授業でのICT活用

実践レポート

北海道岩見沢緑陵高等学校

SKYMENU ProがPC200台の運用管理を支える

充実したICT環境でビジネスに求められる資質・能力を育む

北海道岩見沢緑陵高等学校

北海道岩見沢緑陵高等学校では、生徒用に最新コンピュータが200台以上設置されるなど、充実したICT環境を整備されています。同校の情報コミュニケーション科では、地域の活性化をテーマにした「課題研究」に注力され、これからの社会で求められる情報活用能力やコミュニケーション能力の育成をめざし、さまざまな教育活動に取り組まれています。同科の1年「情報処理」と3年「課題研究」の授業を取材させていただくとともに、小林亨教諭、石井純教諭、川崎知史教諭にお話を伺いました。

(2012年8月掲載)

情報コミュニケーション科の「情報処理」の授業の様子

情報活用能力・コミュニケーション能力を育む

同校の情報コミュニケーション科は、平成14年4月に商業科を学科転換して設置された。ビジネスの諸活動を行うために必要な心構えと知識・技術を身につけるとともに、これからの社会で求められる情報活用能力とコミュニケーション能力を育てることをめざし、特色ある教育課程を組まれている。

生徒の興味や関心、志望する進路に合わせ「情報科学コース」「情報経済コース」の2コースを置き、ティームティーチングを活用して、専門性を深めるための科目・学校設定科目も設置されている。

充実したICT環境を整備、個人認証環境も

4つのコンピュータ教室「情報処理室Ⅰ」「情報処理室Ⅱ」「マルチメディア教室」「総合実践室」に約200台のコンピュータが整備され、学習内容に応じて最適な環境を使い分けられている。

特に「マルチメディア教室」には、高性能コンピュータを設置し、解像度が高く、正確に色を表現できるディスプレイモニターを採用。Illustrator、Photoshop、Premiere などのソフトウェアやB0サイズのポスターを印刷できる大型プリンタも整備されており、デザインのプロが利用するようなICT環境を整えられている。

生徒たちが利用する「個人フォルダ」 これらのコンピュータすべてにICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』が導入されており、[ユーザ情報管理]機能で、入学時に全生徒のユーザ情報を登録し、ユーザID、パスワードを配付する「個人認証環境」を構築されている。

また、ユーザ情報の登録とともに生成される「個人フォルダ」を利用されており、授業で利用する課題ファイルなどは、予め生徒の個人フォルダに配付されている。授業が始まると、生徒たちは自分の個人フォルダから課題ファイルを開くことが日常になっている。

1年情報処理 検定取得を目標に早くて正確なタイプ入力を練習

早くて正確なタイプ入力が基本

授業が始まると、小林教諭は「個人フォルダ」に予め保存されているタイプ入力用のフォーマットファイルを開くように指示。ストップウォッチを持ち、「制限時間内にできるだけ正確に入力しよう」と声をかけ、問題集の文書を一斉にタイプ入力させた。

生徒たちは入力に集中し、コンピュータ教室には、生徒たちがキーをタイプする音が響き渡る。

時間になると手を止めさせ、入力文字数を確認するように指示。個人フォルダ内の「ワープロ速度記録票」に入力できた文字数を記録させた。「ワープロ速度記録票」は入力できた文字数を記録するExcelの表で、生徒たちが成長を実感できるようにとの配慮から用意されている。タイプ入力の練習後は、時間を区切って正確にビジネス文書を作成させるなど、検定取得に向けた授業を展開。授業のまとめでは、[アンケート]機能を利用して本時の達成度を質問され、集計結果をグラフで提示し達成度を確かめられた。

教員機でアンケートを作成し送信 学習者機でアンケートに回答する

半数の生徒が全商3種目の1級取得

同科では、検定取得に特に注力されており、「ワープロ」「英語」「情報処理」「電卓」「簿記」検定の全員受験を実施されている。生徒の約半数は卒業までに全国商業高等学校協会の検定試験3種目の1級取得に成功して卒業している。

