自由進度学習で登場人物の心情を読み深める
『SKYMENU Cloud』で見取りの量と質を高め、支援を充実 単元:ごんぎつね東京都国分寺市立第四小学校では、2025年度からデジタル学習基盤を活用した自由進度学習に全校で取り組まれています。同校の安岡 理佳子 主任教諭は、子どもたち全員が意欲を持ち、物語文を読み深める授業をめざされています。友達との交流を通じ、登場人物の心情の変化を捉える「ごんぎつね」の実践について伺うとともに、見取りと支援の充実を意図した『SKYMENU Cloud』の活用についてお聞きしました。
安岡 理佳子
東京都国分寺市立第四小学校 主任教諭
「自ら考え、学ぶ力」を育む方法の一つとして、自由進度学習に取り組む
本校は特別支援学級を含めた計39学級、916名の児童が学ぶ大規模校です。私は現在、4年の学級担任と生活指導主任を務めています。本校では2025年度から「自ら考え、学ぶ力」を育むための方法の一つとして、学校全体で自由進度学習に取り組んでいます。
教師になって以来、児童が全員参加できる授業をめざしてさまざまな工夫をしてきましたが、児童一人ひとりに合わせた細やかな指導はできていなかったように思います。6年前に本校に赴任し、GIGAスクール構想によってICT環境が充実したのを機に、個別最適な学びを充実させるためにICTを活用した単位時間内での自由進度学習を取り入れるようになりました。昨年度の3学期からは自由進度の範囲を単元全体に広げ、今ではさまざまな教科で実践しています。また、以前はMicrosoft Teamsなどを使っていましたが、最近は『SKYMENU Cloud』を活用しています。
今回は4年国語「ごんぎつね」で自由進度学習を実践しました。『SKYMENU Cloud』の[ライブ公開提出箱]や[ポジショニング]を活用し、子どもたちが自ら考え、友達と意見を共有しながら学びを深めていく授業をご紹介します。
単元冒頭に学習の進め方や評価規準を[発表ノート]で配付し、共有
この教材は新美 南吉さんの代表的な童話で、登場人物の気持ちの揺れ動きが特徴です。単元のねらいを「登場人物の心情の変化や葛藤を読み取り、子どもたちが普段経験している日常の気持ちと結びつける」とし、全8時間で4つの課題に取り組ませました。
自由進度学習に限らず、単元の最初にはどの教科でも必ず課題の進め方や評価規準をしっかりと説明するようにしています。今回はのように[発表ノート]で「学習の進め方」を作成し、共有しました。
また、[ライブ公開提出箱]を使う際のルールとして、「自分の考えなしに、友達の意見を写さないこと」を約束。基本的にオープンにしており、「ヒントにしたいから」「自分の意見だけだと不安だから」など、理由や目的があるならいつでも使ってよいと伝えました。
[ライブ公開提出箱]が安心材料になり、自分の意見を表現できる
第3時では全員での音読後、課題②と③の続きに取り組みました。最初はのように、教科書を読みながら個人で考えていました。必要に応じて[ライブ公開提出箱]を参考にする様子も見られ、中には「僕と(意見が)似ている」とうれしそうにつぶやいている児童も。友達の意見を参照でき、途中で簡単に修正できる[ライブ公開提出箱]が、慎重に考えたい子や考えを表出することに対して苦手意識がある子たちにとっての「安心材料」になっていると強く感じます。
全体の傾向を素早く把握し、授業時間内の見取りと指導を充実
Microsoft Teamsで自由進度学習を行っていた頃は、課題の進捗をMicrosoft Excelにチェックし、後は名簿を手にあちこち回って机間指導をしていました。その際、苦手意識のある児童を優先してしまい、自分で学びを進められる児童への対応までを限られた時間内で十分に行うのは難しかったです。しかし、[ライブ公開提出箱]では全員のノートを一つの画面で確認できるので、サポートが必要な子をすぐに見つけて声をかけられます。また、自分で進められている児童に対しても、「なぜそう思うの?」と、さらに考えを深めるための問いかけができるようになりました。
また、今回の課題②と③ではごんと兵十の「気持ち」を書かなければならないのに、「せりふ」そのものを書いている子がとても多くいました。そのため一度、全員の手を止めさせて注意を促しました。全体の傾向を素早く把握し、授業の中で最大限見取りと指導を行えるのは、[ライブ公開提出箱]ならではの利点だと思います。
ペアやグループワークは自由学びのために自分から動く児童
個人で考えて20分ほどたったころ、多くの子がペアやグループ活動を始めました。このとき、私が声をかけなくても子どもたちが自然に動きます。自分が学ぶゴールにたどり着くために必要ならどんどん動きなさいと、常に伝えているからです。
ただし、グループ活動の際は集まった子どもたちの[ライブ公開提出箱]を見て、「このメンバーで集まった意図があるか」を確認するようにしています。今回も課題②と③に取り組む子が混ざっているなど、疑問を抱いたときは子どもに尋ねました。ここで、子どもなりに考えた理由が返ってきたら、そのまま活動を見守ります。
