にして、話し合いがうまくいくように行っていることを紹介する。

【1】はじめに

教科としての目標と並行して、「論理的に考える力」「合意を形成する力」「発表する力」を養うために、この10年ほど、授業の中で話し合いを行ってきた。

実践をはじめたころは、私語も多く、テーマになかなか集中してもらえなかったが、他の先生方の授業見学・模擬授業の体験等、指導法を学びながら実践を重ねる中で、自分なりの授業スタイルが出来、スムーズに授業を展開できるようになってきた。私なりのグループディスカッションのスタイルを紹介する。

【2】話し合いの前に

話し合いで考える力を養うと思っても、事前の知識がなければ、話し合いが深まらない。今回紹介する授業の前には「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報技術の特性」「情報通信ネットワーク利用におけるトラブルの原因と対策」について学んでおり、今回はそこで学んだことの総合演習という位置づけである。

【3】プロフを題材とした、授業の流れ

3.1 授業の始めに

①発問1「プロフとは何か知っていますか」と問いかけ、自分でサイトを持っている・持ってはいないが知っている・知らないの三択で挙手をさせ、実態を把握する。

②生徒を指名し、その仕組みや記入する項目について(写真、氏名、学校、よく遊ぶ場所・・掲示板)説明させ、プロフについて知らない生徒にも、しくみを理解してもらう。

③プリント1(娘がプロフにおける中傷で不登校になった母親の投書等)を配布し、指名して読ませる。

多くの人は、ニュースなどでプロフの存在を知ってるかも知れないが、本当の姿を知っている大人は少ないと思う。実際、私も娘のトラブルがなければここまで詳しく知ることはなかったと思う。プロフとは、子供たちが実名で学校名を出し、……非常に危険な場所です。プロフ自体なくなればいいのだけど……やめたくてもやめられない世界なんだと思う。今回、娘はプロフで攻撃された。そして人間不信に陥り、家から出られなくなってしまった。…
「プロフの書き込みをめぐり、殺人未遂。バットで殴られ中3重体 無職少年逮捕 千葉」この手の携帯電話にまつわる犯罪のニュースを目にするた度にいつも思う。

↑図1 プリント1

発問2「この人達は、何故、プロフを規制した方が良いと思っているのでしょう。プリントに記入しなさい。君たちの考えではなく、あくまでも、この人の立場で考えるのですよ。理由を想像して書いてください。」

発問3「プロフのよい面、悪い面を書いてください。」

◆ブレーンストーミングの要領で、質より量、とにかく沢山書くように指導している。

↑図2 プリント2

生徒を指名し、書いたことを読ませる。

自分が記入していない事項があったら、色の付いたペンで付け加えておくように指導する。

3.2 プロフを規制すべきかの話し合い

①個人で考える

発問4「以上のことをふまえて、プロフを規制したほうがよいか、規制する必要がないか、規制するとすれば、どのような規制をするのか、君たちの考えを書きなさい。理由も書くのですよ。」 

◆理由が大事であることを強調する。

②グループをつくる

指示1「では、グループ討議します。4人で1つのグループになるように、机をつけなさい。」

指示2「司会と、発表者を2分で決めなさい。」

指示3「司会者は手を挙げなさい。」

初めて話し合いをすると、司会と発表者を決められない場合がある。それを確実に把握して、指導をする。

③話し合い

指示4「この後、やることを確認します。司会の人が中心になって、話を進めてください。まず、順番に各自の意見を発表し、その後、話合いをしてください。時間は15分です。話し合いをして意見を聞いた後で、各自の考えを書いてもらい、代表者に発表してもらいます。」

◆話し合いでの重要なポイント(理由を言うこと、傾聴、議論を絡めること)を確認する。

プロフを規制したほうが良いか。あなたの考えを書きなさい。
規制すると書いた人は、どのような規制(写真は載せられない・プロフのようなサイトはフィルタリングで接続できなくする・等)をするのか記入すること。

規制しない     規制する

どのような規制
理由

●この後グループで行うこと
司会と発表者を決める
全員が意見を順番に発表する。
それぞれに対して簡単な質問をする。意見は全員の発表が終わってから。
全員の意見が一致する場合は、反対意見を想定して考え、それに対する考えをまとめる。
意見が一致しない場合は、それぞれの理由に対する反論をする。
質問を想定して答えを考える。

●発表について
グループでの意見を無理にまとめなくても良い。発表者の考えを言う。
発表の例 私たちの班の結論は○○○です。理由は○○○です。○○○のような考えもあると思いますがそれには○○○と考えます。

よくない例
個人情報を流出すると危険
次のようになおす
個人情報 → 具体的(氏名等)に言う。
危  険 → どのよ様な危険があるか。

↑図3 プリント2の続き

3.3 発表

プレゼンテーション実習で学んだ、発表者・聞き手の注意点を確認してから、各班の発表を行う。

それに対して、各班から質問を出させる。

全ての班の発表終了後、教員よりまとめのコメントをする。

【4】話し合いをする際に気をつけていること

  • 話し合いに入る前に、まず個人の作業として自分の考えを書かせる。
  • 人数は4人1グループを基本にしている。内容にもよるが、6人をこえると、話し合いに参加しない生徒がでてくる。また、きちんと机をつけさせ、話し合いの雰囲気を作ることも重視している。
  • 最初に司会と発表者を決めさせ、それを確認してから話し合いを始めさせる。
  • 時間を明確にする。時間をくぎり、今何をする時間か分かるようにする。
  • 話し合いの手順を具体的に指示し、さらに配付するプリントにも記載しておく。
  • ゴールを明確にする。(多くの場合、最後に発表をさせる。)
  • 発表の型を示し、無理なく発表が出来るようにする。

【5】おわりに

ここで紹介した指導の流れは、前任の神奈川県立湘南台高等学校で、「総合的な学習の時間」を中心として、集団で実践しているものである。学校としての指導スタイルとして定着している。

授業で初めて話し合いを行う時は、ここに示したように、丁寧に指導を行っている。まずは型を示し、原則としてそれに基づいた活動をさせている。回数を重ねる中で、細かい指示は不必要になってくる。1年後には、話し合いの進め方、発表の内容や話し方も格段の進歩をみせる。

今後の課題は、思考や議論を深めさせるための指導法である。ご教授いただければ幸いである。

※第4回全国高等学校情報教育研究大会大阪大会要項から転載
(2012年4月掲載)