
体育科におけるICTを活用した自己調整学習

冨田 有統
兵庫県加古郡稲美町立加古小学校 教諭
はじめに
本校は全校児童169名の全学年単学級の小規模校で、令和4年度からは3~6年生、令和5年度2学期からは1・2年生にもチーム担任制を導入し、全教職員が協働して児童の指導にあたっている。研究主題は「自ら考え、自ら判断し、自ら行動する力の育成」である。各教師は「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に向けてICT活用法を研究してきた。令和6年度には、「自己調整学習」を新たなテーマとして加え、葛原学習研究所代表の葛原 祥太 氏が提唱する「けテぶれ学習法※」や「心マトリクス」を用いた学習方法の研究を行っている。
- けテぶれ学習法 : 「計画 / テスト / 分析 / 練習」のサイクルで学習する学習方法
実践 「自らチャレンジするマット運動」
今回紹介する実践では、学習活動端末支援Webシステム『SKYMENU Cloud』の[発表ノート][電子連絡板][カメラ]機能、NHK for Schoolの「はりきり体育ノ介」、タイムシフトカメラ機能など、児童の学びを支援するために1人1台端末を活用した。
児童は、リズムジャンプ、感覚づくりの運動を行った後、自ら設定した目標の達成に向かって、技の練習に取り組んだ。その過程で1人1台端末の様々な機能を活用し、仲間とともに学ぶ姿が見られた。なお、5年生の児童は、体育科授業において1人1台端末を使用して3年目になる。

1前時の振り返りをもとにした課題設定
神戸市立本山第一小学校の田渕 宏樹 主幹教諭がWebサイト「SKYMENU Teacher’s Community」に投稿した振り返りのフォーマットを参考に作成した「けテぶれ分析シート」を、学びの記録として活用している
。この「けテぶれ分析シート」には、1枚のシートに本時のめあて、活動の振り返り、児童自身の技の様子を撮影した動画が記録され、その日ごとの学びの記録が残るようになっている。本時のめあてを作成する際は、この「けテぶれ分析シート」を活用し、前時の学びを振り返ることで課題が単元を縦断し、「子どもたちの主体性」の向上が期待できる。
2「体育の学び箱」を活用した主体的な学び

[電子連絡板]内に、「体育の学び箱」と称する連絡板を作成し、タイムシフトカメラやNHK for School「はりきり体育ノ介」の動画サイトへのリンクを添付している
。新たな単元に入る際、児童には家庭学習として、事前に動画を視聴するよう伝えている。これにより授業内での説明時間が短縮され、体育科で必須となる運動量の確保につながると考える。また、授業内においても、めあてを早く入力し終えた後やスキルアップタイム中など、「体育の学び箱」を活用し、動画を視聴したりタイムシフトカメラを用いたりするなど、受け身ではなく能動的に技能向上を目指す姿が見られた。
3動画を活用し、仲間とともに学び合う

体育科の授業において一般的な活用方法である[カメラ]機能を使用した動画撮影は、自らの技を確認するだけではなく、[発表ノート]に保存することにより、「学びの記録」として蓄積される。これにより、通常のノートでは残せなかった情報を記録することが可能となる。また、仲間同士で動画を視聴し、アドバイスをし合うことで、コミュニケーションの機会が増え、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善につながる
。4「けテぶれ分析シート」をもとにした自己調整

まとめの場面では、導入時にも活用した「けテぶれ分析シート」を使用する。本校の研究テーマの一つである「自己調整学習力」の向上をねらい、「けテぶれ学習法」や「心マトリクス」
を用いた学習方法の視点から振り返りを行っている。この「けテぶれ分析シート」では、設定した課題に対して自分の技がどうだったかという観点から、児童自身がプラスとマイナスの要素を見つけ出し、分析を行う。また、個人の心や感情、思考パターンを理解し、改善するためのツールである「心マトリクス」の図を用い、自分自身の「学習方法」についても振り返りを記述する。この活動は、自己調整学習において、重要なプロセスであると考える。
「見通す」「実行する」「振り返る」で『SKYMENU Cloud』を生かす
本単元において、「動画」や「けテぶれ分析シート」を活用し、マット運動の技だけではなく、自らの学習方法にも課題を持ち、仲間とともに学び合う姿が多く見られた。自己調整学習を授業に取り入れる際に意識する「見通す」「実行する」「振り返る」という3つのプロセスにおいて、その学びを支えたのは、1人1台端末と『SKYMENU Cloud』である。今後も、より効果的な活用方法を模索し、児童の指導・支援に力を入れていきたい。
(2025年5月掲載)