授業でのICT活用

実践レポート

丹波信夫 教諭

情報の真偽を確かめ正しく対応する力を育む

丹波 信夫(愛知県半田市立雁宿小学校 教諭)

半田市立雁宿小学校の情報教育主任の丹波信夫教諭は、自作の情報モラル指導用コンテンツや、疑似体験教材などを用いて情報モラル指導に取り組まれています。子どもたちがインターネット上に公開されている情報の真偽について考え、判断させることを通じて、情報モラルが問われる場面で正しく対応できる力を身につけることをねらった実践をご紹介します。 ご使用ソフトウェア:SKYMENU Pro

(2011年2月取材)

丹波教諭らが作成したアニメーション教材を全員で視聴

インターネット上の情報はすべて正しいの?

「10万円払えって出た!」「電話番号を入力したら、いたずら電話がかかってきたりしないのかな?」詐称サイトなど個人情報を抜き取ることを目的にしたWebページ教材を閲覧したり、入力したりする疑似体験を通して、その危険性を実感する3年1組の子どもたち。

本時は、総合的な学習の時間に取り組まれた情報モラル指導の授業。

平成23年度から全面実施される新しい学習指導要領では情報モラルの指導が求められている。学級担任の丹波教諭は「インターネットは大変便利なツール。これまで、子どもたちは理科や社会、総合的な学習の時間などさまざまな場面でWebページを使って情報を集め、調べる経験をしている。しかし便利な反面、その利用について子どもたちが注意するべきことが多くあります」と言われる。

前時では、不適切なWebページに遭遇した場合の正しい対処法について指導された。本時では、さらに踏み込んで「Webページやメールに書かれている情報が本当に正しいのかどうかを確かめて自分で判断できること」「偽情報の発信源とならないように正しい情報発信者としての態度を身につけさせること」がねらいだ。

アニメーション教材で、子どもたちを学習課題にひきつける

まず、インターネットでホームページを見た経験や前時の学習で学んだ内容を振り返った。その後、情報モラル指導用アニメーション教材「大変だ!大地震がくるぞ!」を視聴。この教材は丹波教諭らが作成されたもので、主人公「まさお」がWebページから得た情報の真偽を確かめずにメールなどで情報を発信してしまうことで、さまざまな人に迷惑を与えてしまう、というストーリー。情報を発信する際に注意するべきことを考えさせられるように構成されている。

ストーリーの概要

視聴後、「まさおくんは地震情報を流すべきだったのでしょうか?」と子どもたちに問い掛け、グループごとで話し合い、その結果を発表するように指示。子どもたちからは、「地震が本当にくるのだったら、流していい」「地震がこなかったら、嘘を言ったことになるよ」「予言なんて信じちゃいけない」などの意見があがった。

さらに「まさおくんがとった行動に問題はなかっただろうか?」と問うと、子どもたちからは「嘘か本当かわからないのに、メールをするべきじゃない」「他のWebページも調べればよかった」など、情報の信憑性を確かめず発信してしまったまさおくんの行動の誤りを指摘する意見があがった。

丹波教諭は「Webページの情報は丸ごと信じるのではなく、他のWebページやテレビ、ラジオなども調べて、信じてもよいか確かめる必要があるね」と情報を発信する際の注意点を確かめた。

子どもたち自身に情報の信義を考えさせる

かんたんWebページ閲覧機能

続いて、教員機から[かんたんWebページ閲覧]機能でWebページを学習者機に一斉に送信された。Webページは、詐称サイトなどの個人情報を抜き取ることを目的にしたWebページを疑似体験できる教材。子どもたちに自由に閲覧させ、自らの判断でクリックや入力することを通じて、その危険性を実感させられる構成になっている。

「この疑似体験教材では、現実と同じように正しい情報と悪い情報が両方含まれています。情報の真偽を子どもたち自身に判断させたい。また、失敗経験を通じてそのページの問題点を考えさせたい」と丹波教諭。

授業の終わりでは、[アンケート]機能を利用して、これまでの学習内容について確認テストを実施。「インターネット上の情報はすべて新しい情報である」など10問の選択問題が出された。子どもたちはこれまでの授業を振り返りながら回答していく。

回答結果は、教員機で直ちに集計される。円グラフの割合で子どもたちの理解度を確認しながら、正しい回答を説明されていった。

最後に「Webページに掲載されている情報を丸ごと信じないで、何が正しい情報なのかを自分の頭で考えるようにしましょう」とまとめ、授業を終えられた。

情報モラルが問われる場面で、正しく対応できる力の育成を

本時では、アニメーション教材や疑似体験教材を指導に利用された。前者は、子どもたちを情報モラルの課題となるような場面にひきつけるため、後者は、子ども自身が考え、判断を迫られるような場面や失敗する体験をさせるためだ。

