授業でのICT活用

岡山県津山市立高野小学校 親と子が考える携帯メールの使い方

津山市立高野小学校 4年3組担任の渋谷 陽教諭は、同校の人権教育参観日に携帯電話の情報モラルをテーマに授業を公開されました。
携帯メールの難しさや、チェーンメールやなりすましメールなどの迷惑メールにどのように対処するべきか。子どもたちにコンピュータ上で携帯電話を疑似体験させられる『SKYMENU Pro 仮想携帯』を活用して授業が展開されました。

「仮想携帯」機能を活用して実践。参観日の授業に保護者も参加

28人中12名が携帯電話を所持。スマホも

同校が昨年度調査された子どもの携帯電話所有率は約25%。今年度、改めて渋谷教諭が4年3組の子どもと保護者にそれぞれ携帯電話の所有状況などについてアンケート調査を実施されたところ、28名中12名が携帯電話を所有していることが明らかになった。しかも、うち1名はスマートフォンだ。また、アンケート結果からは、子どもたちの興味関心は非常に高く、保護者が想定する以上に携帯電話について情報を持っていることがわかった。さらに、携帯電話でしてみたいことの上位3つ「電話」「ゲーム」「メール」は子どもも保護者も認識が合っているが、子どもは「ネットショッピング」「プロフ」「フェースブック」などにもすでに興味を持ち始めており、認識にズレが生じていることがみえてきた。

全てのタブレットPCは無線LANで接続。教員は電子黒板で「SKYMENU Pro」を操作する。

実態に併せ、モデル指導案を組み直す

このような実態から、渋谷教諭は、メールの内容に一歩踏み込んだ指導が必要と考えられた。そこで、子どもたち1人ひとりに携帯電話を疑似体験させられるツール『SKYMENU Pro 仮想携帯』と、同ツールに付属する教材セットのモデル授業「メールのせいで?」を参考に、4年3組の実態に即した授業を構想された。

渋谷教諭は「インターネットを介した文字コミュニケーションは、誤解が生じやすく、大人でも取り返しがつかなくなる場面がある。本校の4年生は純粋な子が多いが、一方で、何気ない言葉使いで相手を傷つけていることがある。子どもたちにとってもっとも身近な情報通信端末になるであろう携帯電話を疑似体験することから、その難しさを感じ、相手がどう受け取るかを考えて表現することの大切さを伝えたい」と本時のねらいを話される。

また、携帯電話に関する情報モラル指導は、家庭との連携が欠かせない。本時を同校の人権教育参観日に授業を設定され、保護者に、子どもがどのようなところで困り、一方でどのようなことを平気でやってしまうのか、その実態を共有することもねらわれた。

学習指導略案

家の部屋で携帯電話を操作している感覚

授業が始まると、渋谷教諭は仮想携帯を起動するように指示。続いて、教員機の[仮想携帯管理ツール]から子どもたちの仮想携帯に一斉にメールを送信された。子どもたちの仮想携帯には次々にメールの着信表示が表示され、教室のあちらこちらから歓声があがる。仮想携帯の例文メール「先生にメールであいさつしよう」が送られている。

「みんなは、家の部屋にいて携帯電話を触っていると思ってください。周りには誰も相談できる人はいません。今から送られてくるメールを見て、自分で考え、決め、行動してみてください」と投げかけられた。併せて保護者には「今は子どもに声をかけないでください。子どもが1人で携帯を触っていると思って観ていてください」とお願いされた。子どもたちは、思い思いに入力し、メールを送信する。

教員機の[仮想携帯管理ツール]のメールモニタリング画面には、子どもたちが送信したメールが次々と表示される。渋谷教諭は、全員が送信できたことを確認すると、今日はメールについて勉強しようと話され、教材セットの中の「給食のチョコあげパンを落とした青空君」のプリント教材を配付された。プリント教材は、給食当番の青空君が低学年の子どもとぶつかってしまい、みんなが大好きなチョコあげパンを廊下に落としてしまうというストーリー。渋谷教諭は、子どもたちと音読し、青空君が失敗して落ち込んでいる状況を思い浮かべさせた。

何気ないメールが相手を傷つける

班で青空君に送るメールを話し合い、ホワイトボードにまとめるそして、「青空君を仲のいいクラスメイトだと思って、青空くんに送るメールを考えてみよう」と4人グループで青空君に送るメールの内容を考えさせた。子どもたちはグループで集まり、青空君に送信するメールの内容を話し合う。班で考えたメールはB4のホワイトボードにまとめさせ、各班に発表させた。

全班の発表を聞いて、渋谷教諭は「実はこの中に、青空君がショックを受けそうなメールがある」と告げられ、「明日みんなにあやまろうよ」「ぼくは味方だからね」という言葉を挙げられた。

子どもたちにその理由を考えさせると「まだみんなが怒っているのではと青空君は不安に感じそう」といった発言が挙がる。

「メールは、受け取る人によって感じ方が違う。今日は班のみんなでメールの文章を考えられたが、携帯電話をもったら1人で文章を考えなければならない。メールを送るときは相手の気持ちを想像して、よく考えて書こう」と伝えられた。

