考えの表出・整理・参照に生かし、自ら考え、行動する力を育む
大阪市立長原小学校の木寺 健司 先生は、児童一人ひとりが自ら考える力を高め、一人でも多くの子どもを支援するために、[気づきメモ]による考えの表出や[発表ノート]での思考の整理、[ライブ公開提出箱]を使った他者参照などを取り入れた授業を、さまざまな教科で行われています。自ら考え、行動する力を育てる工夫とともに、『SKYMENU Cloud』を使った3つの実践について伺いました。
木寺 健司
大阪市立長原小学校 先生
ICTの効果的な活用で、みんなが参加し、考えられる授業に
本校は児童数116人、教職員約20人の小規模校です。2024年度から学校教育目標「大人も子どももいきいきしている学校」をめざし、市場校長のリーダーシップの下、複数担当制やチーム担当制など、学校裁量でさまざまな改革を行ってきました。中でも特徴的なのが、「40分授業午前5時間制」です。午後はすべて探究時間の「長原タイム」とし、個人探究やグループ探究など、幅広い活動に取り組んでいます。
私は3年の担当を務める傍ら、数年前から大阪市の「学校教育ICT推進リーダー」を務めています。2024年度に本校で新たな取り組みが進み始めた頃、「もっと効果的なICT活用を広めたい」と校長に伝え、実践を重ねました。すると徐々に職員室でそうした話をする機会が増え、それに伴い活用率も上昇しました。
私が大切にしているのは、児童みんなが参加し、考えを深められる授業です。挙手する児童だけが授業に参加し、それ以外の児童は見ているという状態は避けたい。たとえ手は挙げられなかったとしても、自分なりに積極的に考えられれば、「今日はこんなことができた」と自信を持てると思います。
だからこそ、低学年でも扱いやすい操作性や、考えを深める機能に優れた『SKYMENU Cloud』を長年活用しています。考えを表出しやすい[気づきメモ]、自分の考えを整理できる[発表ノート]、疑問や不安を抱いたときに友達の意見を参考にできる[ライブ公開提出箱]――これらがあるからこそ、苦手意識のある子も自分なりに考えられるようになり、自分で学びを進められる子はさらに考えを深められるようになると思います。今回は、それぞれの機能を活用した社会、算数、総合の3実践をご紹介します。
3年社会
考えの表出と整理をサポートする[気づきメモ]
社会「安全なくらしを守る」の第5時では、「消防士を『プロ』にしているものは何か考えよう」をめあてに学習しました。指導書などの流れでは、「消火隊・救助隊・救急隊」の3つの専門チームに関する資料を読み、個人でそれぞれの特徴や役割を紙のノートに書かせるのが一般的です。ただ、過去に自分の考えに自信が持てなかったり、間違えることに抵抗があったりして、なかなか書き出せないケースを多く見てきました。そのため本時では、消防士の仕事の「すごい」と思う点とその理由を[気づきメモ]に書き出させました。このとき、机をグループの形に配置するとともに、[気づきメモ]の[グループメモ]を使ってグループ化しておきます。
[気づきメモ]を使うと、どの単元でも子どもたちが今まで以上に意欲的に活動する様子が見られます。チャットのような画面のため、思ったことをぱっと入力しやすいのかもしれません。また、考えることに苦手意識のある児童は、友達のメモを見て考えを整理できます。逆に考えをたくさん持っている子はどんどん入力でき、待ち時間がなくなるのもメリットといえます。
子どもたちが入力している間、私は[気づきメモ]を活用して見取っていました。書けていない様子の児童には「じゃあ、消火隊の中だったらどう?」などと声かけ。自分で進められている児童には「すごいね」と声をかけるとともに、「友達の意見も見てみたら?」「もっと詳しく書けるかもしれないよ」と考えを深めるためのサポートも行いました。[気づきメモ]を使うことで子どもの入力する内容を手元で確認できるため、限られた時間内でよりしっかりと、多くの子どもをフォローできるようになったと感じます。
[グループワーク]で情報を整理・分類
協働で学ぶ経験を積む
個人で消防士の仕事の「すごい」と思う点を考えさせた後は、それらが「消火隊・救助隊・救急隊」のどれに当たるのか、グループで分類させました。ここで活用したのが、[グループワーク]です。他者の考えを意欲的に取り入れ、協働で学ぶ力を育てるために、各教科の中でも積極的にグループ活動を行うようにしています。
[気づきメモ]から写したいメモを選択し、[発表ノート]に付箋として貼りつけ。[グループワーク]で[発表ノート]を共有し、共同編集できるようにしました。このとき、画面を一緒に見ながら試行錯誤する姿や操作方法を教え合う姿など、協働的に整理・分類する様子が見られました。その結果、3つの専門チームごとに色分けした見やすいノートに仕上がり、その後の発表も活発になりました。
3年算数
