根拠を持って「伝える」手段を選択できる1年生に
『SKYMENU Cloud』が、児童の“やりたい”を支えるツールに茨城県ばら野学園 那珂市立菅谷西小学校の飯島 葵 教諭は、1年生がICTを含めたさまざまな「伝え方」を身につけ、自らその手段を判断し、選択できる姿をめざした指導に取り組まれています。児童が記録したり、伝えたりする手段を考えながら取り組んだ授業を取材させていただくとともに、1年間の指導の工夫や『SKYMENU Cloud』の活用についてお聞きしました。
飯島 葵
茨城県ばら野学園 那珂市立菅谷西小学校 教諭
端末や『SKYMENU Cloud』で、子どもの学びの選択肢を増やしたい
本校は、那珂市のほぼ中心部に位置する児童348名、教員21名の中規模校です。自然や歴史といった豊富な地域資源に囲まれ、素直でエネルギッシュな子どもたちとともに日々学びを深めています。私は現在、1年の担任を務めており、前任校から数えると、1年の担任は4年連続となります。
GIGAスクール構想が始まった当初から『SKYMENU Cloud』を使うなど、端末に触れる機会を意識的に設けてきました。それは、児童の学びの選択肢を増やしたいからです。教員の一番の仕事は、児童が意欲を持って学ぶためのきっかけづくりだと思っています。「なぜこの授業を受け、学ばなければいけないのか」を理解し、主体的に取り組んでもらうために、児童の中にある「やりたい」という気持ちを大切にした授業づくりをしています。
「1年生にできないことなんてない」1年生ができる「伝え方」を整理
本校は2023年度まで「西小プレゼン名人(西プレ)」と題し、「話す」「聞く」の力を伸ばす研究に取り組み、現在もこの考えを大切にしています。例えば、低学年であれば「話す」は「相手に聞こえるようにゆっくりと」「伝わるように」、「聞く」は「相手の方へ体を向けて」「うなずきながら最後まで」などの具体的な行動を示しています。
私はこの内容に共感し、赴任した2024年度から「西プレ」を意識した指導を始めました。「話す」「聞く」の指導への理解をより深めるため、「伝え方」について再考。「写真を見せながら伝える」「クイズを出す」「[発表ノート]」といったさまざまな「伝え方」のメリット・デメリットを整理し、1年生にもできそうな発表方法としてまとめました。
その過程で、「1年生にできないことなんてない」とあらためて感じました。ICTはあくまでも、自分の伝えたいことを伝えられるようになる便利な一つの道具に過ぎません。子どもたちにもこのような感覚でICTを学習に使えるようになってほしい。低学年へのICT活用の指導は難しさがありますが、むしろ早いうちから経験することが今後の土台づくりに大切だと強く感じ、1年生の1学期から次のような端末活用を進めています。
1学期の指導
教師が端末を使う姿と意図を示す
4月は一つひとつの行為の意味を説明しながら、教師が端末を使う姿を見せ、ICTでできることを学ばせる期間です。「大事なことだから、写真に撮っておこう」と声に出して板書を撮影したり、「教科書の隅にQRコードがあるぞ」と言って読み込んだりします。私の行動を通じ、端末を学習で使う方法や利便性を子どもたちに分かるように示します。
「タブレットを持って行きたい」児童の「やりたい」思いを育む
5月中旬、ICT支援員の協力の下で「タブレット開き」を行います。初めに、遊びではなく学習に使う端末であること、約束を守って使えば簡単には壊れないことなどを伝えます。端末を怖いものだと思ってほしくないので、ルールは最低限です。その後、端末で写真を撮り、確認する体験をします。本年度は自分の顔や自由帳を撮影しました。
生活「がっこうとなかよくなろう」では、端末を持って学校探検へ行き、見つけたものを端末のカメラで撮ります。授業の導入で「何か持って行った方がいいものあるかな?」と問いかけ、子どもたちから「タブレットを持って行きたい」という言葉を引き出すようにしました。端末は使いたいと思ったらいつでも使える道具だと意識させるためです。このように、児童の「やりたい」という思いを育むことを心掛けています。
自由帳代わりに[発表ノート]を使う
『SKYMENU Cloud』を初めて使うのは6月です。ログイン用のパスワードを配付し、その重要性をICT支援員から伝えてもらいます。その後、[発表ノート]を自由帳にして遊ばせます。ペンや消しゴム機能で落書きし、まずは何ができるツールなのかを知る。「楽しい」「使ってみたい」と思ってもらうための時間です。
また、国語「つぼみ」の発展的な学習として、教科書に出てくる花以外の花のつぼみを調べる際、調べたい花の名前を[発表ノート]に書いて提出させました。
[発表ノート]に写真を挿入し、回収、返却、手書き文字認識
7月には、[発表ノート]からカメラを立ち上げる方法や手書き文字認識による入力についても教えます。
この頃になると、算数の足し算の問題を[発表ノート]に貼りつけるかたちで配付し、回収、返却という流れを日常的に行います。1週間に3~4回は行うので、ほとんどの児童がすぐに[発表ノート]を使えるようになります。また、端末の操作が分からなくても友達同士で教え合うので、それほど苦労なく進められました。
2学期の指導
2学期は1学期で得たスキルを活用し、子どもたち自身が「伝え方」を選んで発表する機会を多く設けています。
「伝え方」を選ぶ経験を始める
