[気づきメモ][ポジショニング]で意見を可視化し、共有 対話を通じて物事を多面的に捉え、「誠実」の意味を考える
千葉県鎌ケ谷市立初富小学校の佐藤 将実 教諭は、ICTの活用によって児童同士の対話をより充実させ、児童が自分の考えをもち、深めることをめざして授業改善に取り組まれています。今回は、小学校6年の道徳「手品師」の授業を取材し、意見の可視化や、共有の手段として活用された『SKYMENU Cloud』の[気づきメモ]と[ポジショニング]の効果についてお話を伺いました。
佐藤 将実
千葉県鎌ケ谷市立初富小学校 教諭
「全員で共有できる」
ICTのメリットを生かし、学び合う授業へ
本校は児童488名、教員35名の中規模校です。「学び合い、鍛え合い、助け合い、励まし合い、元気なあいさつ」という「五つのあい」を大切に、日々学びを深めています。私は2025年度に本校へ赴任し、6年の担任とICT主任を担当。『SKYMENU Cloud』は、前任校の頃からずっと活用しています。
さまざまな実践に取り組むなかで、ICT活用の最大のメリットは「全員で共有できること」にあると感じています。以前行った算数の授業では、クラス全員が主体的に参加できるよう、[発表ノート]でヒントカードを作成し、配付しました。分からない児童にはカードを手掛かりにして解くよう指導し、解けた児童には解法を[発表ノート]で共有させることで、友達の考えも参考にできるようにしました。考えを参照できたからこそ答えられた児童の姿が見られ、ICTの良さをあらためて実感しました。
今回は、6年道徳「手品師」の学習において、『SKYMENU Cloud』の[気づきメモ]や[ポジショニング]による考えの共有を生かした授業をご紹介します。
教材:手品師
授業のねらい
- 1どのような状況にあっても、常に誠実に行動し、明るい生活をしようとする心情を育てる。(教材)
- 2多様な他者の経験や価値観を聞くことで、自分とは異なる視点や自分が気づかなかった側面に気づき、物事を多面的に捉えることができる。(めざす児童の姿)
| 時間 | ○学習活動 ◎主な発問 | 『SKYMENU Cloud』の活用 |
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導入 5分 |
◎発問1 これまでに「迷った」経験はありますか。また、どのように決断しましたか。
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[気づきメモ]
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展開 35分 |
◎発問2 自分が手品師だったら「大舞台に行く」か「男の子との約束を守る」どちらの選択をしますか。
◎中心発問 なぜ、手品師は男の子との約束を選んだのでしょうか。
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[ポジショニング] (二項対立)
[気づきメモ]
[ポジショニング]
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終末 5分 |
◎発問3 主人公の手品師はどんな人だと思いますか。
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児童の多様な「迷い」を[気づきメモ]で表出させ、共有
本教材は、舞台に立とうと努力していた手品師が、両親との交流が少なくさみしい思いをしている男の子との約束と、大舞台に立てるチャンスのどちらを選択するかで迷う話です。
導入では、「これまでに迷った経験と、それをどのように決断したのか」について児童に問いかけました。これは、迷いにはささいなものから深く悩むものまで、さまざまな種類があることに気づかせるためです。回答は[気づきメモ]に入力させました。子どもたちからは、「一つだけ好きなものを買えるとき、何を買うか」「どのゲームで遊ぶか」など、過去に抱いた悩みが次々に挙がりました。
[気づきメモ]を活用することで、限られた時間の中でできるだけ多くの「迷い」を児童に知ってもらうことができました。2、3人の発言だけで「いろいろな迷いがあるんだね」と結論づけることは避けたかった。紙のノートだと全員の考えを全体に共有するのは難しいですが、[気づきメモ]なら友達の考えがすぐに画面に反映され、簡単に閲覧できます。時間の都合上、一人ひとりを指名することはできませんし、高学年になると積極的な発言が難しくなることもあるため、意見を表出しやすいという点でも[気づきメモ]は効果的でした。
さらに、本時では「誠実」という言葉により焦点を当てさせたかったので、教員から「バスで席を譲るかどうか」という悩みを例示。「譲る」「譲らない」どちらにするかを尋ね、挙手で意見を募りました。ここで意識したのは、選んだ理由も必ず一緒に答えさせることです。どちらを選ぶにしろ、理由があることに気づかせたかった。「手品師」の学習につなげていくために、ここで「どちらが正しい」と断定したくなかったので、両方の立場の意見を聞くようにしました。
[ポジショニング]で自分の立場を明確化する
さまざまな悩みやその判断基準について関心が高まってきたところで、手品師の選択が示される手前の箇所まで教材文を読みました。この後の話し合いに備え、まずは自分の立場を明確化してもらいたかったので、「自分が手品師だったらどうするか」と問いました。
協働的な学びは、一人ひとりが自分の意見を持てていなければ成立しません。まず意見を持った上で、ほかの人と共有し合うことが大切です。そのため、回答には[ポジショニング]を使い、マーカとコメントを個人で入力させました。
ほとんどの児童が入力を終えたら、児童の端末でも[ポジショニング]の結果とコメントを見られるようにしました。ほかの人の立場を知ることで自分の立場がより明確になりますし、話し合いで声をかける相手も決めやすくなります。
