授業でのICT活用

実践レポート

高橋一博 教諭

世界遺産学習、コミュニケーション能力の育成

飛鳥の「すごい」をまとめて、発信しよう!

高橋 一博(奈良県奈良市立飛鳥小学校 教諭)

奈良市立飛鳥小学校では、『豊かなコミュニケーション能力の育成~地域を教材とした学習を通して~』を研究主題に、「地域」をキーワードにさまざまな学習場面で子どもたちのコミュニケーション能力をより豊かにする学習活動に取り組まれています。
同校3年3組担任の高橋一博教諭は、自分たちが住む地域の素晴らしさに気付き、大切にしようとする心を育むことに、1年を通じて取り組まれています。
3学期は、学習のまとめとしてテレビ会議による他校との交流学習を計画。コンピュータを利用して、飛鳥小学校を紹介するための資料作りを行われた実践をご紹介します。 ご使用ソフトウェア:SKYMENU Pro

(2011年2月取材)

理科、社会科、総合で教科横断的なカリキュラムを展開

飛鳥を大事にする気持ちを育む

高橋教諭は『「地域」をテーマにした学習カリキュラムづくり』に焦点を当て、総合的な学習の時間で世界遺産学習に取り組まれている。

「飛鳥小学校の周りにある多くの世界遺産の学習を通じて、自分たちが暮らしている街にはすごい物が存在することに気付かせたい。世界遺産以外にも、昔から存在するお寺をはじめ、さまざまな建造物や飛鳥の街を支える人々などにも気付き、興味を持ち、大切にしようとする心を育みたい。子どもたちが飛鳥に育って良かったと感じられる学習にしたい」と学習活動全体のねらいを話される。

世界遺産だけでなく人、自然にも目を向けて

本学習活動の設定にあたり、教科学習からの発展を考えられた。総合的な学習の時間だけで扱わず、社会科や理科などの単元学習にも飛鳥の地域の特徴を取り入れ、教科横断的に学習を進めるカリキュラムを構想された。

検討の際、高橋教諭は子どもたちが実際に校区を歩き、人と出会うことや、友だち同士で顔を寄せ合って話し合い、紙や鉛筆を使ってまとめる活動を重視された。

具体的には、理科で校区周辺の自然を調べたり、社会科では校区周辺にある春日大社や興福寺などの世界遺産を調べたりする活動を行った。秋の遠足でも、「世界遺産を歩いて若草山に登ろう」をテーマに定め、春日山周辺の世界遺産や観音像などの文化財を巡ってきた。

さらに「飛鳥のすごい見つけ隊!」と称して、古い町並みが残る「奈良町」を探索。探索にあたっては、「奈良町」に住む人々や自然などにも目を向けさせた。

他校との交流学習を計画へ

学習を進めていく中で、「自分たちが気付いたことや学んだことを誰かに知ってもらいたい」という、子どもたちの気持ちの高まりに注目された。

本時は、その第1歩として、他校の子どもたちに飛鳥小学校のすごいところを分かりやすく紹介する資料を、デジタルカメラやコンピュータを使って新聞形式で作ることに取り組まれた授業。

「これまで、本学級では、NIE(教育に新聞を)活動を通して日々新聞に触れ、新聞の記事をスクラップしたりして、情報を得るツールの一つとして新聞を利用させてきました。子どもたちは写真、見出し、記事などをごく自然に捉え、扱えるようになってきました。そこで、伝えたいことをより分かりやすく表現するツールとしてコンピュータを利用させたいと考えました」と本時のねらいを話される。

主な学習活動の表

コンピュータで飛鳥小の「すごい」をまとめよう!

コンピュータで飛鳥小学校を紹介する資料を作る

メッセージ機能で子どもの意欲を高める

教員機で学習者機画面を確認しながら、メッセージを送信授業が始まると、高橋教諭はICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』の[ロック]機能で、全学習者機のキーボードとマウスの操作をロック。子どもたちの注意を先生に向けさせた。

そして、これまでに校内を調べ、写真を撮影してきた飛鳥小学校の「すごい」を他校の子どもたちに紹介するために資料を作ることを確認された。資料は、プレゼンテーションソフトウェアで作成し、スライド1枚程度で、写真や見出し、説明文を入れるように指示された。

子どもたちは、スライド上で写真を配置したり、見出しや説明文を何度も書き直したりして、試行錯誤して作り上げていく。

その間、机間指導と教員機の「コンピュータ教室授業支援」の操作パネル画面で子どもたちの進捗を確認された。操作パネルには、学習者機画面の一覧が表示されており、進捗状況を確かめられる。

アドバイスが必要な子どもがいれば、[メッセージ]機能で教員機からメッセージを送信。「タイトル、見出し、説明はありますか?」「もう一枚写真をいれよう」など、1人ひとりの状況に合わせたメッセージを送られた。

