情報を取捨選択し、消防署の工夫に迫る
[画面一覧]の即時性を生かし、児童一人ひとりの状況を把握、支援千葉県我孫子市は2025年9月にGIGAスクール構想第2期の整備として、Chromebookを導入されました。同市の湖北台東小学校 金子 拓郎 教諭は新たな学習環境の下、教科指導の充実と情報活用能力の育成を両立させる授業づくりに注力されています。消防署見学で撮影した写真を使った新聞制作を通じて情報を「選択」させる社会の授業を取材させていただくとともに、中学年における情報活用能力育成や、『SKYMENU Cloud Devicecontrol Edition』の活用のポイントについてお聞きしました。
金子 拓郎
千葉県我孫子市立湖北台東小学校 教諭
Windows端末からChromebookへ新たな環境での授業を模索
本校は児童205名、教員21名の小規模校です。挑戦を大切にする土壌があるため、ICT機器についても積極的に使う教員が多く、活用が進んでいました。そんななか2025年9月、Windows端末からChromebookに入れ替わり、併せて『SKYMENU Cloud Devicecontrol Edition』(以下、『SKYMENU Cloud』)も導入されたことで、一気に環境が新しくなりました。
私は3年の担任を務める傍ら、ICT活用分野で県の「授業づくりコーディネーター」の認定を受け、各地で研修をしています。児童の学びを深めるために長年ICTを活用してきました。Chromebookについては詳しい教員に教えてもらいながら日々勉強を重ねています。
子どもたちが大人になったとき、スマートフォンやPCといったICT機器を持たない未来はもう考えられません。だからこそ、ICTを正しく使う方法を中学年のうちからなるべく早めに教えたいと思い、教科の学びを充実させながら情報活用能力を高めさせることを意識して指導しています。
本時のねらい
消防署見学で得た情報を基に、必要な写真を選び、読み取り、火事が起きたときの消防士の動きや日頃の備えを理解する
| 教員の発問・学習活動 | 指導上の留意点 | |
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| 展開 |
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| まとめ |
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配付とともに教材ファイルが自動で開き、授業がスムーズに始まる
単元の導入では火災の写真を示し、暮らしを守る仕事に関心を持たせました。その後、火事に備える消防士の生活について想像させ、興味が湧いたタイミングで地元の消防署を訪問。本時では、見学で得た知識をアウトプットするためにタブレット端末を使った新聞づくりを行いました。
最初に、新聞のフォーマットと、消防署で撮影した写真約50枚を入れたGoogle スライドを児童に共有。ここで早速、『SKYMENU Cloud』の[配付]が役立ちました。ファイルを一斉に送れる上、同時に自動でそのページが開くので、「送ったから開いて」という指示すらいりません。3年生の場合、自分でデータを探したり、教員から送られてきたものを見つけて開いたりする作業がまだスムーズにできないこともあるため、大変便利です。Windows端末でファイルを配付 / 回収するような感覚でGoogle スライドのファイルを扱えるので、本校のように環境が変わった場合には大変助かる機能ではないでしょうか。
配付後は、[画面一覧]ですべての児童にスライドが行き渡っているかを確認しました。子どもたちの画面をリアルタイムで一覧できるため、機器のトラブルがあればすぐに気づいて対処できます。この[画面一覧]は先述のとおり、配付後にファイルが自動で開かれるからこそ生きる機能です。仮に業務用のPC監視ソフトウェアなどを使い、児童の画面が見られる環境があったとしても、教材の配付後に「それぞれで立ち上げて」と指示をした場合、児童によって多少の個人差は出るものなので、大きなトラブルに気づきにくいと思います。[配付]と[画面一覧]のおかげで、授業の導入時に機器のトラブルなどが起こったとしても迅速に対応できるので、スムーズに授業を進められています。
[画面一覧]で活動の様子を素早く把握し、児童一人ひとりを支援
今回、スライド内の約50枚の写真から使いたいものを選び、同じスライド内のフォーマットにコピー&ペーストさせる方法を採らせました。思考の整理をサポートするために、写真は消防車、救急車、防火服などとテーマ別に配置。また、写真を選び始める前に、編集に必要なコピー、ペースト、戻るなどの操作をショートカットキーで行う方法を指導し、迷わず取り組めるように配慮しました。
子どもたちが写真を選んでいる間、私は活動の様子を[画面一覧]や机間指導で見取っていました。比較的進みが早い子を把握した上で、思ったよりも時間がかかっている子に「○○さんと○○さんのだったら、どちらが自分のイメージに近い?」と声かけしてサポート。これは、友達の名前を出すことで身近な一つの方法として受け止められるようになり、作業のハードルが下がって制作を進めやすくなるからです。[画面一覧]で名前とその子の進み具合を確認できるからこその支援です。
