実践レポート
小学校6年 総合的な学習の時間

日光移動教室の体験から、
個別、チームで問いをつくり探究 [気づきメモ]で情報を蓄積、共有、[発表ノート]を情報の整理・分析、まとめに

東京都昭島市立共成小学校の伊藤 理絵 主任教諭は、「日光移動教室」での体験を出発点に、児童が自ら問いを立て、調べて深める探究的な学びに取り組まれています。子どもたちが「学びの楽しさ」の実感できる授業づくりと、探究を支える『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]や[気づきメモ]の活用について伺いました。

伊藤 理絵

東京都昭島市立共成小学校 主任教諭

総合的な学習の時間で、探究的に学ぶ力を育てる

私は現在、6年生の担任を務めており、GIGAスクール構想当初からICT主任として本校の端末活用に関わってきました。今年度からは研究主任も兼任し、ICTを活用しながら学校全体の学びの質を高める取り組みを進めています。

1人1台端末の活用は、今や本校の日常風景の一部となっています。授業や学校生活のさまざまな場面で、児童が端末を自在に使いこなす姿が見られます。例えば私の学級では、児童が端末を使って係活動のポスターを作成したり、アンケート調査をしたりするなど、活動の中に端末が「道具」として自然に組み込まれています。

こうした状況を踏まえ、今年度の6年の総合的な学習の時間では、児童が端末を活用しながら「探究的に学ぶ力」を育てることを目標に掲げました。日光東照宮や華厳の滝、戦場ヶ原の見学など日光移動教室での体験を起点に、児童一人ひとりが自ら問いを立て、調べ、深めていく探究的な学びの取り組みをご紹介します。

児童が何度も探究のサイクルを経験できる単元を計画

図1 単元計画

探究的な学びには、「課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・次の課題」といった「探究のサイクル」を、児童が自ら主体的に回していく力が求められます。しかし、本校ではまだ個の学びが発展途上であり、その基盤となる情報活用能力の育成も課題でした。そこでまずは、日光での体験から「自分の問いを立てる」ことに焦点を当て、児童が探究のサイクルを繰り返し経験できるよう単元を構成しました図1

自身の関心から問いを立て、それを調べる面白さを実感することが探究、そして学びに向かう姿勢につながると考えています。

実践「日光から探究を広げよう」
学習のてびき

[発表ノート]に探究的な学びの過程をまとめ、「探究ノート」として活用

単元の冒頭では、児童が日光移動教室で印象に残ったことや不思議に感じたことを基に、マンダラチャートを作成しました。中央には「日光」を置き、そこから広がる言葉や疑問を書き出すことで、視点の可視化と問いの広がりを促しました。

その後「自分の問い」にどう取り組むかを『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]にまとめる活動を行い、児童同士の関心を基に私が3、4人のチームを編成。児童の了解を得た上で、各チームで「チームの問い」を検討していきました図2

発表ノート
図2チームの問いと個別の問いをまとめた[発表ノート]

チームの問いを設定するねらいは2つあります。一つはより本質的・抽象的な問いを立ててチームで取り組むことで、他者の視点や知識を重ねて探究での学びをより深いものにしたい。もう一つは、自分たちの関心が社会課題と結びつくことを実感させたいというものです。

とはいえ、抽象度の高い問いを児童が自力で立てることは容易ではありません。そこで、今回は生成AIを支援として導入。児童の探究シートを基に、私がAIに問いかけ、「問いの候補」を5つほど提示。児童が話し合い、その中から選ぶかたちで進めました。

なお、本単元ではすべての探究的な学びの過程を一つの[発表ノート]にまとめ、「探究ノート」として活用しました。

第7時:チームで協力し情報を収集、[気づきメモ]に蓄積、共有

今回紹介する実践は、単元の第7、8時に該当します。前時までに、2人分の個別の問いを「情報収集(1時間)+整理・分析(1時間)」で行っており、この時間ではチームの3人目の問いについて探究を進めていきました。

写真1チームで分担して調べ、得られた情報を[気づきメモ]に蓄積

第7時は、学校図書館で情報収集を行いました。チームで協力し、本、Webサイト、動画などメディアごとに分担して調べ、[気づきメモ]に情報を記録。[グループメモ]機能で、チーム全体で情報を共有・可視化し、データベースとして活用しました写真1

授業の導入では、情報の進め方や[気づきメモ]で上手に情報を共有している例などを紹介。チームごとに探究課題を確認した後、情報収集の時間をスタートさせました。今回が3回目ということもあり、児童たちは自然と役割分担を進め、積極的に資料に向かっていきました。15分ほどたったところで、一度作業を止めました。調べ学習では、自分の担当資料に集中するあまり、ほかのメンバーの進捗や内容が見えにくくなることがあるので、チーム内で[気づきメモ]の確認タイムを設けたのです。すると「その情報、ここにあったよ」「[気づきメモ]に記録しておいたから、後で見てね」といった声が自然に聞こえ、お互いの視点に触れながら学び合う姿が見られました。