小林教諭は「素早く正確なタイプ入力やビジネス文書の作成は、基礎・基本となるスキル。検定取得は自分の達成度を確認する良い機会になる。1年では基礎・基本スキルをしっかりと指導し、生徒のスキルを一定の水準まで底上げしたい」と話される。

また「タイプ入力スキルなどはあくまで基礎・基本の能力。2、3年では『課題研究』を見据え、情報を収集し、分析して判断するといった情報活用の力やプレゼンテーションで表現する力などを身につけさせたい」と情報活用能力やコミュニケーション能力育成の重要性を強調された。

学校現場を考えた「サポート」を評価

『SKYMENU Pro』について伺うと「生徒には個人フォルダを3年間利用させています。課題や作品のデータはすべて個人フォルダに保存されるので、生徒も教員もデータの管理が容易です。また、年度が替わっても、進級時処理を行うだけでそのまま「個人フォルダ」を利用させられるので、とても便利に感じている」と評価をいただいた。

また、サポートに関しては、「本校ではVer.3から利用していますが、バージョンアップを重ね、安定した動作で安心して利用できています。サポートが手厚く、トラブル時にはサポートダイヤルの丁寧な対応に感謝しています。たとえすぐに解決しない難しい問題でも、その日の授業を乗り切るための回避策を提案してくれる。学校のことを考えた対応を今後も続けてほしい」と期待を寄せていただいた。

3年課題研究 地域活性化をめざし、生徒が協力して課題を解決

大観衆を前にプレゼン「課題研究成果発表会」

課題研究では、毎年1月に「課題研究成果発表会」が行われる。大きなホールで多数の聴衆を目の前に、生徒たちが1年間の研究成果をプレゼンすることが慣例になっており、生徒たちのモチベーションになっている。

研究は、地域活性化が大枠のテーマとして決められている。それぞれの班でさらに具体的なテーマを決め、フィールドワークで地域の人々や商店街、企業などとかかわりながら活動していく。

4月~6月に、課題研究のテーマを固め、活動計画を作成。夏休みを中心にフィールドワークを実施し、10月には中間発表会で活動経過をプレゼンで報告。12月は、1月の課題研究成果発表会に向け「課題研究収録」の原稿をまとめるといった、慌ただしいスケジュールになっている。

特に、今年度の課題研究成果発表会の会場は1,200名の観客を収容できる大ホールが予定されており、生徒たちには相当なプレッシャーがかかっている。

デザイン力を生かし地域活性化に奔走

生徒たちが取材し、作成した紙面 前時は、班ごとに研究テーマや方向性を学科の先生方に対してプレゼンしており、先生方から考えが浅い部分などについて指摘を受けている。本時は、指摘を受けた点に対して改善案の話し合いや制作活動を進めた。

生徒たちは、「商店街の活性化」「交通安全のためのポスター制作」「岩見沢市を紹介するCMの制作」など、さまざまな切り口で地域活性化をねらう。

例えば、岩見沢市の4条商店街の活性化をめざす班では、得意のデザイン力を生かし、地方情報誌に商店街を紹介する原稿を作成している。

川崎教諭や小林教諭、石井教諭ら学科の先生方 は各班を回り、進捗状況を確認していく。「前時で 受けた指摘にどう対処するのか」「ターゲットは定 まっているのか」「ターゲットへのアプローチ方法 はそれでよいのか」など質問し、生徒たちに気づき が生まれるようにアドバイスをして回られる。

指導のポイントについて石井教諭は「課題研究では、教えるのではなく、アドバイザーとしてのかかわりを大事にしています。常に生徒たちに次の行動を考えさせるように心がけています」と見守る姿勢が大事であると強調された。

常に「本物」を意識させて

課題研究成果発表会では、プロンプターやタブレットPCなど、生徒たちがより本格的なプレゼンを行える機器を取り入れられる予定。同科では1、2年から、プレゼンテーションスキルを学ぶ科目も設定されており、指導に力を入れておられる。さらに、学習活動のあらゆる場面でプレゼンテーションを行う機会を積極的に取り入れられており、生徒たちは日々、表現力を鍛えられている。

