「SKYMENU Cloud×汎用的なツール」で
深まる学び・広がる可能性
増田 優介 教諭
神戸市立乙木小学校
(実践時:神戸市立夢野の丘小学校 教諭)
総合的な学習の時間
みんなスマイル(福祉)
神戸市ではMicrosoftの端末を使用しており、教育用ツールとして『SKYMENU Cloud』が導入されています。
今回は、Microsoftの汎用的なツールと、教育用ツールである『SKYMENU Cloud』のいいとこ取りをして、昨年度実践した授業を紹介します。
第1次福祉について知ろう
第1次は、福祉について考える時間を取りました。高齢者との関わり合いを持ったり、盲学校の先生をお招きし、全盲などの視覚障がいに関するレクチャーを受けたり、点字体験を行ったりしました。
また、『SKYMENU Cloud』を活用した調べ学習も実施。本やインターネットで調べたことを、[気づきメモ]に記録していきます。本から引用する場合は、出典の書き方を子どもたちにあらかじめ指導しました
。これは、引用の練習の第一歩にもなりました。ここで[気づきメモ]を利用したのは、調べたことを気軽にメモしておけるだけでなく、写真や画像、WebサイトのURLを保存できるので、後々整理しやすくなると考えたためです。第2次友生支援学校と交流しよう
第2次では、特別支援学校の友達と遊ぶときに、どんな遊びが適しているのか、どんな遊びが喜んでもらえるのかをグループに分かれて考え、計画立案を行いました。
計画を基に、友生支援学校に伺って交流も実施。PCでクイズを作成したグループは、実際に友生支援学校にPCを持参し、クイズを出題して交流をしていました。
第3次誰もが「安心・安全で暮らしやすいまち」を提案しよう
第3次では、第1次・第2次の授業を基に、「どんなものがあれば、より安心・安全に暮らせるのか?」を考え、Microsoft PowerPointで提案書を作成。そして、ゲストティーチャーで来ていただいた先生にプレゼンテーションを実施しました。
この活動はグループで行うのではなく、1人ひとりがやりたいことをまとめるかたちに。子どもたちには、「目が不自由な人も耳が不自由な人も、手足が不自由な人も、すべての人が安心・安全で暮らしやすいまちになるようなアイデアを考えてね」と、投げかけました。
第3次におけるICT活用 実践のポイント
「絵」「工作」「プログラミング」自分なりの表現方法で
まずは、[気づきメモ]やMicrosoft Whiteboardを使って情報共有をしたり、子どもたちの間でアドバイスし合ったりして、アイデアをブラッシュアップしていきます。同じテーマについて調べた児童同士で情報を共有し、おのおのがアイデアを考えていきます。
表現方法は限定しなかったので、絵を描く子もいれば工作をする子、PCを使う子など様々でした。中にはプログラミングツールを使って、実際にロボットが動くかどうか試してみる子も。子どもたちの表現の幅をどんどん広げることができました。
ある児童は「ステップの幅を広くした、車いすでも乗ることができるエスカレーターを作りたい」と、工作で表現することを決め、どんどん作っていきました
。絵で表現した児童もいましたが、絵を描いた後に「これはプログラミングできるんじゃないか」と、絵をScratchに取り込み、実際に動かすことができるか試していました。別の児童は「耳の不自由な人が乗る車」を構想。ぶつかりそうになったときに光で伝えられる車を作りたいということで、前から障害物が来たら、赤いランプが点灯して停止する車のプログラムを構築しました
。休み時間も使って何度もプログラムを組み替え、ようやくイメージ通りの動作をするプログラムが完成しました。子どもも「やった!できた!」という気持ちになり、喜びを得られたのではないでしょうか。[気づきメモ]で個の活動を共有して意見交換
第3次では1人ひとりが別々の作業を行うため、児童同士のコミュニケーションを図るべく、[気づきメモ]を活用した情報共有を行いました。
右の車のプログラミングを行った児童へのコメントでは、「危険を感知したら、止まるのがすごい」「赤、青の役目がある」といった感想のほか、レベルアップのためのアドバイスも。少しの段差でつまずいてしまう恐れがあるので、危険物を察知するセンサの位置をもう少し低くした方がいいのではないかというアドバイスを受けた児童は、作品を改良していました。車いすのまま乗ることができるエスカレーター
左には、車いすが後ろに倒れてしまうのを防止するためのストッパーがついていましたが、「ストッパーはもう少し大きい方が安全ではないか」といった意見も。他の子の作品を細かいところまで見て、アドバイスをしている様子が見取れました。そのほか、「車いすに乗っている人が安心できそう」というコメントもありました。今回のテーマ「安心・安全なものを作ろう」に即したアイデアが出せていることが実感できるコメントは、励みになったのではないでしょうか。アイデアに対してお互いアドバイスをしながら、より良いものにしていこうとしている様子が見えました。
スライド1枚で目に留まる提案書を作成
提案する相手はゲストティーチャーで来ていただいた先生であることを子どもたちに伝えた上で、Microsoft PowerPointで提案書を作成していきます。ここでは、アニメーションをたくさんつけて提案する資料ではなく、スライド1枚で目に留まる提案書を作成させたかったため、「必要な情報を選んで、アイデアをスライド1枚にまとめようね」という制限をつけました。
ある児童は、目が不自由な人のために、撮影した写真を音声で説明する「音声カメラ」の提案書を作成。「小さくて軽い」「細かい工夫がある」などのポイントを挙げ、自分で描いた絵を貼りつけて作っていました。別の児童は、「点字のリモコン」を作るということで、ポイントを見やすくまとめています
。コメント機能を使って、ここでもお互いの提案書の良いところや、アドバイスを伝え合いました。この単元を通して、児童の情報活用能力がどんどん高まっていく様子を感じました。ICTを活用することで、デジタルならではの授業を展開することもできました。PC上で進捗状況を随時確認することができるので、机間指導と組み合わせて必要な支援を行いやすくなったと思います。
汎用的なツールでは難しい情報収集や共有に[気づきメモ]
汎用的なツールと『SKYMENU Cloud』を組み合わせて使う効果の一つに、「キャプチャによる情報収集のしやすさ」があると感じています。汎用的なツールの限界をカバーできるので、先述のように子どもたちが引用を学ぶ第一歩にもなりました。
また、「考えやアイデアの共有のしやすさ」もメリット。今年から教科書が改訂され、2次元コードがたくさん付加されるようになりました。子どもたちには予想をデジタルで作らせることが多くなりますが、汎用的なツールだけでは共有が難しく、お互いの予想を見合うことができません。そこで[気づきメモ]でキャプチャしたものを共有しています。これにより、さまざまな考え方に触れられるようになりました。
大学で提出するレポートや社会人になってから使用する書類などは、汎用的なツールを使って作成することも多いでしょう。授業を『SKYMENU Cloud』だけで行うことも可能ではありますが、汎用的なツールを掛け合わせることで、子どもたちの活動がさらに活発になります。将来も使えるスキルを身に付けられ、考えを深められる授業をこれからもつくっていきたいと思っています。
(2024年9月掲載)