ICT活用教育のヒント

1人1台実践レポート大阪市立城北小学校 ICTの特長を生かすことで容易となる
学習場面の3つの観点 「試行の繰り返し」「思考の可視化」「瞬時の共有化」

平成28年度、本校に40台の学習者用端末が整備された。本校では、大阪市教育センター「ICT活用」の研究指定校など、様々な支援事業による取組を通して、ICT活用の推進を図り、令和2年度に、「学校情報化認定優良校」を再取得した。本稿では、本校の情報化の取組と、1人1台の学習者用端末によるICT活用の実践について紹介する。

斉田 俊平

大阪市立城北小学校指導教諭 大阪教育大学教職大学院生

「学校情報化認定優良校」を取得

資料①学校情報化リーフレット

大阪市では、平成29年3月改訂の大阪市教育振興基本計画において、重点的に取り組むべき施策「国際社会において生き抜く力の育成」の中で、「ICTを活用した教育の推進」が掲げられ、大阪市における小中学校において、ICT活用の推進が目指された。

学本校では、校内の学校情報化を推し進め、平成29年度に、日本教育工学協会(JAET)「学校情報化認定優良校」を取得した。その後、様々な支援事業による取組を通して、ICT活用の活性化を図り、学校全体の情報化に取り組んできた。

学習指導要領の改訂による一層の学校情報化が求められる中、平成31年度には新たな取組として、文部科学省「教育の情報化の推進」が示す3つの柱「教科におけるICT活用」「情報活用能力の育成」「校務の情報化」に重点を置いた。3つの柱をもとに、教科における日常的なICT活用の促進、児童の情報活用能力の育成を意識したICT活用実践、学校の業務改善や効率化など、総合的な情報化の推進を図ることで、令和2年5月に「学校情報化認定優良校」を再取得した。

そして、本校のこれまでの情報化に向けた取組を「教科指導におけるICT活用」、「情報教育」、「情報化の推進体制」、「校務の情報化」、「環境整備」の5つに整理した。5つの大項目をさらに細分化した具体的な取組内容をもとに、現在の自校における情報化の状況を自己評価し、今後の改善を図るための「学校情報化リーフレット資料①」を作成した。また、学習の基盤となる資質・能力「情報活用能力資料②」について、系統的な育成を目指した体系表を作成し、情報活用能力育成の視点を意識したICT活用の実践を推進していった。

【資料①】学校情報化リーフレット

【資料②】大阪市立城北小学校 情報活用能力体系表(令和元年度)

ICTを活用した学習活動の充実
『SKYMENU』を活用

令和2年、文部科学省「各教科等の指導におけるICTの効果的な活用」により、各教科等における1人1台の学習者用端末の活用例が示されるなど、より一層のICTの効果的な活用が求められる。

本校では、文部科学省「教員のICT活用指導力チェックリスト」による調査から、「B 授業にICTを活用して指導する能力」の項目における「B-2 互いの意見などを共有させたり、比較検討させたりする」や「B-4 グループで話し合って考えをまとめる」について、教員による自己評価に課題が見られた。そこで、ICTの特長「距離や時間を問わずに情報の相互のやり取りが可能」や、「蓄積した情報を自由に加工・編集・表示することが可能」なことを生かし、ICT活用により実現が容易となる学習場面の3つの観点、「試行の繰り返し」、「思考の可視化」、「瞬時の共有化」を通じて、児童が互いに教え合い、学び合う協働的な学びや、児童一人ひとりの能力や特性に応じた指導等を充実させ、教科指導におけるICTの効果的な活用の推進やICT活用指導力の向上を目指した。

また、ICTの特長を生かした学習活動を実現するために、協働学習支援ツール『SKYMENU』の[発表ノート]を活用した。[発表ノート]を使うことで、何度も試行錯誤を繰り返し、距離や時間を問わずに思考の過程や結果の可視化・多様な考えを瞬時に共有するなどの学習活動が容易に実現し、子ども同士の意見交換や発表など、お互いを高め合うための学習活動を充実させることができた。