問いにつながる情報を見極め、取捨選択して気づきを投稿する児童

情報収集の活動を重ねるなかで、[気づきメモ]の良さが見えてきました。当初、児童は[気づきメモ]にWebサイト上の長文をそのまま貼りつけていたため情報は共有されるものの、読み取りにくさがありました。しかし、次第に短く要点をまとめたり、分かりやすい言葉で言い換えたりと、共有を意識した投稿に変わっていきました。「チームのみんながメモを見る」という他者意識が、問いにつながる情報を見極め取捨選択する力、つまり情報活用能力の育成につながったのだと思います。

こうして[気づきメモ]は単なる記録と共有のツールではなく、投稿までのプロセスに思考が生まれるツールになっていきました。

また、写真や動画、WebサイトのURLを共有できるので、情報にアクセスがしやすく、分かりやすいのも大きな利点です。こうした特長が、「学習の共有データベース」としての[気づきメモ]の価値を高めていると感じます。

[気づきメモ]は、児童も私自身も「もっと投稿したい」と思わせてくれる不思議なツールだと思います。児童の「チームのために情報を届けたい」という気持ちを自然と引き出してくれました。実際、[気づきメモ]を見ると児童が自発的に「いいね」を送り合う様子が見られました。今回、私から「いいねを押しましょう」と促してはいません。自然と、参考になる情報や仲間の努力を認め合うような空気が生まれていたのだと思います。

第8時:[気づきメモ]から[発表ノート]へ情報をコピーし、整理・分析

次の時間では「情報整理・分析」に取り組みました。[気づきメモ]から[発表ノート]へ必要な情報をコピーし、比較、関係づけなどの整理を行いました。[グループワーク]機能でチームごとにつながり、Xチャートなどの思考テンプレートを活用しながら対話によって理解を深めていきました。

気づきメモ
▲[気づきメモ]に蓄積した情報から、児童が必要なものを選んでチェックを入れ、[発表ノート]にコピー機能で移動

しばらくすると、次に行う「ミニ交流タイム」に向け、ホワイトボードに情報のまとめを書き始める様子も見られました。このとき[発表ノート]がまとめ資料になっており、「ここにこう書いてあるよ」と原典の写真や記述に立ち返る児童の姿が見られました。[気づきメモ]では、時系列に情報が蓄積されますが、内容が分散しがちです。これに対して[発表ノート]で情報を精査・分類し直すことで、情報が再構成されます。短時間で情報が統合されたのは[気づきメモ]と[発表ノート]の連携があったからこそです。

発表ノート
▲[発表ノート]で整理した情報を資料として活用し、発表用のホワイトボードにまとめる

ミニ交流タイムは「ラウンドスタディ方式」を取り入れ、ほかのチームと探究の内容や得られた情報などを共有しました。具体的には、4人チームのうち1名がホストとして自チームの進行状況や整理内容を説明。ほかの3名は旅人としてほかのチームを訪問し、意見交換を行います。旅人は、相手の説明を聞いて質問を投げかけたり、自チームの気づきを紹介したりします。なるべく多くの人と関わることで思考が広がり、言語化によって思考が整理されると考え、取り組みました。

知識や人との「つながり」が学びの「深まり」に

授業の最後には、毎回[発表ノート]で振り返りを行っています図3。児童は「分かった」「広がった」「深まった」「つながった」の4観点にチェックを入れて、自分の達成感や成長を自分なりに評価します。今回は特に「広がった」「つながった」を選ぶ児童が多く、これは、前回までの授業には見られなかった傾向でした。探究を重ねるなかで断片的だった情報がつながり、知識が構造化されてきた表れだと捉えています。

発表ノート
図3[発表ノート]で作成した振り返りシート

また、こうした変化の背景には、人とのつながり、つまり児童同士の関係性の変化があります。これまであまり関わりのなかった児童が協働し、対話しながら学びを進める。そのなかで距離感が少しずつ変わる。結果、対話の質が向上し、学びが広がり、深まったと感じているのだと思います。

探究的な学びを通じて「学ぶ楽しさ」を感じさせたい

この後、児童はより難易度の高い「チームの問い」に取り組み、その成果をチームで発表する段階へ進んでいきます。今回の探究を出発点として、「学ぶって楽しい」「新しいことを知るって面白い」と児童が心から感じられるような活動へと、さらにつなげていきたいと考えています。その際、[気づきメモ]や[発表ノート]のような環境が、児童が学びを進めるための心強い伴走者となり、大きな助けになると感じています。

探究的な学びのなかでは、児童が教科で身につけた知識や技能を発揮する場面がたくさんあります。これからSDGsに代表されるような社会的課題にも目を向けて、自分たちにできることを考えて取り組む、そうした経験が「自分にも何かできそうだ」という自己有用感を高め、「やってみたい」「もっと学びたい」という動機形成につながっていくことを願っています。

(2025年6月取材 / 2025年9月掲載)