授業でのICT活用

実践レポート

丹羽敦 教諭

Web上の情報のコピー利用から著作権を考える

丹羽 敦(愛知県小牧市立光ケ丘小学校 教諭)

平成23年度から本格実施される新学習指導要領では、各教科指導の中で情報モラル指導の実施が求められています。 小牧市立光ケ丘小学校の教務主任 丹羽敦教諭は、社会科の授業の中で情報モラル指導に取り組まれています。インターネットで調べ、まとめる活動を通じて、Webページに掲載されている情報の二次利用など、著作権について子どもたちに考えさせた授業をご紹介します。 ご使用ソフトウェア:SKYMENU Pro

(2011年2月取材)

コンピュータ教室でWeb上の情報のコピー利用について話し合う

社会科の中で情報活用能力、情報モラルを育む

同校の教務主任 丹羽敦教諭は、社会科の授業の中で情報活用能力の育成、情報モラル指導に取り組まれています。

本時は、単元「日本のあゆみ」の第一時。この単元では、京都府と奈良県を1泊2日で訪れる修学旅行の目的地の下調べを行い、調べるテーマを決定。実際に目的地に訪れ、テーマに沿って情報を収集し、修学旅行後は、集めた情報を資料にまとめて発表するという活動を計画されています。

「修学旅行は、これまで歴史の学習で学んだ、奈良時代、平安時代、明治維新などの歴史の舞台となった場所を訪れられる貴重な機会です。下調べを通じて、子どもたちの関心、意欲を高め、修学旅行での体験、見学をより有意義なものにできると考えています。また、インターネット上の写真やテキストデータをコピーして、文書作成ソフトウェアにまとめる活動から、『著作権』への配慮について考えさせたい」と本時のねらいを話される。

修学旅行先をインターネットで調べよう

まず「修学旅行の目的地について調べてみよう」と声をかけ、丹羽教諭はICT活用教育支援ソフトウェア『SKYMENU Pro』の[教員機画面送信]機能で、教員機画面を全学習者機画面に一斉に送信。全学習者機画面に旅行の行程を映し出し、東大寺や金閣寺、二条城などの目的地を全員で確かめられた。

そして、「インターネットを利用して、興味のある目的地について調べてみよう」と本時の課題を提示。インターネット検索で見つけた写真やテキストデータをコピーして文書作成ソフトウェアにまとめるように指示され、[教員機画面送信]機能でデータのコピーやペーストする手順を説明された。

Webページの情報は気軽にコピーしても大丈夫?

操作方法の説明の後、「このように簡単な操作で情報をコピーできます。でも、Webページ上の情報は勝手に利用してもよいのだろうか?」と問い掛け、[教員機画面送信]機能で全学習者機画面にビデオクリップを提示された。ビデオクリップは、主人公が、ファンである芸能人のWebページから、勝手に画像やテキストをコピーして自分のWebページに掲載してしまうというストーリー。視聴後、子どもたちからは「勝手にWebページの写真を使ってはいけない」という声があがった。

丹羽教諭は「みんなは好きなアーティストのCDを買って音楽プレイヤーにコピーしているよね?これは法律で認められています。では、なぜインターネット上の写真やテキストは勝手にコピー利用してはいけないと思うのですか?」とその理由を問い掛けた。

子どもたちからは「CDは買ったものだからいい」「ホームページの写真は買っていないから、勝手にコピー利用したらダメ」という発言があり、それを受けて「では、購入したアイドルのプロマイド写真をインターネット上に公開することはよいのですか?」と問い返し、友だちと話し合うように指示された。

自他の権利や利益に注目させて

話し合いの結果「芸能人のCDや写真を販売する人たちが損をするからダメだと思う」といった意見があがった。ここで丹羽教諭は「個人で楽しむ範囲ならば問題ありません。しかし、インターネット上に掲載するなど、不特定多数の人に公開してしまうと、CDや写真が売れなくなって損をしてしまいますね。それを防ぐために著作権という権利があります」と解説を加えられた。

そして、まとめとして著作権に関するビデオクリップを提示され、「写真などの著作物の利用には、基本的に著作者の許諾が必要であること」「研究レポート等の利用では、他の人の文章を引用できること。その際は、著者や出展などを明記すること」を確認された。

残りの時間でインターネットで調べるように指示され、教員機から[簡単Webページ閲覧]機能で、丹羽教諭自作のポータルサイトを全学習者機に送信。ポータルサイトを起点に調べ学習を進めるように指示された。

最後に、文書作成ソフトウェアのデータ保存方法について[教員機画面送信]機能で説明し、子どもたち自身に操作させて授業を終えられた。

コンピュータ教室での学習活動が充実

丹羽教諭は『SKYMENU Pro』の効果について「コンピュータ教室の授業がスムーズになりました。授業のねらいを達成するための学習活動に、より時間をかけられるようになった」といわれる。

[学習者画面受信]機能で子どもたちの進捗状況を把握特に[教員機画面送信]機能を重宝されており、お手本となる教員機画面を子どもの目の前の学習者機の画面に提示できることをメリットに感じておられる。「子どもが実際に操作する画面と同じ大きさやアイコンの配置で教員画面を表示できる。プロジェクタでの提示とは異なり、指示や説明が明確に伝わります。個別の支援には[学習者画面受信]機能が役立っています。教員機で1人ひとりの作業状況をつかめるので、つまずいている子どもを見つけて指導に入れます」とのこと。

[簡単Webページ閲覧]機能についても「教員機からボタン一つで全ての学習者機に見せたいWebページを開くことができます。URLを子どもに入力させる手間がなく。授業時間を有効に利用できるようになった」とお話しいただいた。

