情報教育

教科「情報」実践報告

教科情報と他教科との教科横断授業実践

稲川 孝司(大阪府立東百舌鳥高等学校 教諭)

稲川孝司

【あらまし】

情報科での学習成果が他教科で役立つことを目標に、連携を図り積極的に教科横断型の授業を実践した。同時展開の授業では詳細な打ち合わせや授業スケジュールの調整、欠席者へのフォローなど授業を実施する上で少し困難があるが、互いの教科の目標をより高いレベルで達成できた。情報科が他教科と協力することで、教科指導におけるICT活用の具体的な方法や有効な活用場面が明らかになり、教員並びに生徒のICT活用能力の向上に結び付いた。

【1】はじめに

教科情報は、学習指導要領に「情報科での学習成果が他教科等の学習に役立つように」と記されていることと、新学習指導要領で共通教科情報という名前になっていることから、教育の情報化を推進するために情報科が他の教員ならびに生徒の情報活用能力の向上に積極的に寄与することが求められている。

そこで、教科横断授業を行い、情報科と担任や他教科が協力して情報の収集・判断・処理・編集・表現のプロセスの一部を共有して、教員並びに生徒の情報活用能力の向上をめざした。

【2】教科指導におけるICT活用の意義

文部科学省「教育の情報化ビジョン(骨子)」1)では、教科指導におけるICT活用により、学習内容をわかりやすく説明する、繰り返し学習で知識の定着を図る、学習への興味関心を高める、教員と生徒の双方向のある学習を実現できる等の可能性を示している。

しかし、教育の情報化は学校に情報機器が入っただけで成り立つのではなく、それらを活用して教員と生徒の情報活用能力が共に向上することで、21世紀の知識基盤社会にふさわしい学校教育がなされるのである。

そこで、現状で学校における情報活用能力の向上をめざすには、ICTを活用した授業を実践している情報科の教員を中心に、HR活動や総合的な学習、さらに他教科との教科横断学習を実践して、他の教員を巻き込みながら教員全体の情報活用能力を上げることが当面の目標になると考えた。

実際には、情報の収集・判断・処理・編集・表現のプロセスを様々な教科やLHR、総合的な学習の時間などで実施して、多くの先生方に授業内容や手法、生徒の活動の様子を見てもらい、また協力して授業実践をした。

【3】教科横断授業実践

図1 進路希望ワークシート3.1 進路希望先データ収集

2年生の初めに、進路目標を持たせるために自分の希望する大学や専門学校などを調べさせるキャリア教育を実施した。LHRの時間に自分の興味・関心を見つけ、逆引き辞典を使い、希望する大学や専門学校を調べる。そして、情報の時間に所在地や家からの経路、所要時間、学校の特徴などをインターネットで検索させ、あらかじめ決められたワークシート(図1)を埋めて完成させた。

3.2 修学旅行調べ

高校生活の中で最大の行事である修学旅行を充実させるために、LHRの時間において調べ学習の項目を検討して選定し、グループを作成した。そして、情報の授業で修学旅行先の地理、歴史、人物、食べ物などについて調べ、総合的な学習の時間に模造紙に書いてまとめ、文化祭で発表した。

図2 修学旅行文集例3.3 修学旅行文集作成

ICTを活用して、A5・1ページの縦書き、写真を加工していれるという条件を付けて修学旅行文集を作成させた。内容は自由であるが、他人が読むことを前提に書かせた。あらかじめ決められた縦書きのテンプレートに、タイトル、名前、見出し、内容を新聞形式で書き、自分が映っている写真を入れさせた。デジタルのデータはそのままで、印画紙の写真はスキャナーで読み込み、パソコンに取り込んで加工させた。クラスの全員のデータはカラー印刷してクラスごとに配布した。また優秀な作品は校長室の前に掲示してもらった。

図3 青年海外協力隊の講演3.4 人権学習のための調べ学習

本校では、人権教育の一環として、独立行政法人国際協力機構(JICA)による国際協力出前講座を活用して、青年海外協力隊の人に講演をお願いしている2)。生徒たちに広い視野で世界を見つめさせ、様々な国・民族・文化・社会の抱える問題などを知り、自分たちの社会や自分自身の生き方について考える機会を与える授業である。情報の授業と総合的な学習の時間を組み合わせ、クラスごとに国の歴史、食べ物、地理、日本とのかかわり、政治上の問題点などを調べ、グループでポスターを作成し当日掲示して、話を聞いた。

図4 自己紹介プレゼンテーション授業3.5 英語による自己紹介プレゼンテーション

英語科と情報科が協力して、ICTを活用して英語による自己紹介プレゼンテーションを行った。ここでは、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、自分の考えを適切に伝える能力を養い、限られた時間の中で英語科と情報科の授業の質を高めることをねらいとした。

【4】結果

普段の授業では系統的に説明していくことが多いのに対し、ここで報告している授業は最初から目標が明確であるため、教科情報の単独授業より、生徒たちは積極的に授業に参加しており、教科横断授業としてより高い目標を達成できた。

教師が教えなくても、クラスの誰かが新しい技術を使って作品を作ると、まわりに波及していく。写真を加工する授業では、さまざまな画像処理を各自で見つけ出していた。

修学旅行文集作成では、友人に見られることを意識して書き、自分自身を客観的に書くことができた。また、作業中に他人に読んでもらって評価してもらうことで、その指摘をもとに、文集の内容に深みができて文章表現能力の向上につながった。

英語による自己紹介プレゼンテーションでは、視覚に訴えるプレゼンテーション手法を取り入れて、生徒がより積極的にコミュニケーションを図ろうとする授業ができた。

参考文献

  1. 文部科学省、教育の情報化ビジョン(骨子)
  2. 稲川孝司、山田英子:教科横断型の人権学習教材、大阪府My授業実践コレクションNo.95

※第4回全国高等学校情報教育研究大会大阪大会要項から転載
(2011年12月掲載)