生活「むしとなかよくなろう」では、虫を捕まえ、見つけた秘密を友達や家族に伝える授業を行いました。本やWebサイトで調べた内容を紙にまとめたり、自分で撮影した虫の写真を[発表ノート]に貼りつけたり、絵を描いて示したりと、思い思いの「伝え方」で発表しました。
今回の実践、生活「あきをみつけよう」では、校庭に「秋」を探しに行き、それぞれが思う方法で記録し、見つけた秋を友達と伝え合いました。子どもたちの主体性を引き出すために、導入は「今って秋? 夏?」といった問いからスタート。子どもたちのさまざまなつぶやきから、「じゃあ、外に確かめに行こう」と誘い、校庭に出る流れです。
こうした導入を経て、子どもたちは端末や絵を描くための紙、物を入れられる探検バッグなど、各自が必要だと思うものを選び、校庭へ持って行きました。活動中、見つけた落ち葉や木の実を撮影し合ったり、写真を撮る方法を教え合ったりと、子どもたちが助け合う場面も多く見られました。
教室へ戻ると、家族や友達に伝える準備を進めました。見つけた秋を誰に知らせたいかも一緒に考えました。[発表ノート]を使う子ども向けに、テンプレートを記載した「ヒントカード」を事前に用意。希望者に配付し、資料づくりを支援しました。最初はヒントカードを使わずに作っていましたが、うまくいかなくなったのか、「やっぱりほしい」と声を掛けてきた子どもが何人もいました。このほかにも、絵を描いたり動画を撮ったりと、子どもたちなりに「伝え方」を選択し、試行錯誤しているのだと感じられました。
そして今回、[発表ノート]を使って田んぼや木々の四季による違いを示した子どもが複数名いました。これまでは写真フォルダを一生懸命スライドして見せていたけれど、[発表ノート]なら同じページに複数枚の写真を貼り、一度に比較できた。この成功体験は、喜びと自信につながったと思います。
手書きやICTを自由に選択できる状態であっても、[発表ノート]を選ぶ子どもは多くいます。それは自由度が大変高く、低学年であってもやりたいことが簡単にできるツールだからではないでしょうか。
3学期の指導
9月までは、端末は使うときにその都度保管庫へ取りに行かせていますが、10月からは毎朝机の中に入れておくようにさせます。そして今後目新しいことは経験させず、今持っている「伝え方」のスキルを磨き、慣れ、質を高める時間にしていきます。
3学期の最後には1年間のまとめとして、生活「もうすぐ2年生」の学習で、「できるようになったこと発表会」を行います。1年生で頑張ったことや成果を保護者に発表する場です。それまでに、自分が伝えたい内容に合わせ、根拠を持って発表方法を選べるようにさせたいと考えています。
係のお知らせポスターを[発表ノート]で作成。試行錯誤で質を高める
ここまで授業を中心にお話ししてきましたが、係活動でも[発表ノート]を活用しています。
9月初めにクラスがより良くなるために各係ができることを考えさせたとき、児童から「ポスターでお知らせしたい」という声が上がりました。そこで[発表ノート]でポスターを作り、教室内に掲示しました。
その後は活動を継続、発展させ、「どんな言葉ならもっと気持ちよく相手に伝わるか」と子どもたちに問いかけています。画用紙を使って何時間もかけて作るのではお知らせ自体の質を高めるのは難しいのですが、[発表ノート]ならそれができる。本質的な部分に目を向けさせ、試行錯誤する経験をさせたいと思っています。
1学期の指導が重要。「聞き合う」空気をつくる
子どもたちが主体性を持って物事を判断し、伝える力を身につけるには、1学期の指導が最も重要です。
そのために、入学当初から「西プレ」に基づき、「聞く」指導に力を入れてきました。例えば、「リアクション劇場」です。子どもたちが劇団員という設定で、思いつくリアクションを発表させ、板書。子どもたちはそれを見ながら「へえ~!」「おお~!」などと、遊びの一環のように何度も楽しく声に出すうち、発言する友達の方向を向き、話に反応できるようになってきます。児童が自分の意見を主張したり、友達同士で教え合ったりできるのは、「聞き合う」空気が土台にあるからだと感じます。
その上で、児童の「やりたい」気持ちを伸ばす指導を大切にしています。私が指示しすぎると、子どもの思いがつぶれてしまうかもしれない。幼児教育で育まれた児童の意欲を伸ばすことを念頭に置き、「やってみたい」という言葉が出てきたときには、よくよく考えて受け答えするようにしています。
教師は指示を出す人ではない。あくまでも「自分たちで解決できるようになるためのスキルを経験させる人」という気持ちで常に接しています。
1年生で培った「伝え方」が、2年生以降の学びを支える
もちろん、一斉に、同一の手段で進めた方が良い単元や学習内容では、みんなで同じように取り組みます。ですが、できる限り「自分で選ぶ」機会を確保してあげたい。ICTに限らず、それぞれの「伝え方」の良さを1年生なりに理解し、選択して発表できたという自信を持って2年生に進級してもらいたいと思っています。
これから学年を重ねるなかで、根拠を持って自分の学び方を選択する力がより重要になってくると思います。1年生での取り組みが、その基礎になってくれることを願っています。
「伝え方を自ら選び、判断する」という経験を培った子どもたちが、これからどのような育ちを見せてくれるのか。何ができるようになるのか。成長した姿を見ることを、とても楽しみにしています。
(2025年9月取材 / 2026年1月掲載)