[簡単Webページ閲覧]機能:教員機のインターネットエクスプローラ上に表示される「URLジャンプボタン」をクリックすると、教員機で閲覧しているWebページが全学習機で開きます。

学習指導案

休み時間や放課後にコンピュータ教室の開放も:教科指導の中で情報モラル指導に取り組む

年間10時間の「情報活用授業」

本校では、総合的な学習の時間と各教科学習の時間を合わせて年間10時間は必ず情報活用の指導を行うこととしています。1、2年は生活科と各教科学習の中で行っています。

1~3年は、マウスを操作してお絵かきをしたり、キーボードの入力練習などコンピュータリテラシーを中心に指導しています。まずは、コンピュータに慣れ親しませることに重きを置いています。4~6年では、インターネット検索や、プレゼンテーション、情報モラルについて指導しています。特に情報モラルに関しては、本校の子どもの携帯電話所持率が全国平均と比較して高い傾向にあることから、高学年を中心に携帯電話の正しい使い方に焦点をあてて指導しています。

休み時間にコンピュータ教室を開放

また、本校では各普通教室や特別教室など校内各所に教育用コンピュータが設置されており、校内全体で約80台が整備されています。これらのコンピュータは、子どもたちにICTに慣れ親しませたいという考えから、休み時間や放課後に開放し、自由に利用させています。

開放するにあたり、Webフィルタリングなどを施しました。さらに教員が子どもの利用状況を把握し必要な指導や支援を行える仕組みが必要と考え、全てのコンピュータに『SKYMENU Pro』の「校内ネットワーク運用支援」を導入。職員室のコンピュータからさまざまに操作を行えるようにしました。「校内ネットワーク運用支援操作パネル」の[端末ビュー]で校内コンピュータの画面閲覧やリモート操作を行っています。また、コンピュータ教室での授業前には、[電源管理]機能で予め職員室からコンピュータ教室の学習者機の電源を一斉に入れたり、下校時には、校内のコンピュータの電源状態を確認しています。校内各所に点在するコンピュータを簡単に管理でき、大変助かっています。

校内ネットワーク運用支援操作パネルで職員室から校内80台のコンピュータを操作

まずは指導案通りに実践を

私は、4~6年の総合的な学習の時間や社会、理科の教科指導を担当し、その中で情報活用能力の育成、情報モラル指導に取り組んでいます。4年では、主にインターネット検索や情報の真贋について考えさせること、5年では、不正請求やチェーンメールなどの情報の影の部分を伝えています。6年では、5年よりさらに踏み込んで「ネットいじめ」などについて指導することとしています。

新学習指導要領では、各教科授業の中で学習活動に合わせ軽重をつけながら情報モラル指導、情報活用能力の育成に取り組む必要があります。例えば、5年の社会ではマスコミをテーマに学習する単元があります。ここでは報道される内容が各新聞社や各ニュースでどのように異なるのかを比較するような活動が考えられます。マスコミ各社がそれぞれの立場や考えに沿って情報を発信していることに気づかせ、報道されている情報は「誰かに操作されている」ということを理解させる良い機会になると考えています。

しかし、特に、情報モラル指導について多くの先生方は苦手意識を持たれているのではないでしょうか。

近頃では、ビデオ教材に指導案、ワークシートなどがセットになった情報モラル教材などが多くの学校で整備されてきています。まずは付属の指導案の通りでよいので、情報モラル指導にチャレンジすることが大事だと思います。

また、情報モラル指導は、子どもの実態に応じて指導内容やタイミングを変化させる必要があります。特に携帯電話については、子どもの所持率などに気を配りながら、指導を柔軟に変化させていくことが必要と考えています。

子どもたちが使う環境を通して育む

情報モラル指導においては、ユーザIDやパスワードの取り扱いに関する指導も重要な課題の一つと考えています。

今、子どもたちは携帯電話やコンピュータを使いこなしています。既にSNSやゲームサイトなどに会員登録し、ユーザIDやパスワードを利用しています。

しかし、その重要性や扱い方に関する知識を持たず、無用心に掲示板に書き込んだり、安易に友だちに教えてしまっているなどの現状があります。

このような内容は、授業で指導しても、なかなか理解されません。子どもたちが利用する学校環境の中で、自分自身でユーザIDやパスワードを管理することを通じて、初めて身につけさせることができると思います。

『SKYMENU Pro』の[ユーザ情報管理]機能では、簡単な操作で子どもたち1人ひとりにユーザIDやパスワードを付与できるので、今後は、個人認証環境を構築し、情報モラル指導に効果的な学習環境にしていきたいと考えています。また、ユーザの登録に合わせて自動的に作成される「個人フォルダ」も、単なるデータの保存場所としてではなく、子どもたちに「自分自身でデータ管理する」という意識を持たせて利用させたいと思います。

[ユーザ情報管理]機能のパスワード設定画面。学習者自身にパスワード変更もさせられる。

学校紹介
愛知県小牧市立光ケ丘小学校

愛知県小牧市立光ケ丘小学校

愛知県小牧市の東北部に位置し、ニュータウンの中に立地する同校。今年度で開校22年目を迎える比較的新しい学校。校訓「きわめる子 あたたかな子 きたえる子」を指針とし、心豊かで将来たくましく生きる児童の育成に努められている。ホタルの幼虫を飼育し、同校の側に流れる清流「大山川」に放流するといった環境活動にも力を入れられている。

http://www.komaki-aic.ed.jp/hikarigaoka-e/