3年生国語科「サーカスのライオン」
1人ひとりの心情曲線を重ねて表し、
「考えの差異や共通点に気づく」

国語科において、ICTの特長を生かした実践を紹介する。実践した単元は、3年生国語科「サーカスのライオン」である。

本教材は、「設定―展開―山場―結末」という物語の基本構成に沿った構成になっている。時を表す言葉や中心人物(じんざ)の描かれ方をもとに場面分けを行い、(じんざ)の行動描写や男の子との会話などを通して、(じんざ)の気持ちや人物像が捉えやすい物語である。男の子に出会う前、出会った後、男の子を必死に助けようとするときなど、場面の移り変わりとともに(じんざ)の気持ちが徐々に変化していく。また、“男の子を助けるために火の中に飛び込んでいく”行動描写や情景描写にすぐれた山場の場面では、火事場の状況と中心人物の行動を関連付けて読むなど、中心人物に心を寄せながら読むのにふさわしい教材である。

児童は、これまでに物語の登場人物に注目し、行動描写や会話文、心情を表す表現等を根拠に、気持ちを想像する学習を行っている。しかし、本単元のように、中心人物に焦点を当て、変化を読み深めるなどの学習はあまり経験していない。そこで、本単元のねらいを次のように設定した。

物語の中心人物に焦点を当て、その気持ちを具体的に想像し、場面の移り変わりによる気持ちの変化を読み取っていけるようにする

また、本実践では、中心人物(じんざ)の気持ちの変化を考えさせるための手立てとして、心情曲線に表す活動を行った。視覚的に表現することが難しい気持ちの変化について、心情曲線を用いて可視化することによって、場面の移り変わりによる気持ちの変化を見える化し、(じんざ)の人物像について読み深めていくことをねらいとした。さらに、心情曲線を用いて、友だちと伝え合う活動を通して、多様な考えに触れ、中心人物に対する想像をさらに広げられるようにした。

これらの学習活動は、ICTの特長を生かすことで容易に実現できると考え、「試行の繰り返し」、「思考の可視化」、「瞬時の共有化」を用いた学習活動を行った。

以下では、全8時間の中で特にICTの特長を生かし、効果的にICTを活用した第6時の学習活動を紹介する。

本時の展開(学習の流れ)

学習の流れ 主な学習活動
導入

1本時の課題を確認する。

  • 男の子と出会って交流することで変化していった中心人物(じんざ)について想起し、どのような人物なのかを考え、交流する。
展開Ⅰ

2音読する。

  • (じんざ)の気持ちが大きく変化する「男の子と交流する場面」について、(じんざ)の気持ちを想像して読む。

3気持ちの変化を表す(じんざ)の行動や様子を表す言葉をもとに、心情曲線に表す。

  • 中心人物の気持ちを想像して心情曲線に表し、その根拠となった箇所に傍線を書く。

4【第1時・本時】の心情曲線を比較する。

  • 第1時にかいた自分の心情曲線と比較し、これまでの学習を通じてどのように読みを深めていったのかを確かめる。
展開Ⅱ

5個々の心情曲線を全体で共有し、交流する。

まとめ

6本学習の振り返りをして、次時の学習を確認する。

  • 心に残った(じんざ)の行動について考え、友達に紹介したい場面を考える。

思考を重ねる「試行の繰り返し」

▲ 教科書の全文が書かれた[発表ノート]に心情曲線をかく

(展開Ⅰ-3)では、[発表ノート]上の教材文から(じんざ)の気持ちが表れている行動や様子、セリフに傍線を引き、叙述をもとに根拠を持たせて心情を読み取っていった。[ペン]機能を活用することで、色の変更や直線を容易に引けることに加え、何度も繰り返し修正や編集ができることから、試行錯誤を重ね、自分の考えを深めることができた。また、修正したデータは記録して見返すことができ、後から編集が加えられるなど、いつでも「試行の繰り返し」が容易に実現できた。