友達の意見を参照できる[ライブ公開提出箱]が安心感に
算数「数の表し方やしくみを調べよう」の第1時では、1より小さい数の必要性を学習するために、めあてを「ダンボールカーの『ちょっとのさ』を、だれにでも伝わる『数』で表す方法を見つけよう」としました。同じ「3秒」で走る3台の段ボールカーの動画を閲覧させた後、「3秒よりちょっと速い」を表す方法を個々で考えさせました。
ここで苦手意識のある児童を支援するために活用したのが、[ライブ公開提出箱]です。[発表ノート]に考えを書き出す際には、あらかじめ[ライブ公開提出箱]で他者参照できるようにしておきます。本時の課題は少し難しかったかもしれませんが、友達の意見を参照しながら、考えを深める姿が見られました。
自分の頭で考えるのはもちろん大切ですが、考えるきっかけがつかめない子もいると思います。その根底にあるのは「やっても分からない」という気持ちなのではないでしょうか。その場合、無理に考えさせるのではなく、子どもがそれぞれのタイミングで友達の意見を参照できる環境をつくってサポートすることが大切だと感じます。「あの子と同じだから、私の意見も大丈夫」――この安心感が、考えを表出する第一歩になると思います。
3年総合的な学習の時間
子どもたちで考え、実行する「長原タイム」
協働で学ぶ力をさらに伸ばすために、総合「長原タイム」で「13人でもっと仲良し! クラスきずなプロジェクト」を実践しました。本時ではまず、「長原タイム」で行ったことをそれぞれ[気づきメモ]に書き出させ、校内で育てた野菜を地域のスーパーや商店街で販売したり、地域の方と交流したりした経験を振り返りました。
ここからが、実際に行う「クラスプロジェクト」を考える時間です。最初に、個人で[発表ノート]に自分の考えを書かせました。これは、アイデアの拡散を図るためです。1つアイデアを書けた様子の児童にも、「ほかにはない?」と思考を膨らませるための声かけをしました。なお、このときも[ライブ公開提出箱]で他者参照できるようにしています。
振り返りを[気づきメモ]で蓄積 活動の見通しを持たせる
本時の振り返りには、[気づきメモ]を活用。同じプロジェクトを選んだ子どもをグループ化し、本時で決めたことや頑張りたいことをメモさせました。[気づきメモ]を使うのは、探究活動全体への見通しを持たせ、次時への意欲を高めるためです。さかのぼるだけで前時までの内容や考えを思い出せるので、単元全体の学びを振り返りやすくなります。
また、各プロジェクトで必要なものを書き残す、Webサイトの一部を切り取ってメモしておくといった議事録的な活用もできます。ICTを活用することで、探究活動への意欲をさらに高めてほしいと思います。
情報モラルの指導やプレゼンテーション能力の育成が課題に
今回ご紹介した3実践では、『SKYMENU Cloud』のさまざまな機能を活用しましたが、子どもたちは大変スムーズに使えていました。タブレット端末への関心の高さは日頃からひしひしと感じます。一方で、課題だと感じるのは情報モラルや情報活用能力の育成です。例えばキーボード入力では、そのスピードにかなりの差が出てきています。ただ、『SKYMENU Cloud』は手書き文字認識による入力ができるため、キーボード入力に時間がかかる子どもたちをサポートできるという利点があります。
もう一つが、プレゼンテーション能力です。プレゼンテーションの資料作りではよく文字を全部打ち込んだり、写真をたくさん入れてしまったりしがちです。そのため、「長原タイム」の最後に行う発表会では、[シンプルプレゼン]を使う予定にしています。スライド数や文字数、写真枚数制限のある[シンプルプレゼン]で中学年のうちからプレゼンテーションの基礎を押さえることで、今後増えていくであろう発表の機会に対応できるスキルを身につけさせたいです。
子どもの主体性を引き出し、「学びの楽しさ」を伝えたい
本時の「長原タイム」では、子どもたちから自発的にどんどん意見が出てきたのが印象的でした。また、「公園に行って遊ぶ」プロジェクトを選んだ子どもが「大阪市でサッカーができる広い公園」を自発的にWebサイトで検索する様子も見受けられました。こうした姿は、「自分で考えて、行動する子ども」を育てることを意識し、主体性を引きだそうとしてきた本校の取り組みの成果ではないでしょうか。
実は私は幼い頃、勉強がすごく苦手でした。あの頃、『SKYMENU Cloud』のようなツールがあれば、もっと学ぶことや考えることを好きになれていたかもしれません。だからこそ今、目の前の子どもたちにその思いを還元しているつもりです。勉強に苦手意識のある子もどんどん参加できる授業づくりをめざし、学びは楽しいものだと教えたい。ICTを効果的に活用し、これからもより多くの子どもたちを支援していきたいと思います。
(2025年11月取材 / 2026年3月掲載)