授業でのICT活用

実践レポート

大坪要 教諭

授業支援からネットワークの運用管理まで「SKYMENU Pro」を活用

5教室コンピュータ240台を一元管理

大坪 要(神奈川県立小田原総合ビジネス高等学校 教諭)

神奈川県立小田原総合ビジネス高等学校は、その特色ある教育内容や、多様な選択科目の展開に必要な学習環境として、また、最先端の情報機器を活用して、実践的な力を身につけることを目的に、5教室240台のコンピュータを備えるICT棟を整備されています。
このほど、ICT棟におけるコンピュータの総合的な運用管理について、大坪要教諭にお話を伺うとともに、コンピュータ教室で行われた「ビジネスとマルチメディア」の授業を取材させていただきました。 ご使用ソフトウェア:SKYMENU Pro

(2010年3月掲載)

ICT棟新設、5つのOA室を整備

新設されたICT棟平成20年8月、5教室240台のコンピュータを備えるICT棟が同校に整備されました。5つの教室は、サーバ室、OA管理室とネットワークで結ばれ、コンピュータを活用した授業やネットワークの総合的な運用管理を行えるICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』を利用して、サーバ1台で一元管理されています。

ソフトウェアの選定に関わられ、実際に活用されている大坪教諭は、「整備される以前、5つのコンピュータ教室が校内各所に点在し、それぞれが別々のサーバで運用管理されており、大変不便でした。そこに『SKYMENU Pro』を利用したサーバ1台一元管理の運用を提案いただき、大変魅力を感じました」と言われます。

「SKYMENU Pro」を利用してサーバ1台でコンピュータを集中管理図

ユーザやデータの管理が負担に

『SKYMENU Pro』の導入前は、ユーザやデータの管理に課題がありました。本校では、毎年240名ほどの生徒が入学し、卒業していきます。『Active Directory』を操作して生徒のユーザ管理を行うことは、教員に大きな負担がかかります。そのため、個人認証環境を構築せず、『Student01』『Student02』といった共通のユーザIDとパスワードで、生徒たちにログオンさせていました。

個人フォルダはなく、各授業で生徒が作成した作品や課題データは、各コンピュータ教室のサーバに保存させていました。結果、データは分散され、生徒は課題や自習に取り組みにくく、教員も課題の確認や評価が不便な状況にありました。

また、サーバのデータは年度単位で管理しており、年度ごとに各授業の担当者が外部記憶媒体に保存していました。そのため、生徒が過去のデータを自由に閲覧できなかったり、保存期間が教員毎で異なるため、データが失われてしまうなどの問題がありました」と大坪教諭。

[ユーザ情報管理]機能で個人認証環境の構築が容易に

『SKYMENU Pro』では、Excel形式で作られた既存の児童生徒名簿を使って簡単にユーザ情報の登録や進級処理を行える[ユーザ情報管理]機能を備えています(Ver.10以降)。

生徒のユーザ情報の登録を行っておられる大坪教諭は、[ユーザ情報管理]機能が『SKYMENU Pro』導入の決め手と言われます。「ユーザ管理がとても簡単になりました。生徒1人ひとりにユーザIDとパスワードを付与し、個人認証環境を構築しています。また、ユーザ情報の登録と同時に個人フォルダが作成されるため、データの管理がとても楽になりました。

[進級処理]機能では、個人フォルダのデータが新しい学年・組にそのまま移行されるので、アクセス権限の再設定などの難易度が高い作業が必要ありません。

[卒業処理]機能は、処理を実行しても、卒業生のデータがすぐに削除されず、一旦、別の領域に退避させてくれます。卒業生の作品やプレゼンデータなどを簡単に紹介できるようになりました。

このようなユーザ情報の登録、進級、卒業の処理はステップ形式で進むため、専門的な知識がなくてもスムーズに行えました」。

PC240台の電源管理から、課題の評価まで

[個人/グループフォルダ管理]機能を利用してサーバ室のコンピュータから生徒の個人フォルダを確認できる。ICT棟では1教室、週20コマ以上、5教室全体では週90コマ以上の授業が行われています。「校内ネットワーク運用支援」の[電源]機能で、1時間目から授業を円滑に進めるために、毎朝出勤した教員が5教室のコンピュータの電源を一斉に入れておられます。