こんなメール、僕は送ってないよ

教員機から事例メールを一斉送信そして「携帯を使って、もっとメールを送ってみたいですか」と尋ねると子どもたちから、「やりたい、やりたい」と声があがった。仮想携帯でメールを送りたくてたまらない様子だ。

残りの時間、『自由』にメールを送っていいと伝えられると、早速、仮想携帯でメールを交換し始めた。

渋谷教諭は、子どもたちが夢中になり、安心してメールを楽しんでいる様子を確認すると、教員機の「仮想携帯管理ツール」から一斉にメールを送信された。

送信されたのは、仮想携帯に予め用意されている「チェーンメール」や、[なりすまし]機能で渋谷教諭がクラスのA君の名前で作成した「なりすましたメール」だ。「なりすましメール」には、「今日遊ぼう」と書かれており、受信した子どもは、なりすまされたA君から送られたメールだと信じて返信。A君は、「こんなメール、僕、送っていないよ」と周りの友だちに言って回るといった姿もみられた。

「こんなメール送っていない」と説明して回るA君ここで種を明かされ、先生からいくつかおかしなメールをみんなの仮想携帯に送信したことを告げられた。そして「仮想携帯管理ツール」のモニタリング画面に表示されているメールを示しながら、チェーンメールやなりすましメールを信じて何人かの子どもが返信してしまっていることを明かされ、返信するだけで悪意のある人にメールアドレスを知られてしまう危険性を話された。

最後に「もし、誰かわからないメールやおかしいな、不安だなと思うメールが来たら、お家の人や先生にどんどん相談してください」とまとめられた。

仮想携帯で子どものリアルな反応を引き出す

「子どもに本物に近いもので体験させることで、よりリアルな声が聞けたのではないか」と渋谷教諭は本時を振り返られる。

仮想携帯を利用する以前は、映像や提示用の教材を利用した情報モラル指導を行われていたが、一斉指導の形態では、子どもたちに『~であらなくてはならない』という意識が働いてしまい、1人ひとりの子どもの素直な考えや思いを引き出すことが難しいと感じておられた。しかし、仮想携帯でコンピュータ上に1人ひとりが携帯電話を操作できる環境があることで、子どもたちは家で携帯電話を操作しているような感覚を持ち、「素」の状態で考え、判断し、行動していたといわれる。また、教員機の[モニタリング]機能で子どもたちが一体どのようなメールを交換しているのかをリアルタイムに確認でき、子どもの反応を伺いながら授業を進められたとのこと。

次時では、本時の子どもたちのメールログを教室で確認しながら、おかしなメールが届いたときにどのように行動したのか、振り返る予定だ。

「なぜ無視して進めてしまったのか、逆になぜ立ち止まって先に進まなかったのかとそのときの判断についてじっくりと振り返り、どのようなことに気を付けるべきなのか指導したい」。

保護者会で携帯との付き合わせ方を意見交換

授業後は、保護者懇談会が開かれ、本時や子どもたちの携帯電話の利用について意見を交換された。渋谷教諭は4年3組の半分近くが携帯電話を所有していること、中にはスマートフォンを持っている子どももいることを話されると、保護者からは驚きの声がもれた。そして、「迷惑メール」や「なりすましメール」について触れ「大人は自分に不利益になる情報を無視できるが、授業でご覧いただいたように、子どもは素直なゆえに反応してしまう。これから携帯電話を持たせるときには、気をつけてほしい」と話された。

保護者懇談会で保護者と意見を交換する渋谷教諭保護者からは、家庭での携帯電話の利用状況や子どもとの約束事などについて意見交換された。それらを受けて渋谷教諭は「携帯電話を居間に置くことを習慣化する」「親が子どもの携帯電話を見るのは当たり前という状況をつくる」「相談できない子どもがトラブルに巻き込まれる。何でも相談するように言い聞かせること」をポイントとして紹介され、保護者は熱心に耳を傾けられていた。

技術に振り回されず、本質を指導する

情報モラル指導は、学校でも取り組まざるを得ない喫緊の課題だ。しかし渋谷教諭は、携帯電話やタブレット端末、フェースブックなど、技術革新で次々に現れるメディアに振り回されてはならないと指摘される。

「学校は、子どもたちに『相手を思いやりながら自分を大事にすること』を教えるところだと考えている。しかし、子どもたちを取り巻く情報化社会では、さまざまな情報が一瞬で飛び回る。その中で、人を傷つけず、自分を大切にするためには、その『よさ』も『怖さ』もある程度知っておかなければならない。情報教育や情報モラル指導はそれを伝えるためにあるとも考えている。私たち教員は『自分を、人を大事にすることを伝える』という一本の筋をブレさせることなく指導に臨みたい」。

学校紹介
岡山県津山市立高野小学校

岡山県津山市立高野小学校

明治7年開校、平成24年度で創立139年を迎える同校。「自ら考え ともに伸びていく 心豊かな子どもを育てる」を教育目標に掲げ、基本的な生活習慣の定着、基礎的・基本的な学力の定着、思考力の育成などに取り組まれています。家庭・地域との連携を重視され、ボランティア活動も推進されています。

http://www.ed-tsuyama.jp/takano-es/

(2013年3月掲載)