授業でのICT活用

実践レポート

高橋一博 教諭

誰もが観たくなるような写真の説明文を書こう

―個人認証の環境がICT活用を支える―

山田 秀哉(北海道札幌市八軒小学校 教諭)

札幌市立八軒小学校では、情報教育の目標を低・中・高学年で段階的に定めており、高学年では「相手の立場を考えて行動したり情報交換したりできる」を目標の1つとしている。
同校5年は、総合的な学習の時間で、情報教育を意識した学校間交流に取り組まれています。Web上の掲示板や絵葉書を使って、遠方の学校と交流されています。伝える力の育成をねらいに、交流校へ送る写真の説明文を考える、5年3組山田秀哉教諭の授業を取材させていただきました。 ご使用ソフトウェア:SKYMENU Pro

(2009年取材)

全国12校と、ゴーヤの観察を通して交流

「ゴーヤプロジェクト」は、沖縄の小学校から送られてきたゴーヤの種を、ゴーヤの日(5月8日)に全国各地の学校で一斉に植え、その観察を通して子どもたちの相互交流することをねらったプロジェクト。

今年度は、北海道から沖縄まで全国12校の小学校が参加している。これまでWeb上の掲示板でゴーヤの生長記録を紹介し合い、絵葉書などで交流も行っている。

全国の交流校から送られてくる絵葉書の中には、手作りのものもあり、その学校から見える風景や校舎の外観などを撮影した写真とその説明が添えられていた。それを読んだ子どもたちから、自分たちの学校も紹介したいという声があがった。

子どもたちの意欲の高まりを感じ、「八軒小学校の紹介をしてはどうか」と子どもたちに投げかけ、学校紹介の取り組みが始まった。

写真を説明するための、わかりやすい文章を考える

本時では、子どもたちが撮影した学校を紹介するための写真に添える説明文を考える。

まず、山田教諭は「全国の交流している学校に八軒小学校の写真だけを送っても、わかりにくい。わかりやすくするために写真に説明を添えたいと思います。どんなことに注意して書けばよいだろうか」と子どもたちに問いかけた。

ワークシートに撮影した写真を貼り、考えた説明分を記入する子ども続けて、プロジェクタで1枚の写真を提示した。山田教諭は写真を見せながら、見てわかることは説明する必要がないことや、長すぎる説明文は読んでもらえないことを伝える。そして、説明文には「名前」「使い方」「写真ではわからないこと」の3点を入れ、文章は3行程度にまとめるように指示。さらに、写真を見たくなるような「とっておきの一言」も考え、説明文に入れることとした。

子どもたちは早速、ワークシートに自分が撮影した写真に添える説明文を考え、記入していく。山田教諭は、机間巡視をしながら「説明文が相手に伝わりやすいのか考えて書こう」と声をかけ、アドバイスを行う。

写真を拡大表示して発表

発表の様子子どもたちがワークシートに説明文を書き終えたことを確認して、山田教諭は考えた説明文を発表するように指示。ここで、教員用ノートPCから[個人/グループフォルダ管理]機能を使い、個人フォルダ内に保存してある発表者の写真データを開き、プロジェクタで映し出した。

子どもたちからは「これは八軒小学校の廊下です。ここで問題です。廊下は何メートルあるでしょうか?」と読み手に問いかける説明や、「これは札幌市で一番大きなマンションです。ここには元野球選手○○さんが住んでいるという噂があります」と読み手の興味を引く説明が発表された。

また、発表者の中には、暖かい地方の交流校のことを考え、寒い地方ならではの「ストーブ」を紹介する子どももいた。子どもたちの交流相手に対する意識は高い。

話す・聞く力の育成を通して、聞く力を育成する

本時のねらいについて山田教諭は「短い言葉でわかりやすく伝える力を身につけさせたい。伝わる文章を書く力や簡潔に話す力を身につけさせる活動を通して、聞く力を身につけさせたい」と話される。

また、子どもたちの発表については「わかりやすく説明するために、とっさに写真を指差して説明する子どもがいました。私はこういった判断や工夫は経験から生まれるものだと考えます。伝えるための技術を教えることも必要ですが、まずは子どもたちに前に立って発表する経験を多くさせたい」と述べられた。