「退校時も[電源]機能で一斉に電源OFFを行っています。教員が各教室の確認に回る必要がなくなりました。また、教員ユーザでログオンすれば、「個人/グループフォルダ管理」機能で、教員機やサーバ室のコンピュータから生徒の個人フォルダを閲覧できるので、評価がスムーズに行えるようになりました」と大坪教諭。教員の業務効率化や負荷低減効果について、お話しいただきました。

〔校内ネットワーク運用支援〕操作パネル。電源をはじめ、5教室240台のコンピュータを管理。

ビジネスで利用されているマルチメディア技術を学ぶ

大坪教諭が担当される「ビジネスとマルチメディア」の授業を取材させていただきました。情報技術のさまざまな分野における基礎知識や技術を学ぶ「情報ビジネス系」の生徒24名が、本時を選択しています。

ICT棟に整備されたコンピュータ教室。主に「情報ビジネス系」の生徒たちが利用している。

マルチメディア技術の基礎を学ぶ

本時は「Adobe Flash」のアクションスクリプトの基礎を学ぶことがテーマ。アクションスクリプトを活用し、ボタンの配置とスクリプトの関係を理解することがねらいです。

生徒たちは、自分のユーザIDとパスワードでログオン。大坪教諭は、個人フォルダから前時に使用した課題ファイルを開くように指示された。前時にファイルを保存していなかった生徒には、教員機から[教材配付]機能で課題ファイルを配付されました。

中間モニターに提示される教育画面を確認しながら課題に取り組む。〔マーキング〕機能で注目させたい部分を枠で囲い、わかりやすく説明まず、前時に学習した「Adobe Flash」の操作の仕方やスクリプトの記述方法を振り返った。[教員画面送信]機能を使って生徒2人に1台配備されている中間モニターに教員画面を提示し、実際にスクリプトを記述しながら、そのポイントを説明された。指示がわかりにくい部分については、[マーキング]機能で該当箇所に下線を引いたり、枠で囲ってわかりやすく説明されました。

教卓に置かれた三台のディスプレイ続いて、本時の実習課題を伝え、課題に取り組むように指示。生徒たちが作業を進める間、机間指導や[学習者画面受信]機能の「静止画面一覧」を利用して、生徒たちの進捗を確認し、つまずいている生徒にアドバイス。また、スクリプトの記述を工夫したり、お手本となる生徒の画面を、[学習者画面送信]機能で全ての中間モニターに提示して紹介されました。「生徒の作品を紹介することで、生徒同士の刺激にしたいと考えました」と大坪教諭。生徒たちはお互いの作品に刺激を受け、より一層集中し課題に取り組んでいました。

統一した操作感で、授業に必要な機能が利用できる

以前、同校では[ロック]や[画面送信]など、コンピュータ教室での授業に必要な機能を、全く別々の製品を組み合わせて利用されていました。大坪教諭は「『SKYMENU Pro』の「コンピュータ教室授業支援」は[ロック]や[画面送信]の機能をはじめ、授業を支援する機能が一つにまとめられています。統一した操作感でさまざまな機能をスムーズに利用できるようになりました。コンピュータ教室の授業においても非常に便利なツールです」と話されます。

また、「[教員画面送信]機能は、本時のようにソフトウェアの操作方法を説明したり、授業の課題をまとめたファイルを提示し、生徒たちに課題を明確につかませるために頻繁に利用しています。[ロック]機能もとても便利です。学習者機のマウス・キーボードの操作をロックすることで、プリントを使ってプログラムの構造をしっかりと考える時間を確保できています」とのこと。

自作ゲーム作成を目標に、生徒の関心・意欲を引き出す

「情報ビジネス系」では、実社会で通用する検定の取得をめざすなど、即戦力として通用する知識やスキルを身につけることを一つの目標に持たれています。

本時の「ビジネスとマルチメディア」では、プロも利用しているソフトウェアで、楽曲や動画、静止画の編集などに取り組んできています。

また、学校の広報活動をテーマに学校のWebサイトのムービーやポスター制作に取り組ませることで、他者の目を意識させ、生徒の自己満足に終わらない活動となるように配慮しておられます。

今後の指導について大坪教諭は「生徒それぞれの興味・関心に応え、その力を伸ばしていくことも『情報ビジネス系』の目標です。『ビジネスとマルチメディア』の授業ではゲームクリエイターに興味を持っている生徒が多くいます。まとめの課題として簡単なゲーム作りに挑戦させるなど、『面白い』『さらに学びたい』という生徒の関心・意欲を引き出すテーマを定め、指導していきたい」と話されました。

