ICT活用教育のヒント

商品企画の背景 学習活動端末支援Webシステム『SKYMENU Cloud』は
どのような観点で作られているのか

児童生徒1人1台の端末整備が進むなか、2020年6月にサービスを開始した『SKYMENU Cloud』は、どのような観点で開発されたのか。その背景をお伝えします。

無償ソフトウェアだけで十分というご意見について

当然のことですが、タブレット端末などのコンピュータ(ハードウェア)は、それ単体ではあまり役に立つものではありません。先生方が文書や資料を作成する際、ワープロや表計算のソフトウェアをお使いになるように、目的に応じたソフトウェアを利用することで、初めてその有用性を発揮します。

学習活動のなかでは、どのようなソフトウェアを活用すればよいのでしょうか。現在は、OSメーカーからも学習管理システム(以下、LMS=Learning Management System)などの学習用ツールが無償提供されているので、これらのツールがあれば授業支援ソフトウェアは必要ないというご意見もあります。しかし、これらのツールの多くは海外製で、ワープロや表計算、ファイルや課題の管理、カレンダー、メールなど主に授業外での利用や個別学習を前提とした機能を中心に構成されており、文化が異なる日本の授業の中で、子どもたちの学習活動をサポートするという視点で見ると、必ずしも十分だとはいえないのではないでしょうか。

文部科学省の『GIGAスクール構想の実現 標準仕様書』でも、想定されるタブレット端末の活用シーンとして「個々の児童生徒の考えをリアルタイムで教師と児童生徒間、児童生徒同士、学級全体で共有する」ことや「児童生徒同士による考えの比較や議論の活性化」といった場面が示されています。新しい学習指導要領に沿った一斉や協働的な学びにおいては、こういった場面で活用できる学習用ツールも必要になってくると考えます。

  • 出典:「GIGAスクール構想の実現 標準仕様書」(令和2年3月3日)1.学習者用コンピュータの標準仕様書(3)学習用ツールについてより。

文字表記の仕方やボタンの大きさなど、
子どもたちにとって分かりやすく、使いやすいツールを。

タブレット端末の有用性をさらに高めるために

子どもたちに課題を伝え、個々に取り組み、グループで意見交流を行い、発表して全体で考えを共有するといった授業は、ICTを活用するしないにかかわらず日常的に行われています。こうした授業を、ICTでサポートすることを目的として開発されたソフトウェアを活用することは、児童生徒に1人1台整備されたタブレット端末の有用性をさらに高めることにつながります。

また、子どもたちが操作に迷ったり、先生が丁寧に手順を説明しなくてはいけなかったりするツールでは、限られた授業時間の中で効果的に活用することが難しくなります。例えば、Sky株式会社の『SKYMENU』シリーズでは、ほかのツールで「グリッド線」などと表記されている部分を「マス目」と表記しています。当初は「方眼」で検討していましたが、小学校低学年でも分かるように先生方のご意見を参考にして「マス目」としました。

加えて、指でタッチ操作することを前提にボタンサイズを大きくしたり、初見でも操作に迷うことがないようにアイコンに文字表記を添えたりと、大人だけではなく子どもたちが使うツールであることを意識した画面設計を行っています。細かな点ではありますが、授業の本分に集中して取り組めるよう、子どもたちから見て分かりやすく、使いやすいツールが求められていることは確かです。

毎日使う機能こそ、自分たちで丁寧に作り込む

Sky株式会社が提供する『SKYMENU Cloud』の主な特長は、次の3点です。

  1. 安心して日常使いができる
  2. 学習活動に踏み込んだ機能
  3. 家庭と学校をつなぐ仕組み

特に1つ目に挙げた、すべての先生方と子どもたちが「安心して日常使いができる」という点は、本商品の企画段階からこだわった部分で、その代表がカメラの活用です。現在のタブレット端末はカメラが標準搭載されているものがほとんどで、OS標準のアプリケーションも付属されています。

しかし写真や動画の撮影は、それ自体が目的なのではなく、あくまで一つの手段でしかありません。私たちは、撮影した写真や動画を活用して、分かりやすく発表資料をまとめたり、気づきを共有したりする学習活動につながってこそ意味があると思っています。ですから、『SKYMENU Cloud』の[カメラ活用]機能は、[マイページ]からすぐに起動でき、撮影した写真や動画は[教材・作品]からいつでも取り出せるようにしています。さらに[発表ノート]からカメラを起動して撮影すれば、そのままノートに貼りつけられるようにもしています。

また、本年度から小学校の教科書に採用されたQRコードを読み取る機能も、フリーソフトウェアが多数公開されています。しかし、フリーソフトウェアには学習活動に関係のないバナー広告が表示されるものも少なくありません。ある自治体では、Webフィルタリングを施していたにもかかわらず、広告をタップすると不適切なWebサイトが表示されてしまい問題になったというお話も伺いました。ですから、『SKYMENU Cloud』は、QRコードの読み取りといった基本的な機能も既存のツールに頼ることなく自社開発しています。

また将来的には、誰が、いつ、どのデジタルコンテンツを、何回視聴したのかという履歴データを取得し、「学びの記録」として活用できないかといった発展的な機能拡張も検討しています。こうした毎日使う機能こそ、自分たちの手で丁寧に作り込むことで、タブレット端末を「安心して学習活動に生かせる道具」にしたい、これが『SKYMENU Cloud』全体を貫くコンセプトでもあります。

