実践レポート
小学校3年 算数・体育・家庭学習セミナーレポート

[発表ノート]で、個人に合わせた課題を用意

中学年でもできる! 主体的な学びと端末活用

井上 昌人 教諭

杉並区立杉並第三小学校(実践時:中野区立北原小学校 教諭)

幅広く活用できる[発表ノート]

中野区では、iPadを使用した1人1台端末学習を実施しています。端末にはさまざまな学習用のクラウドツールがインストールされていますが、私はそのなかでも『SKYMENU Cloud』を活用しています。今回は実践事例をいくつか紹介します。

▲ 配付された[発表ノート]で算数の学習課題に取り組む

『SKYMENU Cloud』で特によく使う機能が[発表ノート]。初めて使用したときは、一般的なプレゼンテーションツールと似たようなものという印象でしたが、活用を進めるにつれ、その活用の幅はかなり広いことを実感しています。

まずは、1時間の授業をデザインしやすいということです。紙の教科書の場合、授業の進め方でまだ与えたくない情報、見えてほしくない情報が児童の目に入ってしまうこともあります。[発表ノート]を使えば、使用したい情報を必要に応じて児童に提示できます。また、単元を通して同じ流れで授業を進められることも利点です。児童が見通しを持って授業に臨めるのです。

書き写す時間を短く、思考する時間を長く

『SKYMENU Cloud』の活用は、ノートを書く時間の短縮にもつながっています。例えば3年生の場合、板書をノートへ書き写すのにはまだまだ時間がかかります。しかし、授業で大切にしたいのは、児童が考える時間です。そこで、必要なことを教師があらかじめ記入しておいた[発表ノート]を作成し、児童に配付しています。児童が書き写す時間が短くなり、その分、思考する時間を長く取れるようになりました。

算数「かけ算の筆算:3つの関数のかけ算」での実践を例にして紹介します。授業の初め、児童には「お世話になっている人にお礼がしたいから、1粒75円の高級チョコレートを買うと代金はいくらになるでしょうか」と問題を提示します。児童たちからは、すぐに「75×5=375」という式が出てきます。

「では、1箱5粒入りの高級チョコレートを2箱買った場合は?」と問いかけた場合、児童はどのように答えを導き出すでしょうか。“75”円のチョコレートが“5”粒入った箱を“2”箱買うという、3つの数が登場するかけ算になります。「75×5×2=750」という式が出てくるはずですが、この時点ではまだ、児童たちは2つの数のかけ算しか学んでいません。

ここで「計算の仕方を考えよう」と話して[発表ノート]を児童たちに配付します。児童たちは考えて、発表、そして適用問題へと進みます。それが終わったら「今日分かったこと」で振り返りを書く。このような流れで授業を展開します。

多様なヒントや素材を用意し、児童の思考を支援

さらに個別最適な学びをめざして、個人に合わせて課題を用意しました。児童自身が自分に合った課題を選び取れるように、複数の[発表ノート]を作っています図1

図1算数で配付された[発表ノート]
図2白紙のページを使い、過去に学んだ内容を応用した児童

ヒントが不要な児童には、自分で文字や図形を自由に配置できる白紙のページを図2。教師があらかじめ数直線やマス目などのパーツを作り、[資料置き場]にセットしておくことで、児童自身が自分で選び取って使うことが可能です。

図3ヒントを活用して解にたどり着いた児童

算数が苦手な児童向けには、ヒントを付与したページを用意。今回はチョコレートの図だけを入れたページから、1箱の内容量や1粒あたりの金額を記載したもの、さらには「先にチョコレートの数をもとめよう」「先に1箱の代金をもとめよう」など、思考をアシストする情報を入れたものを、段階別に作りました図3。児童が自分に合うものを選び取り、自分のページに追加して使えます。

実際に授業で使用してみると、白紙のページを使用した児童は、すでに習ったかけ算の筆算を活用。1箱あたりの金額を求め、出た数を2倍することで解にたどり着いていました。ヒントつきのページを使った子は、まずはチョコレートの数を求めてから、全体の代金を考えるなどヒントを使って答えを導きました。自分自身の学習に最適なページやパーツを自ら選び取って思考できる点は、[発表ノート]のメリットだと思います。

