授業でのICT活用

実践レポート

鈴木優一 教諭

社会の出来事について討論しよう

子どもたちが運営する学級討論会

鈴木 優一(東京都江東区立亀高小学校 教諭)

東京都江東区立亀高小学校5年1組担任の鈴木優一教諭は、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加に賛成か、反対か」「自転車車道走行に賛成か、反対か」など、子どもたちにとって身近な社会の問題について調べさせ、討論で話し合う学習「社会の出来事について討論しよう」に取り組まれました。
新聞やニュース、インターネットなど、さまざまなメディアを利用して収集した情報をプレゼンテーションソフトウェアで資料にまとめ、学級討論会で意見を主張しあった総合的な学習の時間の授業をご紹介します。

(2012年2月掲載)

東京都江東区立亀高小学校の授業風景

新聞、ニュースから社会の出来事を知る

鈴木教諭は、子どもたちに社会の出来事に目を向けさせたいと考え、これまで新聞やニュース番組の話題を授業やさまざまな場面で紹介や解説をされてきた。

TPPの記事を紹介したところ、子どもからTPPへの参加に対して「賛成」「反対」の声が挙がり、鈴木教諭は話し合いの機運の高まりを感じ、単元「社会の出来事について討論しよう」を設定された。

単元は全20時。本単元の学習を通して、子どもたちが、社会の出来事の多くが自分たちの生活と関わりがあることに気づき、またそれらの出来事に対してさまざまな考え方があることを知り、自分なりの考えを持つことをねらわれる。

収集する力を基盤に、まとめ、発信する力を育む

鈴木教諭は、新聞や報道番組、インターネット などでさまざまな情報が溢れる現代において、必要な情報を集めるには、まずはメディアの特徴を知ることが必要と考えられ、単元の前半に「さまざまなメディアに出会おう(8時間)」を設定。新聞やニュースなどのさまざまなメディアに触れさせ、それぞれの特徴や情報を収集する際のメリット、デメリットをつかませた。

さらに、情報を収集する力を基盤として、子どもたちに情報活用能力を身につけさせたいと考えられ、単元の後半に「討論会をしよう(12時間)」を設定された。

鈴木教諭は、「討論会では、自分たちの主張が支持されるように、聞き手に主張したり、相手の主張を崩すために質問(反論)が求められます。常に相手を意識させて情報を発信させることで『情報発信力』を身につけさせたい。また、より説得力のある主張をするためには、裏付けとなる情報が必要となります。集めた情報の、どの部分を切り取って加工するのかを考えさせることで、『情報活用力』を身につけさせたい」と話される。

学習指導案

賛成派、反対派、司会、聞き手に別れて討論会

本時は第19時にあたり、「TPP参加へ賛成か、反対か」「自転車車道走行に賛成か、反対か」といった子どもたちにとって身近な2つの問題について議論が交わされた。

討論は、「賛成派」「反対派」のチームと「司会」「聞き手」に分かれ、子どもたちだけで進められた。

鈴木教諭は、子どもたちだけで学級討論会を運営できるように、意見を主張する際に参考となるような台本を予め作成。子どもたちに配付されている(資料1)。

TPPのテーマでは、賛成派、反対派の子どもたちが前時までに調べて、プレゼンテーションソフトウェアでまとめた発表資料を基に、それぞれの意見を交互に主張し合った。

発表は、発表する役割と教員機で発表に合わせて発表資料を操作する役割に分かれて行われた。発表資料を操作する子どもは、発表者にあわせてスライドを操作したり、強調したい部分があれば、ペンタブレットでマーキングや書き込みを行った。

各チームのスライドには新聞やインターネット、資料集などから集めた表やグラフ、写真が掲載されており、工夫が凝らされている。また、発表の際にマーキングする箇所やタイミングなども各チームで予め相談して決められている。

子ども自身で発表資料の作成から発表の操作まで

相手に資料提示を求め反論する姿も

それぞれの主張を発表した後は、相手に対して反論する内容を各チームで話し合う。

相手へ反論(質問)する内容を話し合う反論が始まると、「さっきのグラフのスライドを見せてください」など、相手側の発表スライドを提示するように要求した上で、質問を述べるシーンもあり、白熱した議論が繰り広げられた。

その間、聞き手のグループは、両者の主張を聞きながら、「討論会判定シート」に判定を記入していく(資料2)。

シートには、賛成派、反対派が「話し方を意識していたか」「資料の分かりやすさはどうか」「なるほどと思えたか」などの観点について3段階で判定を書き込めるようになっており、その合計点で客観的に判定を下せるように作られている。

双方の反論後は、再びチームで話し合い、より多くの聞き手を自分たちの主張に賛同させられるように、最後の主張に向けて作戦を練る。

アンケート機能で賛成、反対を投票

双方の最後の主張を終えると、いよいよ聞き手が賛成派か反対派、どちらに賛同するのか判定を下す。

判定には、ICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』の[アンケート]機能を利用。教員機から学習者機に判定を尋ねる設問を送信し、聞き手の子どもたちに判定を投票するように指示された。

聞き手の子どもたちは、設問が表示されている学習者機で「賛成派」「反対派」の選択肢を選び、投票していく。

教員機で子どもたちの投票が完了したことを確認すると、回答を集計し、円グラフで前方のスクリーンに提示。全員で結果を確かめた。

鈴木教諭は、集計の手軽さや「賛成派」「反対派」の割合が円グラフで色分けして表示されるので子どもが視覚的に即座に把握でき効果的と[アンケート]機能を評価される。

アンケート機能と、投票画面

分かりやすい言葉や資料で伝えよう

最後は、全員で討論会を振り返った。

「『なるほど』と思えた説明や資料、工夫などはありましたか」と子どもたちに尋ねると、「言葉が難しくて、資料が分かりにくかった」「発表が早口だった」「質問と答えの内容がずれていた」といった意見があがった。

鈴木教諭は「より多くの人の賛同を得るためには、難しい言葉ではなく、分かりやすい言葉や資料で伝えることが大事。今日の反省を生かして次のテーマに望みましょう」とまとめ、授業を終えられた。

次時は、「消費税率のアップに賛成、反対」をテーマに議論を交わされる予定とのこと。

子どもたちが主張や反論の際に参考にした台本

討論会判定シート

学校紹介
東京都江東区立亀高小学校

東京都江東区立亀高小学校

昭和52年開校。教職員や保護者・地域の方々とともに人材を育て、地域コミュニティの要として、今年度35周年を迎える。
「人権尊重の精神や豊かな人間性を培う教育を推進し、自らの課題や目標に真剣に取り組み、人間としてよりよい生き方を形成しようとする子どもの育成」を教育目標にさまざまな教育活動に取り組まれている。