整備されたタブレット端末を
「安心して学習活動に生かせる道具」にしたい。

これまでの資産を、これまで以上に活用しやすく

もう一つ注力したのが[教材・作品]です。[教材・作品]には『SKYMENU Cloud』を使って作成したりカメラで撮影したファイルだけではなく、さまざまな形式のファイルがアップロードできます。そして、ファイルを選択して配付ボタンを押すだけで、学習者機に一斉配付できます。この機能の特長は、[教材・作品]に保存されているファイルだけではなく、タブレット端末本体内やオンラインストレージに保存されたファイルであっても、同様の手順で学習者機に配付できることです。

既存の教材ファイルを授業で使うために、あらかじめファイルを変換して、決められたクラウドサーバにアップロードしておくといった事前準備が必要な仕組みでは、「日常使い」といえる手軽さには及ばないのではないでしょうか。日常的にICTを活用していただくために、まずは今ある資産を活用しやすい仕組みにする。このことが重要だと考えています。

逆に、子どもたちに課題のファイルを提出させる仕組みも工夫しました。例えば、サーバに「提出用フォルダ」を用意して保存させるという方法だと、保存時に「ファイル名に自分の名前を追記する」といったことを徹底しておかないと、ほかの子どものファイルを誤って上書きしてしまうといったトラブルも起きかねません。

『SKYMENU Cloud』では、配付と同様に、子どもたちがファイルを選んでボタンを押せば、ファイルが提出できます。そして提出されたファイルは、提出物メニュー内に自動作成されるフォルダに、子どもたちごとに整理されて保存されます。さらに同じ子どもが同じファイルを複数回提出した場合でも、以前のファイルを残して別に保存されるつくりになっています。

こうした仕組みによって、配付や提出という日常的な操作を、手軽に安心して行っていただけるように工夫しました。当然、休校時などにオンライン授業を実施することになった場合でも、同じことが行えます。

先生が事前にグループを設定しておいたり、
IDを振り分けたりする必要はありません。

協働学習や伝える活動をサポートする機能

2つ目の特長は、「学習活動に踏み込んだ機能」を提供していることです。『SKYMENU Cloud』は、[発表ノート]や[シンプルプレゼン]、[ポジショニング]など、学習活動の中で活用できる機能を多数提供しています。これらの機能は、本誌でもたびたびご紹介していますので本稿では詳しくご説明しませんが、特長的な機能を一つご紹介させていただきます。

『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]には、[グループワーク]という複数の子どもたちが同時に編集できる機能があります。1人がノートに書き込むと、その内容が同じグループの学習者機にもすぐに反映されるので、グループで協働しながら一つのノートを作ることができます。

話し合う場面が生まれやすくなり、考えをリアルタイムに共有しながら活動に取り組めます。こうした活動の結果、「もともとは○○○○だと思っていたけど、友だちの意見を聞いて□□□□にした」といった変化を見せる子どもも少なくありません。

また、担当するページを決めて、作業を分担し、複数のページの発表資料を作成することもできます。さらに、個々に課題に取り組んでから[グループワーク]を使うと、学級全体で共有することも可能です。

こうした多様な使い方ができる[グループワーク]ですが、行う操作は子どもたちが「番号を選ぶ」という1つだけです。先生が事前にグループを設定しておいたり、子どもたちのIDを振り分けたりする必要はありません。

また、『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]は、従来の『SKYMENU Pro』や『SKYMENU Class』とは違いクラウド上で提供される機能ですので、インターネット接続環境があれば、校外でも同じように使うことができます。この仕組みを活用すれば、オンライン授業の中でも子どもたちが考えを共有し、自分とほかの子との共通点や相違点を理解する活動に取り組むこともできます。

クラウドサービスなので、
契約中は常に最新の機能がご利用いただけます。

新しい時代を生きる子どもたちのために

3つ目の特長は「家庭と学校をつなぐ仕組み」があることです。それが『SKYMENU Class』でも2020年に搭載された新機能[電子連絡板]です。この機能は、職員室などに設置されている連絡板に代わる校内情報の共有を目的にしたもので、先生方のタブレット端末やノートPCで閲覧できる連絡板です。目的に応じて複数の連絡板が作成できるので、学年や学級ごとに連絡板を作って教室の大型提示装置に表示し、子どもたちへのお知らせを掲示することにも使えます。

クラウドサービスである『SKYMENU Cloud』ではさらに、子どもたちが家庭に持ち帰った学習者機でも見ることができます。この[電子連絡板]に翌日の持ち物や宿題、保護者への連絡事項などを記載すれば、簡易の「学級だより」のような使い方もできます。

この[電子連絡板]は、従来のように学習活動をサポートするだけではない新たなカテゴリの機能です。『SKYMENU Cloud』はクラウドサービスですので、今後も随時機能を追加していく予定となっており、ご契約期間中は常に最新の機能をご利用いただけます。

Sky株式会社が、授業支援ソフトウェアとして『SKYMENU』シリーズを発売してから20年以上がたち、近年は学習活動ソフトウェアと位置づけて、さまざまな機能を開発してきました。さらに今後は、個々に点在している学びの成果を、一本の線となるように結びつけて振り返ることができるツールをめざしていきます。そして、子どもたちに新たな気づきを促しながら、先生方の評価や指導に生かしていただける本質的な気づきを支援する「リフレクションツール」を志向していきたいと考えています。

今、時代は大きな転換点を迎えています。新たな学習指導要領の下、新たな学びも始まりました。先入観にとらわれることなく、この先の未来を生きる子どもたちのために、求められるツールとは何かを常に考えながら、商品づくりに取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。

(2020年11月掲載)