授業でのICT活用

実践レポート

丹羽敦 教諭

個人認証環境のメリット
情報モラル指導やデータの利用・管理に効果

丹羽 敦(愛知県小牧市立光ケ丘小学校 教諭)

小牧市立光ケ丘小学校では、昨年度からICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』を活用して、子ども1人ひとりにユーザID、パスワードを付与してログオンする「個人認証環境」を構築。「個人フォルダ」も利用されています。
同校の教務主任の丹羽敦教諭に個人認証環境の構築や運用のポイントを伺いました。

(2012年8月掲載)

校内76台のPCにSKYMENU Proを導入

同校は平成23年度にコンピュータ教室を整備され、『SKYMENU Pro Ver.8』から『Ver.13』に更新された。コンピュータ教室には、40台の学習者用のデスクトップPCに加え、新たに普通教室に持ち出して利用できる可搬型コンピュータも12台整備されている。

すべての普通教室には、デスクトップPCや大型テレビ、教材提示装置が各1台ずつ設置され、いつでもICTを活用して教材を提示できる環境を整備。そのほかに図書室に2台、職員室に3台の教育用コンピュータが設置されており、これらすべてのコンピュータは教育用のネットワークに接続されている。

ID、パスワードの大切さを知らない子ども

丹羽教諭は、「校内ネットワークのより有効な活用」「情報モラル指導の充実」の観点から「ユーザ情報管理」機能で子ども1人ひとりにユーザID、パスワードを付与。「個人認証環境」を構築、運用を開始された。

特に情報モラル指導の観点では、子どもたちにSNSやゲームサイトが急速に普及しており、ユーザIDやパスワードの取り扱いに関する指導が必要といわれる。

「子どもたちは既にユーザIDやパスワードを利用しています。しかし、その重要性や扱い方に対する正しい知識を持っておらず、インターネット上の掲示板に安易に書き込んでしまったり、気軽に友だちに教えてしまい、『なりすまし』をされてトラブルに発展する事案も見受けられます。自分のユーザIDやパスワードでログオンするという、基本的な行為を子どもたちに日常的に行わせることから、情報モラルを身につけさせたいと考えています」。

「かんたんログオン」で発達段階に応じたログオン

1、2年生の「かんたんログオン」の画面例。学年・組・名前を選ぶだけでログオンできるコンピュータにログオンするには、キーボードからアルファベットや数字を入力したり、ユーザIDやパスワードを覚えておく必要があり、特に小学校低学年の子どもたちには敷居が高く感じられる。

個人認証環境の構築にあたり、子どもの発達段階に合わせてログオンに必要なユーザID入力の有無やパスワード入力の有無を柔軟に変更できる[ユーザ情報管理]機能の「かんたんログオン」に着目された。

1、2年生には、ログオン時の入力の難しさに配慮し、学年・組・名前を一覧から選んでログオン。3、4年生はローマ字入力の学習にあわせ、学年・組・名前を一覧から選び、パスワードを入力してログオン。5、6年生は学年・組を一覧から選び、ユーザID、パスワードを入力してログオンを採用された。

パスワード変更の画面パスワードについては、3、4年は入力することを習慣付けるねらいから、ユーザIDと同じ文字列のパスワードを付与し、入力することとされた。5、6年では、初期値としてユーザIDと同じ文字列を付与するが、学年最初の授業で子どもたちにパスワードを考えさせ、変更させることとされた。授業は学級担任が行い、「短いパスワードは安全ではないこと」「名前や生年月日、電話番号の下4桁など、推測されやすいパスワードは安全ではないこと」「半角英数字や記号を含むパスワードが安全であること」などパスワードを作るポイントを指導した上で、[パスワード変更]機能で子ども自身にパスワードを変更させているとのこと。

パスワードを守る必要性を伝える

「かんたんログオン」でログオンする子ども子どもたちにパスワードの管理を行わせるにあたり、「パスワードを忘れること」がもっとも懸念された。丹羽教諭は「パスワードを忘れると、ログオンができず授業に参加できないこと」や「ユーザIDやパスワードを他の人に知られると自分のデータを見られたり、改ざんされる可能性があること」など、パスワードを守る必要性を指導することを担任の先生方にお願いされている。