動画と記録を蓄積し、マット運動を振り返る

図4[発表ノート]を使用した学習カード

そして、データが残る[発表ノート]は、振り返りがとてもしやすいので、学習カードとして活用しています。[発表ノート]であれば、教師が児童の学習状況を簡単に確認することも可能です。成績をつけるときにも各児童の理解度や、学習の積み重ね方を見取りやすくなります。

体育のマット運動では、目標と振り返りを記載するだけのシンプルな学習カードを使用しました図4。授業の初めに、本時の目標を複数記載したページを提示。そこから児童が自分に合う目標を選び取り、自身のページの「今日の目標」欄に貼り付けます。目標の設定はこれで完了ですが、この作業のおかげで自分のめあてが明確になり、児童は各自のめあてを意識しながら授業に取り組んでいました。毎時の終わりには「今日の振り返り」を記入。そして、4時間ごとに大きな振り返りを実施することで、初回の授業からの自分の変化を明確に把握できるようにしました。

さらに、[発表ノート]には動画も入れられるので、体育のような実技教科で重宝します。今回のマット運動でも、自分自身の技を動画で見ることで、自分を客観視することが可能に。動画を見た上で、[発表ノート]に「できていること」と「できていないこと」を書かせました。これにより、自分の成長を実感でき、次のめあても明確になった様子でした。

4つの課題から自ら宿題を選び、[発表ノート]で提出

[発表ノート]はデジタルなので、紛失の心配がありません。その利点を生かして、現在は紙の宿題プリントの代替として使用しています図5

図5児童が提出した宿題の[発表ノート]。赤色で書かれている文字や矢印は、井上教諭が[添削]機能で書かれたもの

[発表ノート]の宿題は、ドリルによる問題演習、音読、日記、そして自由課題の4種類から、どの学習に取り組むか、児童が自己選択できるようにしています。週末など時間のあるときには、複数の課題に取り組むよう伝えています。宿題の[提出箱]は児童同士が閲覧できるので、友達がどんな宿題をどんな風にやっているのか、互いに確認し合うことも可能です。中には、友達の自由課題に対して自分の思ったことをコメントしている児童も。このように、相互に見合うことで、学習が深まっていく様子も見取れます。

また、教師視点では、丸付けの時間を短縮できることもメリットです。紙のプリントで添削を行う場合、そのほかにもハンコを押したり、コメントを書いたりと、何かと時間がかかるもの。しかし、これらの作業はすべて[発表ノート]上でできるので、紙のプリントでは1時間半かかっていた添削も30分程度に短縮できます。宿題の未提出者も端末上で簡単に確認できるので、該当の児童にすぐに声掛けできるようになり、負担軽減に一役買っています。

学びを深めると同時に教師の負荷軽減にも

『SKYMENU Cloud』の活用は、教師と児童の双方にメリットがあると感じています。

まず、紙のノートでは把握できなかった児童の思考や表現を見取れるようになりました。さまざまな場面で筆記用具代わりにICTを活用することで、教師が考えもしなかったことを[発表ノート]に記入したり、表現したりしている児童もいます。

教師にとっては、作成した教材を共有できる点が大きなメリットだと感じています。働き方改革が進む中で、教材研究をする時間がなかなか取れないという先生も多いと思います。『SKYMENU Cloud』を使って作成した教材を共有することで、教材研究や授業準備の時間を短縮できるという教師にとってのメリットはもちろん、児童が活発にICTを活用でき、個別最適な学びや協働的な学びにもつながるので、双方にメリットがあると思っています。

今回ご紹介した[発表ノート]は、誰でも簡単に作れるものばかりだと思いますので、ぜひ先生方にも試していただきたいです。また、私が作成した[発表ノート]は、「SKYMENU Teacher’s Community Site」で展開していますので、ご活用いただければうれしく思います。

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(2024年7月掲載)