情報教育

教科「情報」実践報告

情報通信ネットワークを活用した情報の授業

Pukiwikiによるポータルサイトの活用

稲川 孝司(大阪府立東百舌鳥高等学校 教諭)

稲川孝司教諭

情報の授業で複数の教員や生徒を支援するために、授業の流れ、授業に必要な説明やファイルを置いたポータルサイトを学校内に構築し運営してきた。当初はHTMLのタグで書いていたため、あまり更新ができなかったが、CMSのPukiwikiにすることでブラウザから簡単に内容を変更でき、授業の変化に対応できるようになった。折しも情報通信ネットワークを活用して生徒が体験し理解を深めることが求められていることから、ポータルサイトを積極的に活用して情報の授業を行っている。

【1】はじめに

2013年から実施されている教科情報では、情報通信ネットワークを積極的に活用した授業を行うようになっている。その根拠は、学習指導要領には「情報及び情報技術を活用するための知識と技能を習得させ、情報に関する科学的な見方や考え方を養うとともに、社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割や影響を理解させ、社会の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる」(1)と目標が書かれているからである。

また、教育の情報化ビジョン(2)では「生徒が情報モラルを身に付け、 コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ実践的・主体的に活用できるようにするための学習活動を充実」させることを求めている。

そこで、校内のポータルサイトを使って情報通信ネットワークを積極的に活用し、ブラウザを使って授業の説明用資料や過去の優秀作品、授業に役立つリンク集などを閲覧し、授業で必要なファイルをダウンロードする授業を行っている。

【2】授業用ポータルサイト

日々の情報の授業において、複数の教員や生徒が授業の進め方や教材、関連情報などをWeb上から効率よく参照できれば、授業がスムーズに進む。また授業の手順が書かれてあれば、欠席した生徒や遅れている生徒が後から学習できる。教科情報が始まった2003年にLinuxサーバを構築し、Webサーバを動かして授業用ポータルサイトを校内に設置した。しかし、ポータルサイトを直接HTMLのタグで記述していることもあり、教師側の教材準備時間とサイトの更新の時間が十分にとれず、積極的には使わなかった。

図12006年頃に「Web2.0」と呼ばれる新しいWebの方向性が話題になり、オープンソースのCMSとしてWordPress、Xoops、moodle、Netcommons、wiki等を検討し、データベースを必要としないPukiwikiでポータルサイトを構築することにした。

その理由は、大阪府立の各高校にはSky株式会社のSKY EDUCATION SERVER(以後、SES)が導入されユーザー管理などを行っており、そこではWebサーバであるApacheとPHPが動いているので、特別にサーバを立てなくてもPukiwikiでポータルサイトが構築できるからである(図1)。

【3】SESのWebフォルダ機能

図2SESの個人フォルダにはWorkとWebフォルダがある(図2)。Workフォルダは、校内ネットワーク上の自分専用のフォルダにデータを保存できるもので、デスクトップに表示されており、校内ならば簡単にどこからでもアクセスできる。

Webフォルダは校内ネットワークで公開するためのWebファイル(HTML)を置いておくもので、SES上でWebサーバ(Apache2)が動いているため、ブラウザを使ってネットワーク上から http://svfw01/user/ユーザー名/ で個人のhtmlファイルを閲覧できる。

【4】Pukiwikiについて

Pukiwikiはデータベースを必要とせず、WebサーバのApacheとPHPが動く環境で動作するため、比較的簡単に設置できるのが特徴である(3)。また、日本での動作実績が多く、当初から日本語をサポートしている点やUTF-8で動くなど使いやすい。

4.1 PHPの動作確認

SES上ではPHPが動いているかどうかはWebフォルダのhtdocsフォルダにPHPで書いたファイルを置けば動作が確認できる。

図3
  1. 1. エディタで <? phpnfo(); ?> と入力し、ファイル名phpinfo.phpで保存
  2. 2. そのファイルを、作業フォルダ→Web→htdocsの中に移動
  3. 3. ブラウザを立ち上げ、http://svfw01/user/ユーザー名/phpinfo.php と入力
  4. 4. 右のように表示されれば、PHPが動いていることがわかる

ちなみに、2013年6月の時点でVersionが5.2.8になっていた(図3)。

4.2 Pukiwikiのインストール

  1. 1. Pukiwiki公式サイト(3)からpukiwiki1.4.7-notb.zip(388kB)をdownload
  2. 2. 解凍ツールでファイルを解凍
  3. 3. 設定ファイルであるPukiwiki.ini.phpの中身をエディタで必要に応じて設定
  4. 4. 193行目のアドミンパスワードを変更
  5. 5. すべてのファイルを デスクトップ→作業フォルダ→web→htdocs の中へコピー

4.3 Pukiwikiの使い方

  1. 1. ブラウザを立ち上げ、http://svfw01/user/ユーザー名/index.php と入力
  2. 2. Pukiwikiが表示
  3. 3. 上部の編集メニューを押すと編集画面になるので、#commentや#calendar2などのプラグインを入力して、動作を確認する

【5】おわりに

授業用ポータルサイトをPukiwikiで作成した結果、エディタでHTMLのタグを書きFTPで転送しなくても、ブラウザのみでテキストを作成して容易に公開できるようになった。また、写真や提出用文書も簡単にアップしたりダウンロードしたりできる。教員にとっては、システムを思い通りに設計し柔軟に変更ができるので、情報の授業に必要な知識を蓄積しつつ構造化できた。LAN教室の生徒機のパソコンは、ブラウザを立ち上げると自動的にポータルサイトに接続されるようになっている。そのサイトには、毎回の授業の説明用のページ、教員説明用資料、優秀作品集、提出用ファイル、リンク集などがあり、生徒にとっては、授業の作業目標や手順、提出ファイルを確認しながら、授業を受けることができている。

このポータルサイトはまさに情報通信ネットワークそのものであり、今後教員や生徒がもっと使いこなせるようになる必要があると考える。

参考文献

  1. (1)文部科学省:高等学校学習指導要領、p125、平成21年3月告示。
  2. (2)文部科学省:教育の情報化に関する手引き、p75、平成22年10月
  3. (3)Pukiwiki公式サイト:http://pukiwiki.sourceforge.jp/(2013.5.10アクセス)
  4. (4)能城茂雄:オープンソースを活用したインターネットコミュニティの授業について、第4回全国高等学校情報教育研究大会大阪大会、211。

(2013年9月掲載)