「重要性をきちんと指導すれば、子どもは忘れません。それでも忘れてしまう子どもはいますが、教員が『担当者』権限のユーザでログオンすれば、子どものパスワードを簡単に調べられるので問題ありません。その際は、パスワードを新しく変更することも併せて指導しています」。

「個人フォルダ」で校内どこからでもデータを引き出せる

『SKYMENU Pro』にユーザ情報を登録すると、自動的にユーザ1人ひとりに生成される「個人フォルダ」も重宝されている。

同校では、教育用のネットワークに接続されたどのコンピュータにおいても子どもが自分のユーザでログオンすれば、自分の個人フォルダを開いてデータ保存したり、引き出せる環境になっている。

例えば、子どもたちがコンピュータ教室の作業の続きを普通教室のコンピュータで行ったり、教員は教員ユーザで普通教室や職員室のコンピュータにログオンすれば、[個人/グループフォルダ管理]機能で個人フォルダに保存されている子どもの作品データを確認したり、授業でスムーズに提示できる。

個人認証環境を生かした同行のICT環境

子どものデータを管理する負担が軽減

個人フォルダを利用する以前、同校ではネットワークドライブ上に共有フォルダを作成し、例えば4年2組12番の子どもには「4212」のようにフォルダを割り当てられていた。しかし、子どもがフォルダを自由に編集できるため、誤ってほかの子どものデータを消してしまったり、フォルダを移動させてしまったりするなどのトラブルがあった。

また年度末の入学、進級、卒業に伴い、各学年の担当者が子ども1人ひとりのフォルダのバックアップをとり、それを次の学年、組、出席番号のフォルダに1つひとつデータをコピーする作業が必要で、先生方の負担となっていた。

個人フォルダの利用後は、統合型の学習支援ソフトウェアとの連携機能で子どものファイル保存の操作が円滑になり、誤操作によるファイルやフォルダの紛失が無くなった。年度末のデータ移動は、[ユーザ情報管理]機能でユーザ情報の年次更新作業とともに自動的に行われるので、手間がかからず助かっているとのこと。

個人認証環境と個人フォルダはセットで利用する

丹羽教諭は、個人フォルダを6年間継続して運用することで、子どもたちの作品が保存、蓄積され「デジタルポートフォリオ」になるといわれる。また、個人フォルダがあることで「自分のデータは自分で守る」という意識が生まれ、ユーザID・パスワードの重要性を実感させられるとのこと。「個人認証環境」と「個人フォルダ」の利用をセットで行うことで効果が上がるようだ。

グループに一台を配付し協働的な学びを

個人認証環境構築のメリットは、情報モラル指導や個人フォルダに留まらない。例えば、コンピュータ教室授業支援では操作パネルの各学習者機アイコンに、ログオンしている子どもの名前が表示されるのでひと目で状況を把握できる。[アンケート]機能では、子どもたちの回答状況が把握しやすくなったとのこと。

丹羽教諭は、今後はコンピュータ教室だけでなく、普通教室で子どもにICTを活用させたいと話される。

「本校では、全普通教室に教育用ネットワークに接続されたコンピュータや大型テレビが常設されています。[教員機活用支援]機能(ツールバー)のマーキングや拡大表示の機能と大型テレビと組み合わせて電子黒板のように活用しています。また、普通教室には無線LANの環境があり、普通教室などに持ち出して利用できる可搬型コンピュータもあります。今後はグループに1台の可搬型コンピュータを配付し、子どもたちが教え合い、学び合う協働学習などにも取り組んでいきたい」と期待を寄せられた。

学校紹介
愛知県立小牧市立光ヶ丘小学校

愛知県小牧市立光ケ丘小学校

愛知県小牧市の東北部に位置し、ニュータウンの中に立地する同校。今年度で開校25年目を迎える比較的新しい学校。校訓「きわめる子 あたたかな子 きたえる子」を指針とし、心豊かで将来たくましく生きる児童の育成に努められている。ホタルの幼虫を飼育し、同校の側に流れる清流「大山川」に放流するといった環境活動にも力を入れられている。

http://www.komaki-aic.ed.jp/hikarigaoka-e/