授業でのICT活用

京都市立大淀中学校 アニメーションで自分の考えた思いを表現しよう

京都市立大淀中学校の技術科担当 斎藤 猛教諭は、2年の単元「画像を処理しよう」で簡易なアニメーション制作に取り組まれています。アニメーション制作を通じて、生徒たちに座学で学んだ知識の理解や技術の習得を図るとともに、ICTを活用して、自分の考えを工夫し思考(想像)した内容を表現する力の育成をねらわれた実践をご紹介します。

ペイントソフトウェアで自作アニメのコマを描く生徒

個人認証環境を構築 個人フォルダの利用が日常に

同校のコンピュータ教室は平成22年度に更新され、ICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』もVer.6からVer.12に更新された。斎藤教諭は、[ユーザ情報管理]機能で、生徒1人ひとりにユーザIDとパスワードを配付され、個人認証環境を構築。ユーザ情報の登録とともに自動的に生成されるフォルダ「個人フォルダ」も運用されており、生徒たちは卒業までの3年間のデータを、すべて自分の個人フォルダに保存している。

さらに、各個人フォルダには教材や課題のファイルなどを一斉配付されており、授業が始まると真っ先に個人フォルダを開くことが生徒たちの日常となっている。

アニメ制作を通じて学習内容を落とし込む

同校技術科2年は、1学期からこれまでにコンピュータの仕組みや基礎的な知識を座学中心で学習してきた。斎藤教諭は、これまで座学で学んだ内容を、実習を通じて身につけさせたいと、単元「画像を処理しよう(全8時)」で簡易なアニメーション制作に取り組まれている。

単元は2段階の学習活動に分かれている。前半の3時間は、ペイントソフトウェアとプレゼンテーションソフトウェアを利用して、1つの漢字の形を徐々に変化させていく様子をアニメーションにする「文字アニメ」制作に取り組まれた。後半の5時間では、ペイントソフトウェアとGIFアニメ作成用ソフトウェアを利用して、自分で描いた絵を動かす「自作アニメ」制作に取り組まれている。

本時は第6時。GIFアニメに必要なすべてのコマを描き終えることが目標だ。

自分の考えや思いをICTで表現する体験を

生徒たちは、休み時間にコンピュータ教室に移動してくると、コンピュータの電源を入れ、自分のユーザでログオン。個人フォルダを開き、自作アニメ制作の続きに取り掛かった。

授業時間が始まると、斎藤教諭は「自作アニメに必要なすべてのコマを書き終えよう」と本時の目標を確認された。そして、完成した作品は、「相互評価」で他のクラスの生徒に鑑賞、評価されることを説明され、より多くの人が惹きつけられるようにタイトルの文言やレイアウト、アニメーションの内容を考えてほしいと生徒たちに注文された。

生徒たちが制作している間、斎藤教諭は、『SKYMENU Pro』の「コンピュータ教室授業支援」機能の操作パネル画面で進捗を確認。作業が進んでいなかったり、つまずいたりしている生徒がいれば、机間指導でアドバイスして回られた。

面白い発想や工夫している作品があれば、[学習者機画面受信]機能で生徒の画面を教員機に受信し、教員機につながれたプロジェクタで大きく映し出して紹介された。生徒たちはほかの人の作品に刺激を受けながら、より面白く、興味を引くために思考を巡らせ、ときには周りに相談をしながら工夫を重ねていった。

授業のまとめでは、新しく作成した画像を「上書き保存」ではなく「別名で保存」することを改めて確認され、授業を終えられた。次の時間では、自作アニメを完成させる予定だ。

「コンピュータ教室授業支援」機能の操作パネルと教員機で生徒たちの進捗具合を確認される斎藤教諭

学習意欲を高め、創意工夫を促すアニメ制作

斎藤教諭は、2年前から本時のような簡易なアニメーションの制作を指導に取り入れられている。それまではペイントソフトウェアで一枚の絵を描かせて作る「カレンダー制作」などに取り組まれていたが、生徒たちが創意工夫する余地が少なく、学習意欲も高まらないこと、また、それまで座学で学習した内容を振り返る場面も少ないと感じ、よい教材を探しておられた。

そんなときに京都市内の研究会で出会ったのがアニメーション制作だ。アニメーション制作は画像を少しずつ編集して、次のコマを作成する過程で生徒たちに「上書き保存」と「別名で保存」の違いを理解させられる。また、複数の画像ファイルが作成されるため、名前を変更して整理するといったファイルの基本的な扱い方も自然と身につけさせやすい。

