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知っておきたい!無線LANの基礎知識

無線LANのセキュリティ対策の考え方

学校で無線LANの話をさせていただくと「セキュリティに問題がある」「無線LANは危ない」といった認識をお持ちの方にお会いすることも少なくありません。しかし、詳しくお話を伺うと、どんな問題があって、どのように危ないのかを、具体的にご説明いただけることはあまりありません。そこで、今回は無線LANのセキュリティについて考えていきたいと思います。

電波の届く範囲が、データのやりとりが行われる範囲

ケーブルを気にすることなくネットワークが利用できる無線LAN。ご自宅でも無線LANの機器を設置して、利用されている方も多いかと思います。ケーブルでネットワークに接続されているわけではない無線LANは、その電波の届く範囲がデータの行き来する(通信できる)範囲ということになります。当然ながら、電波が届く範囲が広ければ、学校関係者以外の第三者でもデータが行き来する範囲に入ることが可能だということになります。

例えば、学校の建物に面した道路に車を停めていると、学校の無線LANネットワークを検知することがあります。これは、学校の建物の外に無線LANの電波が届いているということを表します。

「無線」には、どんな危険があるのか

無線LANの最大の強みであると同時に、最大の弱みにもなるのは、「無線」であることです。有線であればケーブルによってつながれた端末でしか通信はできません。しかし無線の場合、電波が届く範囲なら誰もが、通信されているデータを受け取れる可能性があります。もし、外部の端末がデータを受け取れるような状態だと、次のようなことが懸念されます。

  • ・インターネット回線を無断利用される
  • ・知られたくないデータの通信を知られる
  • ・端末やサーバのデータを盗み見される

ネットワークに侵入できてしまうということは、ネットワークの悪用が可能になることでもあります。機微な個人情報が扱われている学校においては、無線LANに一定以上の安全対策が必要だと言われます。

電波が強すぎると学校周辺にもデータが届いてしまう

幾重もの安全策を施せる仕組みがある

では、学校の敷地の近くで無線LANの電波が届いてしまう場所なら、簡単に校内のデータを第三者が閲覧したり、取得したり、さらに悪用したりすることができるものでしょうか?答えは、無線LANを設置時に、どれだけの対策を施したかによります。

例えばあなたの家は、あなたが留守のとき、他人が簡単に出入りできるでしょうか? と問われたとしましょう。「玄関の鍵をかけているので、入れません」と答える人もいるでしょうし、「玄関の鍵はかけたけど、窓から入られると困る……」と心配する人もいるでしょう。

中には、「玄関も勝手口も、鍵を2つずつかけているので、1つの鍵が開けられても簡単には侵入できないようになっています」という場合や「窓には鍵以外に、セキュリティロックを備えてあり、窓ガラスが割られないように保護フィルムを貼っています」という人、さらには、「窓ガラスが割られたら、警備会社に通報されるようになっています」という人もいるでしょう。無線LANも同じように、幾重ものセキュリティ対策を設定することによって、安全性を高めることができます。

気を付けるべきなのはどこかを考える

無線LANのセキュリティ対策を、自宅での日常生活に置き換えて考えてみましょう。

まず「どこまでの範囲にセキュリティ対策を施すか」です。母屋だけを対象にするのか、離れや庭も含めるのか、さらに裏山まで含めるのか。まず、守る範囲をはっきりさせましょう。

次に通信について考えます。通信を日常生活に置き換えるなら「会話」に相当します。家の中での会話が、隣の家に聞こえてしまうほど大声だったり(電波が遠くまで届きすぎている)、はっきりと聞き取れるほどの明瞭な会話だったり(暗号化されていない通信)といった状態は避けたいです。

また、24時間いつでも来客が家に入れるような状態だと、誰かが家の固定電話(インターネット回線)を勝手に使ってしまってもわかりません。もし、その回線が犯罪に使われたりすると深刻な事態を招きかねません。

セキュリティ対策では、どこに対してセキュリティ対策を施すのかを意識して考えていただきたいと思います。

具体的なセキュリティ対策の話をする前に、次回は電波の特性や無線LANの規格について説明します。それぞれの特性をご理解の上、ご自身の学校にあったセキュリティ対策は何かを考える参考にしていただければと思います。

(山本 和人:Sky株式会社 ICTソリューション事業部)

(2016年1月掲載)