授業でのICT活用

実践レポート

近藤浩之 教諭

コンピュータを活用して実験結果を予想する

―磁石を切ったらどうなるだろう―

近藤 浩之(愛知県岡崎市立羽根小学校 教諭)

岡崎市立羽根小学校では、『伝え合い、練り上げる授業』を研究主題に掲げ、学習情報の効果的な活用や、確かな学力を伸ばすために表現力・思考力を高める授業研究を進めておられる。このほど、コンピュータを活用して、子どもたちの表現力や思考力の育成をねらった3年4組近藤浩之教諭の理科「じしゃくのふしぎをしらべよう」の授業を取材しました。 ご使用ソフトウェア:SKYMENU Pro

(2009年1月取材)

岡崎市立羽根小学校授業風景

磁石のおもしろさを伝えたい

これまでに3年4組の子どもたちは、身のまわりにある磁石を調べ、異なる極同士では引き付け合うこと、同極同士では退け合うことなどの磁石の性質について学習している。

本時は、発展的な題材として、1つの磁石を2つに切った場合の磁石の変化について、コンピュータを使って子どもたちに予想させ、それを発表してから実際に実験で確かめる授業。

近藤教諭は、本時のねらいについて「磁石を2つに切ることで、それぞれがN極、S極をもった小さい磁石になります。そのような磁石のおもしろさを伝えたい。また、これまでの学習内容に結び付けて、子どもたちに予想させたい。『なぜそのように考えるのか』という理由も考えさせたい」と話される。

画面上で切った磁石の変化を予測

まず、これまでに学習した磁石の性質をクイズ形式で振り返った。

続いて、「磁石を2つに切った場合の、磁石の変化についてしらべよう」と本時の課題を伝え、ICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』の[教材配付]機能で各学習者機に本時の課題ファイルを配付された。この課題ファイルは近藤教諭が作成されたもので、S極やN極のマークをマウスで自由に動かすことができる。

課題ファイルが届いた子どもたちは、早速N極、S極のマークを動かし、自分の考えを表していった。

子どもたちが課題に取り組んでいる間、近藤教諭は[学習者画面受信(静止画面一覧)]機能で全ての学習者機画面をスクリーンに提示して学習の進み具合を確認する。子どもたちはスクリーンを参考にしながら課題を進めていった。また、机間指導しながら自分の立てた予想について理由を考えるように呼び掛けられた。

子どもの画面を提示して実験の予想を発表

考えた予想とその理由を発表し合った。近藤教諭は子どもたちの発表がスムーズに行えるように[学習者画面受信]機能の静止画面一覧の中から、発表する子どもの画面をクリック。発表する子どもの画面をスクリーンに大きく提示させた。

子どもたちからは「N極の反対は必ずS極になる」「磁石はN極とS極に分れているから、真ん中で切るとN極、S極だけの磁石ができる」といった意見が出された。

発表後、[アンケート]機能を利用して、子どもたちに自分の意見を質問。アンケート結果は、すぐに集計され、円グラフで表示される。全員でアンケート結果を確認し、「自分の予想通りか、実験して確かめてみよう」と呼び掛け、磁石を切って実験するように指示された。

実際に磁石を切って予想を確かめる

実験を行うにあたり、[教員画面送信]機能で学習者機画面に実験の手順や注意点についてまとめたスライドを提示。子どもたちにスライドを参考にして実験を行うように呼び掛けた。

実験後、「切った磁石に棒磁石を近づけるとくっついたり、離れたりしました」「切った磁石にもN極とS極がありました」と子どもたちから実験の結果が発表された。

近藤教諭は、磁石を2つに切っても小さな磁石になることをまとめ、ディジタルコンテンツを視聴させた。視聴後は、再度[アンケート]機能で磁石を2つに切った場合の磁石の変化について質問し、学習内容の定着を図られた。アンケートの結果からは、ほぼ全ての子どもたちが事象を正確に理解していることがわかった。

コンピュータで試行錯誤して自分の考えを表現

本時におけるICTの活用や『SKYMENU Pro』の活用について伺った。

「本時では、試行錯誤が容易なコンピュータの良さを活かし、実験結果を予想させ、深く思考させたいと考えました。そのようなねらいから『SKYMENU Pro』の[教材配付]機能を利用して、各学習者機に教材を配付しました。スムーズに配付できたので、子どもたちが課題に取り組む時間を十分に確保できました。遊びの感覚で課題に取り組ませられたので、普段、言葉や文章ではうまく表現できない子どもも自分の考えを表現できていました」といわれる。

また、[アンケート]機能については「質問した結果をすぐに集計し、円グラフで表示できるので、子どもたちの理解度や意見の分布などを、意識がつながったままの状態で視覚的に提示できるところが良いです。非常におもしろい機能だと感じています。今後もさまざまな活用法を試してみたい」とお話しいただいた。

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小田哲也 教諭

使いやすいICT機器の整備と効果的な活用の推進を

小田 哲也 教諭

岡崎市の学習情報指導員として、ICT機器活用サポートや校内研修を推進しておられる小田哲也教諭にそのポイントについてお話を伺いました。

全教員にディジタルカメラを配布

本校では、ディジタルカメラが誰でも手軽に活用できるメディアであることに着目し、ディジタルカメラを全教員に配付しています。ディジタルカメラは、テレビやプロジェクタに接続して、子どもたちのノートを撮影して紹介したり、フラッシュカードのように教材を提示するなどの用途で、普段の授業の中で活用されています。

私は岡崎市の学習情報指導員として、学校のICT機器の整備も担当していますが、「確かな学力」の育成にはこのようなICT機器の活用が肝だと考えています。

私たち教員は、多忙な中で子どもたちに「確かな学力」をつけていかなければなりません。そのためには、ICT機器を効果的に活用して、反復学習による学習量の増加や、個別の指導に役立てることが必要です。全ての教員が手軽に活用できるICT機器の整備が欠かせません。

校内研修は教員のニーズを把握し短時間に

本校では、ICT機器活用に関する校内自主研修も進めています。研修は、多くの先生方が興味を持ち、気軽に参加してもらえることを考え、30分程度の短い研修を何度も実施しています。  短時間の研修で興味を持たれて、「さらに知りたい」という先生方には、そのあとの時間で納得いただけるまで何度でも説明しています。

研修は、ICT機器の使い方を説明するだけではなく、授業での効果的な活用シーンを交えてながら紹介することがポイントだと考えています。また、学校の年間スケジュールを把握し、教員のニーズに合ったタイムリーな内容や、特定のICT機器だけでなく、多種多様なICT機器に触れるような研修も行っています。

今、私たち教員は一斉授業で知識を伝達するという授業スタイルから、子どもたちに教材を見せ、そして子どもたちの考えや思いを繋げて授業を創り上げる授業スタイルに転換することが求められています。子どもが主体的にICT機器を使い、「確かな学力」や「活用する力」を身につけることで、学力に「豊かさ」が感じられるようにしたいと考えています。

学校紹介
愛知県岡崎市立羽根小学校

愛知県岡崎市立羽根小学校

昭和10年に開校。平成17年に創立70周年を迎えた。校訓「できるまでやろう」のもと「知・徳・体の調和がとれた『智』を身につけた子ども」を教育目標に掲げる。自学・交流・体験を重視し、さまざまな教育活動に取り組んでいる。

http://cms.oklab.ed.jp/el/hane/