特に、文字アニメでは、作成したコマをプレゼンテーションソフトの各スライドに貼り付ける作業で「Ctrl+C」や「Ctrl+V」などのICTを便利に活用するための技術を繰り返し練習させられること。自作アニメでは、JPEGで描いた複数のコマをGIFアニメに変換する過程で、JPEGやGIFなどの画像形式の違いを実感をもって理解させられることをメリットに感じておられる。

絵の上手下手ではく、相手に伝わる内容を

ほかのクラスの生徒たちに作品を評価される「相互評価」が、生徒たちのモチベーションを高めている。生徒たちの創意工夫を促すための仕掛けだ。

また、斎藤教諭は、相互評価では単に絵の上手下手ではなく、ストーリー性や工夫して表現されている点などに注目させ、その作品が相手に伝わるように工夫されているかどうかを評価のポイントにしたいと考えておられる。

「自分でよいと思っていても、周りの評価が同じとは限りません。相手がどう評価するのかを考えたものづくりをさせたい。年間指導計画では、本単元の後は表計算ソフトウェアやインターネットでの情報収集に関する学習が続きます。本時は、自分の考えを表現することの楽しさを体験させられる貴重な機会。生徒たちには自由に発想し、大いに工夫してほしいと考えています」。

席に着いたら個人フォルダを開くことが日常に

学習者機で表示される個人フォルダ画面生徒たちにとって、自分のユーザでログオンし、個人フォルダから授業の課題ファイルを開いたり、作成したファイルを個人フォイルダに保存することは当たり前の事となっている。

個人フォルダを利用する以前は、斎藤教諭が自らサーバ上の共有フォルダ内に全生徒分の「学年組番号」のフォルダを作成されており、管理に手間がかかっていた。全生徒分のアクセス制限なども設定できないため、生徒が誤ってデータを移動したり、書き換えてしまったりするトラブルが後を絶たず、負担になっておられた。

個人フォルダの利用を始めてからは、生徒が他の生徒のフォルダを閲覧・編集できないため、トラブルの心配はなくなり管理の手間が軽減されたとのこと。

生徒たちの個人フォルダに教材を配付・回収できる「個人/グループフォルダ管理ツール」教材や課題ファイルの配付や回収には、教員機から生徒たちの個人フォルダを閲覧、編集できる「個人/グループフォルダ管理ツール」を利用されている。生徒の個人フォルダへのファイル配付は毎時間のように利用されており、なくてはならない機能といわれる。また、授業の節目では、ファイルの一括回収機能で、課題ファイルを回収し生徒たちの状況や変化を確認されている。

「Ver.12はVer.6と比べ、進級処理などの年次更新の処理がわかりやすくなっていると感じます。進級による個人フォルダのデータ移動も簡単に行えそうです。今後も教員の負荷を軽減する改善をお願いしたい」と期待を寄せられた。

パスワードは個人フォルダを開ける大切な『鍵』

同校では、1年で初めてコンピュータを利用する授業で、個人フォルダの説明とともに、パスワードの管理の大切さを指導されている。また、SKYMENU ランチャーの[パスワード変更]機能で、生徒たちがいつでもパスワードを変更できるように設定され、「知られたかも」と不安に感じた生徒は自主的にパスワード変更をかけているとのこと。

「生徒たちには、パスワードを自分の大切な情報が詰まった個人フォルダを開ける大切な『鍵』。だから、ほかの人に教えてはいけないし、知られてしまったら変更することが大事と指導しています。これからの社会では、パスワードなどの重要な情報を適切に扱う力を身につけていなければなりません。個人フォルダで生徒自身にデータを管理させることで、パスワード管理の重要性を実感できているのでは」と個人認証環境と個人フォルダの運用によって管理負荷の軽減だけでなく、情報モラルの指導にも効果があることをお話しいただいた。

学校紹介
京都市立大淀中学校

京都市立大淀中学校

昭和50年4月1日開校。同校は、京都盆地の最南端に位置し、淀川水系の宇治川と桂川に挟まれた地域に位置する。「自主・自立の態度と共生の心を育成する」を学校教育目標に掲げ、言語活動を軸とした学力向上と地域活用ネットワークを重点目標として、学力向上に向けて「見える学力」と「見えにくい学力」との包括的な学力の向上を目指し、さまざまな教育活動に取り組まれている。

http://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=207508

(2012年10月掲載)