川崎教諭は「デザインもプレゼンテーションも、『ごっこ』ではなく、『本物』を意識させたい。そのためには、プロと同じようにデザインができ、プレゼンも行える充実したICT環境の整備が欠かせないと考えています。実社会のビジネスで通用する、本物の技術を身につけさせたい」といわれる。

課題研究を通じて大きく成長する生徒

課題研究の意義について小林教諭は「生徒たちが同じ目標を持った仲間とコミュニケーションをとり、力を合わせて課題を解決していく。そのプロセスのなかで、コミュニケーション能力や協調性、リーダーシップ、情報活用能力、問題解決力、発想力などさまざまな力を実践的に身につけ、成長している。生徒たち自身も達成感が得られ、大きな自信につながっている」と話される。

しかし、生徒たちのフィールドワークにあたっては、教員の付き添いや訪問先との事前調整が必要となる場合があり、先生方の負担が大きくなる。同校のように課題研究の指導に注力される高等学校は道内でも少ないと指摘される。同校では、教員だけでなく、学校長や教頭、事務長が連携し、一体となってフォローしていることがうまく回っている理由とのこと。

また、石井教諭は課題研究が教職員への良い刺激になっていると話される。

「私たち教員は、岩見沢のいいも悪いも理解した上で生徒たちに適切なアドバイスを行う必要があります。先生方は常にアンテナを高くはり、地域に関するさまざまな情報を集め、学んでいます。生徒も教職員も大変ですが、同時に楽しさややりがいも感じています。そして、成果発表会で一年間頑張った生徒たちの姿を見ることが私たちの何よりの喜びです」。

この日の放課後も石井教諭は生徒たちとともにフィールドワークに向かわれる予定だ。

「緑陵ブランド」~地域に信頼される学校をめざして

南和孝校長 豊かな自然の中に立地する本校は、昭和49年に市民の強い期待を担い誕生し、創立38年目を迎える歴史と伝統ある学校です。現在までに9,000名を超える卒業生を送り出し、市内はもとより全道、全国の第一線で活躍しています。

「普通科」と「情報コミュニケーション科」の2学科を開設しており、地域の学校として地域の皆様にご支援をいただきながら、二つの学科の特長を活かした特色ある教育を展開しています。特に情報コミュニケーション科では、生徒たちの活動を支える最新コンピュータをはじめ、充実したICT機器設備を整えています。

また、安全安心な学校づくりをめざし、規律ある生徒指導を進めています。本校生の服装や挨拶にもその一端は表れ、「生徒が誇りを持って通える高校」として定着し、周辺地域では一番の人気校となっています。

北海道岩見沢緑陵高等学校 今、時代の大きな変革の中にあって、21世紀を担う人づくりが強く求められています。今まで培ってきた輝かしい伝統を引き継ぎながら、生徒・教職員が活気に満ちた日々を過ごせる魅力ある学校づくりに精一杯取り組んでいきたいと考えています。

充実したICT環境の整備で子どもの学びを支える

井筒亨事務長 岩見沢市は、全国の地方自治体に先駆けて高度ICT基盤を整備し、教育・福祉・医療など幅広い分野における利活用を進めるとともに、新たなビジネスの創造と、それに伴う雇用の創出も進めています。

本校は、そのような地域環境の市立高校として、地域社会全体の一翼を担う有為な人材を送り出してきています。実社会において、即戦力として活躍できるよう、最新で高性能なICT関連機器を提供し充実した教育活動が行えるように努めています。

また、情報コミュニケーション学科を中心に本校は地域と密接に連携しています。課題研究では、生徒たちが市内外各所に出向く場面も多々あり、訪問先との調整などは教職員一体となって協力して います。今後も岩見沢緑陵高等学校の教育実現のサポートをしていきたい。