本校では、異年齢活動に力を入れ、児童主体の活動を行っている。そのため、卒業前の6年生にとって、異年齢活動のリーダーを引き継ぐことは最大の関心事となっている。本単元では、5年生にリーダーとしての清掃活動の運営方法を伝える活動を行うことにした。リーダーとして運営側に回ると、見るべきポイントが変わると感じていた子どもたちは、下級生の状況に応じて指示を出し、細かい部分にも目を配って運営することの大切さを教えたいと考えた。そこで、今まで算数や理科の学習で活用してきた「手順や場合によって、行動が分かれることを分かりやすく伝えることができる」という特徴をもつ、条件分岐を活用したフローチャートで清掃活動の運営方法を可視化し、5年生に伝えることにした。
第1次 | 向井千秋さんの挑戦(道徳) |
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第2次 | 清掃運営方法を引き継いで |
第1時 | フローチャートで伝えよう |
第2時(本時) | 実際に試してみよう |
第3時 | どう伝えようかな |
第3次 | 1年生にありがとう |
第4次 | 引き継がれる伝統(道徳) |
本時は以下の2点を授業のねらいとした。
- 異年齢集団での清掃活動の問題点を把握し、他者と合意形成を図りながら、解決のためのフローチャートをつくることで、問題点の解決に向けた具体的な留意点を整理することができる。(思考・判断・表現)
- 清掃活動を行う際の行動を細分化し、それを進めるための条件を考え、どんな順番で振り分ければよいのか、その階層を判断しながら、他者でも活用できるフローチャートをつくることができる。(動きに分ける)
フローチャートは、手順や場合によって、
行動が分かれることを分かりやすく伝えることができる。
前時までの学習で、子どもたちは各グループでタブレット端末と学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』[プログラミング]機能のフローチャートを活用して、清掃活動の手順を可視化している。本時では、どんな順序で指示を出したらよいのか、どんな場合にどんな行動をとればよいのかという、清掃運営のポイントや見る視点を明確にしていった。
(1)フローチャートの問題点に気付く
ビジュアルやフィジカルプログラミングの場合、プログラムのエラーは目に見える形で表れる。しかしアンプラグドの場合、自分の中で完結してしまい、エラーに気付きにくい。そこで、授業の冒頭で[プログラミング]機能の[実行]機能を用いて、一つひとつ処理を進めて、フローチャートの正しさを確認していた班を全体に紹介した。実行途中で分岐の設定や順序の問題点を発見する班もあるなど、再度フローチャートの客観性を高めていく必要感を生み出し、本時の課題につなげることができた【写真1】。
(2)他班のフローチャートで模擬清掃
より客観性を高めるために、他班にも試してもらおうと、フローチャートを交換し合って、実際に清掃をする活動を行った。[グループワーク]機能を使うことで、一瞬にしてシートを交換することができた。そして、他班のフローチャートを[実行]機能で一つひとつ確かめながら、実際の清掃活動が上手に運営できるか見ていった。本番同様に、ほうきを使って清掃活動を行う中で、足りない手順や分岐の間違いなどを発見する姿が見られた【写真2】。
(3)アドバイスをフローチャートに記入
手順や場合分けを伝えるために、子どもが自ら
フローチャートを選択し、活用する姿が見られた。
清掃活動の運営方法をフローチャートで可視化してみると、予想以上の工程やポイントがあり、自分たちがこれを無意識で行ってきたことに非常に驚いていた。だからこそ、きちんと5年生に教えてあげることで、よりスムーズに下級生たちをリードすることができるのではないかと、フローチャートによる引き継ぎに自ら意味を見いだす子どもの姿も見られた。学習のまとめとして記入した文章では、条件分岐を用いたフローチャートの効果として、「手順が整理されて分かりやすい」「一つひとつ確かめながら行動することができる」と感じ取っている子どもが多く、日常生活の中でもこの論理的な考え方を生かしていきたいと思っているようであった。1年間プログラミング教育を受けてきた子どもたちが、手順や場合分けを伝えたいという目的に合うものとして、自らフローチャートを選択し、活用していく姿が見られたことが何よりの成果だった。
学習の流れ | 主な学習活動 | 指導のポイント (タブレット端末活用場面) |
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導入 | 1. 前時の復習を行い本時の課題をとらえる。
つくったフローチャートを使って、実際に掃除をして確かめよう。
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(1)[実行]機能を活用し、教師が作成した未完成のフローチャートを拡大提示装置で児童に提示した。完成だと思っているフローチャートでも、実際に一つひとつ進めてみると、繰り返しや分岐の設定に問題があることに気付かせ、本時の課題に迫る。 |
展開1 | 2. 他班とフローチャートを交換し、実際に試してみる。
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(2)[グループワーク]機能で2つのグループでフローチャートを交換し合う。ほうきや雑巾を実際に用意して、フローチャートどおりに試してみることで、客観性を高めていく。 |
展開2 | 3. 試した結果を他班にアドバイスする。
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(3)タイムラインを活用し、アドバイスを書き入れることで、どの部分でどのように修正が必要なのか、具体的なアドバイスができるようにしていく。 |
終末 | 4. 本時のまとめを行う。
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・日常生活の中でも、病院の診察や入試のスケジュールなど、順序や場合分けを明確にするためにフローチャートが活用されていることを伝え、物事を細分化したり、その順序や条件を考えたりすることの大切さにふれていく。 |
(2020年5月掲載)