「子どもが『わかったつもり』にならないように指導することがポイント。例えば、Webページ上の情報の真偽を判断する力は、子ども自らが考え、判断し、時には失敗する経験をさせることで身につきます。『●●は良い』『××はダメ』という言葉だけの指導では、情報モラルが問われるような場面で、正しく対応できる力を身につけられない」と丹波教諭。疑似体験などを取り入れた情報モラル指導の重要性を強調された。

「SKYMENU Pro」の活用でシームレスな授業展開が可能に

本時では、『SKYMENU Pro』のさまざまな機能を利用して授業を進められた。

[かんたんWebページ閲覧]機能は、疑似体験Webページを子どもたちに閲覧させる場面で利用。丹波教諭は「これまでは子どもがWebページのURLを入力することに時間が取られていました。今は、「URLジャンプボタン」をクリックするだけで、見せたいWebページを学習者機で開けます。シームレスに授業を進められることで、子どもたちの思考の連続性を確保することができ、指導が行いやすくなった」と言われる。

[アンケート]機能は、子どもたちの理解度を図るために利用された。「子どもたちの回答結果を、すぐに子どもたちと一緒に確かめられることが魅力」と、さまざまな場面での活用を期待されている。

確認テストの質問の一部とその集計結果

さらに、個人認証環境を構築されていない同校では、[出席]機能を重宝されている。授業の始めに[出席]機能で、子どもたちに自分の名前を入力させることで、『SKYMENU Pro』の「コンピュータ教室授業支援」画面上や[アンケート]機能で、「誰が」「どのような反応をしているのか」を容易に把握できるようになり、授業をより円滑に進められているとのこと。

半田市では、昨年度に『SKYMENU Pro』が導入されたばかり。「『SKYMENU Pro』は操作が直感的で使いやすいと感じています。操作に対する反応がよく、タイムラグが少ない。コンピュータ教室での授業をより円滑に行えるようになりました。今後は、普通教室における児童のICT活用を支える仕組み作りにも期待したい」とお話しいただいた。

学習指導案

情報モラル教育のポイント:「始動のタイミング」と「子どもの実態把握」が重要

情報モラルの年間指導計画と16の学習指導案を作成

義務教育に関する基本的事項並びに直面する諸問題について研究協議を行われている愛知県義務教育問題研究協議会では、Webページ「学校と家庭でともに進める情報モラル教育」を開設しています。

Webページでは、小学校・中学年、小学校・高学年、中学校の3つの発達段階に分けて作成された「情報モラル教育の学年別指導計画」が公開されており、半田市の小中学校ではこの指導計画を参考に情報モラル指導を進めています。

16個の情報モラルに関する学習指導案とその指導で利用できる教材、ワークシートなども公開されています。学習指導案の中には、私が作成に関わったものも含まれています。

情報モラル指導のポイント

情報モラル指導を行うポイントは2つあると考えています。1つは「指導のタイミング」です。例えば、高学年では他校との交流活動や外部の人とコミュニケーションを取る機会が増加します。特に交流学習などでは、掲示板やメールを利用する場合があります。そのような場面を捕まえて、掲示板やメールの正しい利用法を指導することが理想的です。子どもたちにも切実感があり、学習したことをすぐに実践させられます。

そのほかにも、Webページを作成するような活動があれば、著作権に関する指導が考えられます。画像や文章などの複製利用など取り上げて指導するとよいでしょう。

もう1つは「子どもの実態把握」です。特に携帯電話については、子どもがトラブルに巻き込まれてからでは遅いのです。子どもの携帯電話所持率が3割を超えるような状況であれば、早急に指導が必要です。逆に、所持率が低い状況であれば、指導が響かない場合があります。

教員が子どもの携帯電話利用に気を配り、実態を正確に把握しておく必要があります。

学校、地域、家庭で連携した情報モラルの指導

本校では、これらのことを踏まえ、年間指導計画を意識しつつも、学習内容や学年、学級の実態に合わせて情報モラルの指導を推進しています。

また、先生方が情報モラル指導に取り組みやすいように、各学年で実践してほしい授業の指導案や教材をまとめたファイルを作成し、各学年の情報教育担当に配付しています。

各学年の情報教育担当者には、学年ごとで指導のタイミングを計りながら進めていただいています。先生方はさまざまな仕事に追われ大変忙しい。教員個人の裁量にまかせるのではなく、学校全体でフォローしながら組織的に取り組むことが重要です。特に子どもの携帯電話の利用に関しては、今や学校側での指導が欠かせません。最終的には家庭の責任ですが、授業参観日などを利用しながら学校、地域、家庭と連携した対応を進めています。

情報モラル教育の学年別指導計画

学校紹介
愛知県半田市立雁宿小学校

愛知県半田市立雁宿小学校

半田市の中心部に位置し、緑豊かな雁宿公園に囲まれている同校。平成23年度で創立30年を迎える。「学ぶことへの意欲に満ち、お互いの良さを認め合い、励まし合い、逞しく生き抜く児童を育成する」を教育目標に掲げ、さまざまな教育活動に取り組まれている。地域と連携した「雁宿祭り」も学校の特色の一つになっている。

http://www.kariyado-e.ed.jp/