本時では、悩んでいる子はいたものの作業の手が止まる子は少なかったので、私はタブレット端末の使い方やキーボードの操作などのサポートにとどめ、前に出すぎないようにしました。これも、『SKYMENU Cloud』によって一覧性が高まったからこそ判断できたことです。もし授業のねらいからそれている児童がいれば、見つけて声をかけることもできます。教員だけでなく、ほかの友達にも自分の画面が見えている――こうした環境は、児童が学習に集中する上で役立ちます。
全員が目標をクリアするための教え合い
児童の意欲も高まる
約半数の児童が写真選びを終えたら、「周りのサポートへ行って」と全体に声かけ。半分の児童が教える側に回れば、マンツーマンコーチになれます。本時の場合、写真選びまでは必ず全員クリアさせたかったので、終わった子はほかの子の助けに行くように伝えました。
こうした教え合いは、ほかの授業でも取り入れています。「自力でやりたい」と思う児童は多いので、席を立ってサポートに行く子が出始めると、「早く教える側になろう」と、より頑張るようになります。また、普段の問題を解く場面などでは教わる機会の多い子が、ICT活用の場面では逆に教える側に回るケースもあり、児童の自信につながっていると感じます。
デジタルだからこそ広がる選択肢
情報デザインの力を伸ばす
ある程度制作が進んだころ、[画面比較]を使って4人の児童の画面を大型提示装置に映し出しました。写真をトリミングしたり重ねたりといった工夫を施している事例を紹介したかったからです。ほかにも、はしご車の高さを強調するために細長く切り取るなど、情報デザインを考えた上での工夫も見られました。またこのときは、作業で悩んでいる場合のみ大型提示装置を見るように指導しています。
手書きによる新聞制作の場合、イラストや文字を書くのが苦手な子は進めづらく、また児童の表現力の範囲を超えられません。しかし、デジタルの場合は写真を使ったり未習の文字でも入力できたりと、選択肢が一気に広がります。こうしたことができると知って大人になるのと、知らずに大人になるのとでは全然違う。だからこそ、教科の学習の中でできる限りこうした情報活用能力を伸ばしたいと思っています。
[ロック]や[画面一覧]があるだけで
学習に緊張感が生まれる
授業中、一度だけ[画面提示]で教員用端末の画面を学習者用端末に転送し、全員の手を止めて共有した場面がありました。それは、ノートに縦で文章を書き、写真を撮ってスライドに挿入していた児童の画面です。新聞だから縦書きにしたいけれど、スライド上では縦書きができないことに気づき、自分なりに工夫していました。まさにICTならではのアイデアだと感じ、全員の作業の手を止めて共有する判断をしました。このとき、教員が用意しておいたことよりも「たった今」起きたことの方が、子どもたちに響くということをあらためて感じました。
こうした成果物を作る際は特に、児童に自由な表現をさせたいため、教員が型を作りすぎることはしません。そんなとき、学習の目的からそれてしまっていたら分かる[画面一覧]や、教員の話に集中させたいときに端末の利用を一時的に停止できる[ロック]が役立ちます。[ロック]は「ここぞ」というときにしか使いませんが、かけなくても、ロックをかけられる状況があるだけで学習に緊張感が生まれるので重宝しています。
スムーズな配付・回収が、中学年からのICT活用の助けになる
後日、新聞が完成したタイミングでGoogleスライドを回収しました。このとき、先ほど説明したのように、自動で名前がついて保存されるのが大変便利です。以前、図工で作品を撮影させた際にも役立ちました。記名を忘れた児童がいても、教員側は問題なく把握できます。ファイルを一斉に配付し、児童の端末で自動的にページが開かれ、その後回収までスムーズにできる――。シンプルな機能ですが、たったこれだけでやりたいことができるようになるという先生はたくさんいるのではないでしょうか。今度の実践、国語「おすすめの図書カードを作ろう」でも、本時のようにフォーマットを配付してカードを作成させてから、回収する予定です。
また、使わせたいWebサイトをボタン一つで送れて、起動までしてくれる[Webページを送る(起動指示)]も便利です。学年が上がるにつれてICT活用と親和性が高くなる単元が増えてくると思うので、『SKYMENU Cloud』の機能をうまく活用し、中学年のうちからいろいろな経験をさせたいです。
「ICTならでは」を意識し、教科の力の充実と情報活用能力の育成を図る
本時では、数ある写真の中から紹介したい内容に合うものを取捨選択させ、妥当性のある文章が書けているかどうかを見ることで、児童にどんな知識が身についたのかを判断しました。何かを選択する際には、必ず理由が生まれます。そして何か成果物を作ったときには、必ず誰かに伝えたくなるものです。だからこそ、児童にその写真を選んだ理由を尋ね、答えてもらうという一連のコミュニケーションを取ることで、児童が得た知識をより明確化するようにしました。
そして今回、多くの子どもたちが写真の配置や大きさなどを工夫しており、手書きでは引き出せない情報デザインの力も見ることができたように思います。一方、こうした情報活用能力については「どこまでもこだわれてしまう」点が課題だと感じます。身につけさせたい教科の学びがある中で、情報活用能力の育成にばかり時間をかけすぎるのは本質的ではありません。ICTはあくまで、教科の学びを達成するための一つの手段です。今後もICTならではの特性をしっかりと意識した上でさまざまな体験をさせ、児童の選択肢を増やせるような授業づくりに取り組んでいきたいと思います。
(2025年12月取材 / 2026年3月掲載)