今回、同じ「大劇場に行く」でも、「絶対行く」と考えた子と「どちらかといえば行く」寄りにマーカを置いた子がいました。例えば、何か同じものを見て同じように「すごい」と言ったとしても、その基準は人それぞれです。[ポジショニング]なら、そうした違いを視覚的に捉えられるので、私も子どもたちも、いろいろな人の気持ちを読み取る上で大変役立ちました。
友達の考えを参照した後は、いよいよ話し合いの時間です。私は[ポジショニング]の結果を確認しながら「約束を守る側の子もいるよ」などと声をかけ、児童同士を引き合わせました。これは、「それぞれの児童がどちら派か」がひと目で分かるからこそできたサポートです。また、このときの話し合いでは全体的に「自分の意見が正しい」と主張する児童が多かったように感じました。自分の立場を明確にさせたいと考えていたので、ねらいどおりに授業を展開できたと思います。
[気づきメモ]で見取り、参考にさせたい意見を大型提示装置に提示
話し合いの後、教材文を最後まで読み、手品師が決断した選択について知りました。ここで、「なぜ、手品師は男の子との約束を選んだのでしょうか」の中心発問を行い、[気づきメモ]で考えを書かせました。すると、「手品師は全然売れておらず、お客さんが一人もいなくても手品をやっていただろうから、一人のつらさをよく知っていた」「約束したのに裏切るのはよくないと思った」「男の子は親のいない不安があり、手品師は希望として見られている」など、さまざまな意見が集まりました。
子どもたちが記入している間、私は[気づきメモ]で見取り、「誠実」な判断に近い意見があれば、その画面を大型提示装置に提示していました。どちらを選択してもよいということは大前提としつつ、本教材のテーマである「誠実」について知り、約束を守り、思いやりを持つことの大切さを考えてほしいという意図があったためです。
また、ここでは友達のコメントに「いいね」をつける児童が多くいました。特に、「小さな約束すら守れない人間が大劇場に行く資格なんてないだろう」という意見には、12もの「いいね」がついていました。この回答には私も気づかされるものがありましたし、多くの児童が共感した意見なのだと分かりました。
「○○さんの意見を聞いて……」
対話を通じ、考えが変化
ここで再び「自分が手品師だったらどうするか」と問い、2回目の[ポジショニング]を行いました。「友達の意見を聞く」「手品師の判断を知る」「なぜ男の子との約束を選んだのか、手品師になりきって考える」という3つの活動を経て、児童の考えがどう変わるのかを見たかったからです。
このとき、意見が変わった場合もそうでない場合も、必ずコメント欄に理由を書かせました。また、「〇〇さんの意見を見て / 聞いて……」というふうに、友達の意見を踏まえて書くように指導。すると、同じ意見のままでも「○○さんの意見を聞き、『さらに』○○だと感じた」と表現している児童もいて、考えを深められている様子を感じ取れました。
2回目の[ポジショニング]では、1回目で中間層にいた子たちがはっきりとした意見に変わったという傾向が見られました。「○○さんの意見を聞いて、男の子に申し訳ないと思ったので男の子との約束を守ることにした」という児童は、ほかの人の考えを聞いた上で自分の考えががらっと変わったことから、「物事を多面的に捉える」という授業のねらいを達成できたと思います。逆に、はっきりとした意見から中間層に寄った児童もいました。これは、3つの活動を通じてどちらの選択肢の良さも感じられたからではないでしょうか。
マーカの位置から、中間層にプロットしていた多くの児童がより明確な立場に意見を変えたことが分かる
[ポジショニング]後は、再度話し合いの時間を取りました。1回目の話し合いでは仲の良い子の所へ行った児童もいましたが、[ポジショニング]に「〇〇さんの意見を見て / 聞いて……」と書いたことで、自分が影響を受けた子の元へ話をしに行く児童が多くいました。また、「絶対に約束を守る派」の子が、「絶対大劇場に行く派」の子の所へぱっと行き、より詳しい考えを聞く様子も見られました。
この間に、私は[ポジショニング]を見ながら指名計画を立てました。紙のノートの場合、子どもたちがノートを持って移動することが多く、すべての考えを拾いきることはできません。時間をかけずに指名計画が立てられるのは、[ポジショニング]ならではの良さだと思います。本時では、1回目と2回目で考えに大きく変容があった子と、マーカの位置が少し動いた子それぞれを指名しました。
自分の言葉で「誠実」を表現できた児童も
終末では、「主人公の手品師はどんな人だと思うか」について、隣同士で話をさせました。さまざまな意見が出ましたが、中でも印象的だったのは「他己中」という言葉です。子どもたちなりに考え、自己中の逆である「他己中」という、ねらいの「誠実」に近い言葉が出たのは、非常に良かったと思います。最後に、何かに迷ったときは誠実に行動することを思い出し、「本当に責任をもった判断かどうか」「相手に対して思いやりをもった判断なのか」を考えてみてほしいと伝え、授業を締めくくりました。
今回、『SKYMENU Cloud』を活用したからこそ、他者のさまざまな価値観や経験、考えに触れさせることができたと思います。教員にとっても、発表に苦手意識のある児童の意見をぱっとすみやかに拾えたり、こちらの想定を超えるような考えをすぐに見つけられたりするのは、授業を進める上で大変ありがたいです。
もちろん、ICTにこだわっているわけではありません。だからこそ本時では、友達と話し合う時間を意識して取りました。面と向かって話すなかで不意に出てくる意見や言葉が児童の考えを深めている様子が見られ、対話の大切さをあらためて強く感じました。
今回の「手品師」は二項対立であり、比較的身近に考えやすい話題でしたが、題材によっては児童が自分事として捉えるのが難しい場合もあります。しかし、ICTを活用して児童全員の意見を共有し、把握できれば、その中の文章や言葉を拾い上げ、授業を広げていけるかもしれません。今後はもっとさまざまな機能を活用し、児童が自分の考えをもち、対話を通じて考えを深められる授業づくりに取り組んでいきたいです。
(2025年12月取材 / 2026年6月掲載)