個人フォルダから写真を読み出して発表を支援

札幌市は、子どもたち1人ひとりにユーザIDとパスワードを与え、ログオンする「個人認証」を行っている。子どもたちは個人フォルダを持ち、自らのデータを管理している。

本時は、子どもたちの発表を支援するために、教員機から[個人/グループフォルダ管理]機能を使って、子どもたちの写真が保存されている個人フォルダを開き、写真を映し出した。

山田教諭は、本時の取り組みについて「校内ネットワークや『SKYMENU Pro』が授業をベースの部分で支えてくれている」といわれる。特に、個人フォルダについては「学校のICT環境が整い、校内ネットワークにつながっているコンピュータであれば、どこからでもログオンして、簡単に個人フォルダからデータを引き出すことができます。本時のような実践が普通教室で手軽に行えました」と話された。

さらに、「作品を見せ合い、共有するような授業は子どもたちの距離が近い、普通教室などで行うことが効果的です。一方、子どもたち1人ひとりが集中して、作品を作るなどの作業を行う場合は、コンピュータ教室が有効だと考えています」とICTを有効に活用して授業場面によって教室環境を使い分けていく必要性を指摘された。

子どもたちが、日常的に自分のユーザIDとパスワードでログオン

同校では、子どもたちがユーザIDやパスワードを自分自身で管理している。山田教諭は「最初に初期パスワードを子どもたち与えますが、必ず子どもたちに新しいパスワードを考えさせ、変更させています。そうすることでパスワードに対して『自分のもの』という意識が生まれ、大切な『鍵』だと認識するようになります」といわれる。指導する際には、なりすましなどの危険性も合わせて子どもたち説明し、決して他者にパスワードを教えてはいけないことを教えておられる。

また、ログオンすると自分の名前が付いたドライブが表示される[個人/グループフォルダ]の機能や、タスクバーに自分の名前が表示される[ユーザ名表示]機能について、「子どもたちが『自分がこのコンピュータを使っている』という気持ちになり、責任を持って使おうという意識を持たせることに役立っている」と強調された。

[ユーザ名表記]機能 ログオンしたユーザ名がタスクバーに表示され、使用者を一目で把握できます。さらに、山田教諭は本時で教員機から[個人/グループフォルダ管理]機能のフォルダ管理画面を子どもたちに提示したことについて、「教員機のフォルダ管理画面をあえて子どもたちに見せることで、自分たちが『誰かに見られている』という意識を持たせたいと考えました。子どもたちに『先生は何でもお見通しだよ』と予め示しておくことも必要な指導と考えています」とお話いただいた。

他教科と連携してより深い学習を

今後の授業展開について伺った。「子どもたちが撮影した写真をスライドショーにまとめ、考えた説明文をナレーションとして加えたい。まとめたものを交流校に送り、さらに交流を深めたいですね。また、5年の社会科では暖かい地方と寒い地方の暮らし方を取り扱います。この単元と交流学習を連携して、より深い学習ができるのではと考えています」といわれる。

また、交流校の先生同士でメーリングリストを立ち上げ、今後の交流の方向性や子どもたちの日々の掲示板でのやりとりについて対応を話し合っている。「子どもたちの掲示板の書き込みを見ながら、情報モラルやネチケットの指導もしていきたい」とお話いただいた。

コンピュータ教室を休み時間に開放 ―利用できるのは「個人認証ができる人」

同校では、休み時間にコンピュータ教室を開放している。開放しているのは、中休みと昼休みの時間。コンピュータ教室を利用する子どもが非常に多いため、各休み時間毎に利用できる学年を割り当てている。

また、休み時間にコンピュータ教室を使うルールを定め、その一つを「個人認証ができる人」としている。これは、誰がコンピュータを扱っているのかを明確にすることで、子どもたちに責任をもったコンピュータの活用を促すこととともに、『SKYMENU Pro』の[ログ]機能で子どもたちの活用実態を把握することに役立っている。

「[ログ]機能で、子どもたちのコンピュータの操作履歴を把握できます。コンピュータ教室をただ開放するだけでなく、子どもたちの活用を注意深く見守り、必要に応じて随時指導しています」(山田教諭)

学校紹介
北海道札幌市八軒小学校

北海道札幌市八軒小学校

昭和42年に開校。平成19年度に開校40周年を迎えた。「豊かな心をもち、自ら創造しつづける八軒子の育成」を教育目標に掲げ、道徳教育の充実やTT指導の充実などさまざまな教育活動に取り組んでいる。

http://www.hachiken-e.sapporo-c.ed.jp/