近藤薫 校長

生徒1人ひとりのニーズに応えたビジネス教育を

ビジネス社会で頼りにされる人材の育成

近藤 薫(神奈川県立小田原総合ビジネス高等学校 校長)

神奈川県立小田原総合ビジネス高等学校は、平成20年4月に開校した「総合ビジネス科」のみを設置する新しいタイプの高等学校。同校の設立計画時から関わっておられる近藤 薰校長は、総合商社で27年の勤務経験を持ち、平成17年に着任した民間人校長です。同校の特色ある教育活動についてお話を伺いました。

商業教育からビジネス教育への転換を

同校は、普通科高等学校で国際理解教育を特色とする、神奈川県立湯河原高等学校と、商業科・情報処理科・国際経済科を設置する神奈川県立小河原城東高等学校が再編統合され、開校しました。

社会・経済の高度化・多様化・国際化・情報化や、産業構造の変化に柔軟に対応した新しい商業教育を展開し、幅広い分野の学習希望と多様な進路希望に対応することや、社会人としての常識や、これからのビジネスに対する望ましい心構えや理念、特に職業人が持つべき倫理観・正義感を身につけ、問題発見・解決提案の能力を持ち、自立とチャレンジの精神に富んだ、創造力豊かな次世代を担う人材の育成が目的です。

生涯にわたって学び続ける力「自己教育力」の育成

「多様な希望や学習目的に応じ、自己教育力をはぐくむ教育活動の展開」「生徒の自己発見を促し、1人ひとりの適正や進路選択に柔軟に対応する教育の提供」「豊かな人間性を育成するための特別活動の活性化・ガイダンス機能の充実」の3つをコンセプトとして掲げ、教育活動に取り組まれています。

また、近藤校長は「本校では生徒たちを、型にはめるのではなく、自主・自発を尊び、1人ひとりの適性に応じて、能力を伸ばしていきたいと考えています。ビジネスの基礎的な知識と技術を学習するとともに、多様な選択科目を設置することで専門分野を深めさせ、進学して継続的に学ぶこともできる教育内容を用意しています。生徒たちには、生涯にわたって新たな知識や考え方を吸収・理解し、自らの人生に活かす力『自己教育力』を、ぜひ、高校生活で身につけてもらいたい」と話されました。

「学んでから選ぶ」2年次から5つの「系」を選択

「本校は、従来の商業高等学校とは異なり、『総合ビジネス科』の1科のみを設置しています。これまでの神奈川県内の商業高校は、高校受検の時点で商業科・情報処理科・国際経済科のいずれかを選ばなければなりませんでした。しかし、中学生の段階で、どの学科を選ぶべきかを判断させることは難しいという実情がありました。

そこで、本校は受検・入学の入口を『総合ビジネス科』のみとし、1年次は全員がビジネス(商業)科目の基礎・基本を学び、2年次からは『流通』『会計』『情報』『国際』『教養』の5つの『系』と呼ばれる、選択する科目のパターンから一つを選択して学ぶという教育課程を用意しています。

中でも『教養ビジネス系』は本校独自の教育課程です。この課程では、ビジネスの専門科目のみならず一般教養科目を深く学び、公益サービスをはじめとして、総合的知識を必要とする多様な分野で活躍できる広い視野をもった人材を育てると共に、進学のニーズに対応し、大学受験を視野に入れた教育内容を用意しています」。

生徒の実態に合わせ、弾力的にカリキュラムを編成

神奈川県立小田原総合ビジネス高等学校「5つの『系』の選択では、生徒の自身に判断させ、納得した上で進路を決めさせたいという思いから、すべての『系』で生徒の定員を設けていません。そして、『系』の中でも、将来の夢(職業)を考えながら、進学・就職のいずれにも対応できるように、自分の興味・関心、進路希望に応じた科目選択ができるようにしています」と近藤校長。

また、県内初の高校生が経営する店舗として平成16年に開店したチャレンジショップ「GESTORE おだわら」やインターンシップなどのさまざまな活動に取り組まれ、実践的な教育や地域に開かれた学校づくりを推し進めておられます。「就職も、大学進学も、また専門学校進学も、生徒1人ひとりの進路希望をしっかりと受け止めたい。また、生徒の実態に合わせ、カリキュラムも柔軟に対応していきたい」とお話しいただきました。

5つのビジネス系