授業でのICT活用

試食による作品鑑賞と発表による相互鑑賞

本時のねらい

陶芸でスープボール、木工でスプーンを制作して実際に試食することで、工芸の目標である『用と美』について考えさせたい。作品を使用した感想を、撮影した画像とともにタブレットで[発表ノート]にまとめて全体に向けて発表させることで、相互に鑑賞させる。作品制作による表現にとどまらず、相互鑑賞と発表を通して、表現の大切さを実感してほしい。

授業の実際

導入で授業の流れを説明し、試食で使用する前に作品をタブレットで撮影することで発表用に画像を撮っておくよう指示して作業に移った。作品を洗い、教員が用意したスープをよそうなど試食の準備をし、号令を合図に試食を開始した。試食に際して、作品の使い心地やデザインに注目するよう指示し、感じたことや考えたことを発表できるように記録をとること、また試食の様子を撮影してもよいことを伝えた。試食後は各自で片づけをしてから『SKYMENU Class』の[発表ノート]にまとめ、試食の感想や作品の見どころ、制作に関する反省などを盛り込んだ内容を、1人1分程度で前方の液晶TVに投影しながら発表を行った。最後に1年間の授業についての感想を用紙に記入して提出させた。

単元計画(全8時間)
第1次

導入・土練り・成形

第2次

削り

第3次

下絵付け・施釉

第4次

鑑賞(本時)

本時の展開

学習の流れ 主な学習活動 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)

導入

○本時の活動内容の理解、準備

展開

○タブレット端末で撮影した作品画像と、試食による作品鑑賞の感想や、制作時の工夫および反省をまとめて『SKYMENU Class』の[発表ノート]で全体に発表する。


○試食に使用する前の作品を撮影するほか、試食中の様子を撮影するなど、発表時の表現を工夫する。


○発表を聞いてもらうための表現を工夫する。

1タブレットで個人の作品を写真撮影し、発表用の画像を準備する。

2[発表ノート]に鑑賞した感想や制作の反省をまとめる。

まとめ

○1人1分程度で発表し、相互に鑑賞する。

3[発表ノート]の画面を液晶TVに映して発表する。

タブレット端末活用のポイント(効果と児童生徒の反応)

作品の写真を撮ろう!
カメラ

作品を[カメラ]で撮影

個人の作品『陶芸によるスープボール』『木製スープスプーン』を撮影し、制作する上で工夫した点や見どころ、試食してみた実際の使い心地などを『SKYMENU Class』の[発表ノート]にまとめるための画像を取り込む。スープボールとスプーンを組み合わせてみたり、単独で配置したりと構図を意識し見せる工夫が必要であるため、個人の記録にとどまらず表現方法を意識して撮影できる生徒もいた。

鑑賞した結果を言葉や画像で表現し、発信しよう!
発表ノート

[発表ノート]に工夫や反省点をまとめる

作品を実際に使って試食することで鑑賞した感想や、制作するにあたって心がけた工夫や見どころ反省点などを[発表ノート]にまとめた。画像を貼りつけたり、文字を記入して聞く人に伝わりやすいよう工夫することで、表現することの難しさや意義を意識してほしいと考えた。画像のトリミングやスタンプ機能の活用など技術的な支援をしながら机間を巡視した。また、教室前方の液晶TVに編集中の生徒機の画面を表示させることで、互いの進捗状況や技術的な気づきができるよう配慮した。

みんなに伝わるように発表しよう!
発表ノート

ノートを[提出]し、自席から発表

個人の[発表ノート]の画像を教室前方の液晶TV画面に投影し、それぞれの座席から発表を行った。個人が作品を使用した感想や撮影した画像を全体で共有することで、個人作業であった鑑賞が相互鑑賞になり、表現の工夫に対する反応も得られるため、従来の筆記報告による鑑賞活動と比べると相当の広がりがあると考えられる。

こんな場面でも使える!実践を振り返って

画像や言語での情報発信を通した表現を
意識することにより、自己満足を超えた鑑賞活動が可能に

従来の筆記による鑑賞報告では発表者は文字を見るため俯いて発表し、聞く側も俯いて耳を澄ますような場面が多く見られ、表現としての広がりはあまり期待できなかった。タブレット端末の導入からは画面を見るため全員が顔を上げて積極的に授業参加する様子が見られるようになった。何より紙媒体での発表は準備と掲示に時間がかかるが、タブレット端末を使用することにより、発表の時間自体が大幅に短縮され、試食と発表という過密スケジュールをこなすことが可能となった。作品制作での表現に加え、画像や言語での情報発信を通した表現を意識することにより、自己満足を超えた鑑賞活動につながるのではないだろうか。

(2018年8月掲載)