授業をする上で一番大切にしているのは、「何のために学ぶか」です。例えば、子どもから「グループワークしてもいいですか?」と問われた際には、なぜその学習方法を選ぶのか、理由を尋ねます。自分で考え、自分をコントロールしていく力をつけてほしいからこそ、「なぜそう思うのか」をいつもセットにして問うようにしています。
曖昧な気持ちや理解を可視化できる、[ポジショニング]の振り返り
授業の最後には、どこまで考えを深められているかを確認するために[ポジショニング]を使い、「気持ちを理解できない」「理解できた」「どちらとも言えない」の3択でマーカを配置させました。コメント欄には必ず、その位置を選んだ理由を書かせるのがポイントです。その後、全員の考えを前に投影。考えを深められているかどうか気になっていた子や、思いもよらない場所にマーカを置いた子に声をかけるようにしました。
課題②と③に取り組んだ5時間は、毎時間[ポジショニング]を使った振り返りを実施。同様の活動を黒板に名札を貼らせる方法で行っていたときは、多数派の方を選んでしまったり、意見を変える友達につられて変えてしまったりする子も少なくなかったのですが、選択時には友達のマーカが見られない[ポジショニング]なら、他者の影響は受けません。また、曖昧な気持ちも可視化できるからこそ、教師が児童のリアルな考えの変化を理解できるとともに、子どもが今の自分の状態を自己認識することにもつながると感じます。
交流・共有の時間を意識的に設け、正確な読み取りと再考を促す
第6時に取り組んだ課題④では、ごんと兵十それぞれの人物像を考えさせました。まずは個人の意見を[発表ノート]にまとめ、その後グループで共有しました。音楽に合わせて歩き、止まったときに近くにいた子たちで3分間議論。終わったら次は別のグループで議論、という流れを繰り返すことで、楽しみながら意見を交流・共有できるよう工夫しました。
グループ活動の後は、ほかの子の意見を聞いて抱いた新たな考えなどを自分の[発表ノート]につけ足させます。今回のように国語の物語文を自由進度学習で行う際は、意識的に交流・共有する時間を入れるようにしています。読み取りを間違ったまま進むと考えが深まらず、読みがストップしてしまうからです。交流や共有を通じて再考し、その時間が自分にもたらす効果を、子どもたちにも知ってほしいと思って行っています。
「初めて国語の物語文を理解できた!」
全8時間の授業が終わった後、苦手意識のある児童の一人から「初めて国語の物語文を理解できた!」という感想が出てきました。詳しく尋ねると、「今までは理解できず自分の考えが浮かばなかったけれど、今回は自分の考えをもった上で友達と話し合いができた――」、このように受け止めてくれていて、とてもうれしかったです。
私自身、自由進度学習に取り組み始めてから、より単元構成を意識した授業づくりを重視するようになりました。その分準備は大変ですが、授業を始めたら子どもの見取りだけに集中でき、ICTを活用するからこそ時間内に支援できる子どもが増えます。以前同じ単元を行ったときと比べて分かったつもりになった子が減り、全員がしっかりと学習に臨めているという実感があります。
特別活動や学級経営で培った力が自由進度学習を支える
以前、特別活動主任を務めたのを機に特別活動を研究し続けていますが、特別活動で育成される力は、自由進度学習においても大変重要だと再認識しました。「人間関係形成」と「自己実現」が根底になければ、いざ自由進度学習をしても「誰に声をかけたら良いか分からない」「目標を立てても動けず、ゴールを決められない」という状態に陥ってしまう。だからこそ、特別活動でその力を育む必要があると感じます。
そのためにも、学級開きのときには必ず「your color」という話をします。見た目も考え方もみんな違うのだから、いろいろな色を受け入れよう――そう伝えています。これを理解できていれば、学習の進みが遅い子がいたとしても、一緒にゴールへ向かえるように手を伸ばしてあげられるかもしれない。学級経営でつくる素地の大切さにあらためて気づかされました。
子どもと一緒に学びを振り返り、共に成長する教師に
この半年間、さまざまな教科で自由進度学習に挑戦するなかで、もちろんうまくいかないこともありました。テストの点数が予想より低かったり、その単元で重要な言葉を押さえられていなかったり――。しかし、授業が終わるごとに子どもたちと学習を振り返り、「なるほど、じゃあ次はこうするね」と伝え、改善する流れを繰り返しています。自由進度学習の間、教師は何をしているか、あなたたちのどこを見ているか、といった部分まであからさまにすることで、一緒に授業をつくってきたつもりです。
結果として、「自由進度学習の方が力になる」と感じている児童が多くいる。この事実を大切にし、子どもと一緒にチャレンジしながら、成長し続けていきたいと思います。
(2025年10月取材 / 2026年3月掲載)