さらに、書き込んだ[発表ノート]は、拡大提示機で投影することで、友だちの考えと比較し、さらに思考を重ねることができた。

心情曲線で表す「思考の可視化」

▲[資料置き場]の「表情」で心情曲線をかく

叙述をもとに(じんざ)の心情の変化を読み取り、考えの根拠とともに心情曲線で表現した。中心人物をはっきりと意識して、その気持ちを具体的に想像し、場面の移り変わりによる気持ちの変化を読み取っていくことで、(じんざ)に対する理解を深めていった。場面ごとの(じんさ)について、行動描写や男の子と交わす会話などに傍線を引き、[資料置き場]の様々な(じんざ)の表情を使って、その時の気持ちを表した。[資料置き場]には、事前に“笑顔”“真剣”“怠情”等の表情をした(じんざ)を用意し、画面に挿入できるようにした。すべての場面における(じんざ)の気持ちの変化を1本の心情曲線につなげることで、(じんざ)の気持ちの変化を物語全体で俯瞰的に捉え、(じんざ)の人物像について読み取ることができた。

また、(展開Ⅰ-4)では、第1時に初めて物語を読んだ後に表した心情曲線と本時の心情曲線を比較した。本文を根拠とした心情を表す表現や心情曲線の傾き、山場など、第1時の心情曲線との違いに着目し、これまでの学習を通じてどのように読みを深めていったのか、自分との対話から、これまでの学びの成果をつかむことができた。

多様な考えを比較する「瞬時の共有化」

▲ 初発と本時、2つの心情曲線を比較

(展開Ⅱ-5)は、[画像合成]機能により、個々で作成した心情曲線を教員の[発表ノート]に集約することで、互いの考えを瞬時に共有し、比較・関連付けを行った。共有画面をもとに、学級全体の意見を一つにまとめるのではなく、多様な考えをもとに自分の考えを明確にするために、比較・関連付けをするよう意識づけ、心情曲線の着目する視点を焦点化した。また、児童一人ひとりが表した心情曲線を色分けすることでそれぞれの心情曲線の違いを明確化し、自分と心情の傾きが似ている曲線や大きく異なる曲線とを比較した。気持ちが変化していく傾きやタイミングなど、自分と友だちの考え方や感じ方の相違点や共通点について、多様な考えに触れ、中心人物に対する想像をさらに広げ、自分の考えを深めることができた。

▲ 個々の心情曲線を重ねることで、多様な考えに触れさせた

実践を終えて

本実践において、ICTを活用することで、気持ちの変化を可視化し、用紙では重ねることのできない心情曲線を共有することで、比較・関連付けを行い、何度も試行錯誤を重ねることが容易に実現できた。

本時の児童の振り返りでは、「友だちの心情曲線は、自分とは違う(じんざ)の行動から、心情曲線が上がっていることに気づき、自分が想像していたのとは違う(じんざ)の気持ちを知ることができた。」という記述が見られるなど、一つの物語でも読み手によって、一人ひとりの感じ方に違いがあることを経験することができた。一つの物語から、自分とは異なる行動に着目したり、同じ行動を根拠にしながらも、異なる表現だったりすることに気づくことで、自身の表現や感性を豊かにすることができたと考える。これにより、児童は、中心人物を意識して物語を読むことで、行動描写や会話文に着目し、情景を具体的に想像しながら読んだり、中心人物の気持ちの変化や性格をより明確に捉えながら読んだりすることの良さについて、自覚が芽生えたと考えられる。

本実践では、ICTの特長を生かすことで容易となる学習場面の3つの観点、「試行の繰り返し」、「思考の可視化」、「瞬時の共有化」について、それぞれの具体的な活用例を紹介した。しかし、すべての時間に3つの観点を用いる必要はなく、効果的な学習場面において、それぞれ使い分けていくことが重要である。

また、これまで実現が難しかった学習場面が、協働学習支援ツール『SKYMENU』を活用することで容易となり、より一層の多岐にわたる実践が期待される。筆者においても、今後のGIGAスクール構想による1人1台端末活用に向けて、ICTの特長を生かし、効果的な活用による実践をさらに積み重ねていきたい。

(2021年02月掲載)