高橋教諭は、直接声を掛けるのでなく、敢えて[メッセージ]機能を手段として選ばれたという。

「指導と共に、画面(コンピュータ)を通じて人のメッセージが伝わることを体験させたかった。目の前にある画面が人と繋がっていることを意識させられると考えました」。

「発表ボタン」で発表者画面を一斉送信

作成した資料を発表する子ども。[発表]機能で、発表者の画面を全学習者機画面に一斉送信している。続いて、作った資料を発表し合った。高橋教諭は、発表者に対して、資料作りでこだわった部分や最も相手に伝えたいことを発表するように指示。一方、発表を聞く側には、発表後にアンケートを取ることを伝えられた。

「これは工夫されているな、これは他校のみんなに見てもらいたいな、ということを考えながら聞きましょう」と声をかけ、ワンタッチキーの「発表ボタン」で[発表]機能を実行。

すると、全ての学習者機画面中央に『発表する』と書かれたボタンが表示され、発表したい子どもは、一斉にボタンをクリック。

クリックした子どもの画面が全学習者機画面に一斉に表示された。画面が表示された子どもは、自分の座席から、作った資料について発表する。

「題名は、『あすかのすごい』です。工夫したことは写真に枠飾りを付けたことです。飛鳥小学校にある大きな杉のことを一番知ってもらいたいです」「題名は『飛鳥小学校の大きい絵』です。この絵は、昭和63年に作られた絵です。一番言いたいことは結構古い時に作られたことです」など、工夫した点や伝えたい点を発表していった。周りの子どもたちも発表を真剣に聞き入っていた。

アンケート機能話し手と聞き手の意識に変化

1人が発表を終えるごとに、[アンケート]機能でアンケートを実施。

教員機から学習者機にアンケート設問を配付された。全員の回答が集まったことを確認すると、集計結果を[画面送信]機能で全学習者機画面に送信された。画面を送信する際は、『スポット表示』を利用。『スポット表示』を利用することで、集計結果の円グラフが大きく表示され、見やすくなることに着目された。

アンケート設問画面と集計結果画面

発表した子どもは、自分の発表がどのように受け取られたのか、アンケートの結果をじっと見つめていた。

高橋教諭は、[アンケート]機能の利用にあたり、話し手(発表する子ども)と聞き手(発表を聞く子ども)の両方への効果を期待された。

「話し手側は、自分が発信したことが聞き手にどのように思われているのか気になります。集計結果はグラフでリアルタイムに反応を返せるので、次の学習活動の意欲につなげられると思いました」。

集計結果のグラフも、「スポット表示」で全学習者機画面の右端に表示アンケート設問にも配慮された。設問内容は全て子どもの意欲を引き出すように前向きな内容を考えられた。

「否定的な結果を返しても子どもの意欲につながりません。子どもに結果が直接返るので、設問内容には十分な配慮が必要です。子どもの自尊心を大事にしたい」と[アンケート]機能の活用におけるポイントを示唆いただいた。

一方、聞き手側については「子どもは友だちが発表している間でも、自分の作品が気になります。『アンケートをする』と予め伝えたことで『聞くこと』に集中させられました。また、工夫されていることや他校に紹介したい内容かどうかを考えさせながら聞くことができた」と話される。

発表を終え、高橋教諭は「他の学校のみんなに、飛鳥小の『良さ』が伝わるように仕上げていこう。見る相手のことを意識してまとめましょう」と次時の学習活動を確認し、授業を終えられた。

画面の向こうの“人”を実感させて

今後、本時で作成した資料をもとに、再び構成を練り直し、テレビ会議で交流に臨む予定。

「テレビ会議の体験を通じて、『画面の向こうにたくさんの人がいること』を実感させたい。また、情報モラルの指導において、よく『画面の向こうにいる人を意識しよう』といわれますが、それは先生や友だちなど身近な人の意見が目の前の画面に実際に反映されて、初めて実感できるものだと思います。本時は、授業を円滑に進行することと共に、『SKYMENU Pro』の[発表]機能や[アンケート]機能を通じて、子どもたちにその一端を感じさせたいと考えました。『SKYMENU Pro』のさまざまな機能が、情報の仕組みに気付くきっかけになることを願っています」。

本時の学習指導案

学校紹介
奈良県奈良市立飛鳥小学校

奈良県奈良市立飛鳥小学校

平成22年に創立137年目を迎えた伝統ある学校。多数の世界遺産と文化遺産に恵まれた飛鳥の地域に位置する。「心豊かでたくましく生きる児童の育成~飛鳥に生きる~」を教育目標に掲げ、「地域」をキーワードにさまざまな教育活動を展開されている。

http://www.naracity.ed.jp/asuka-e/