授業でのICT活用

実践レポート

木村徳泰 教諭

新聞づくりで、資料を収集・活用・整理する力を

―コンピュータ室だからこそできる社会の授業―

木村 徳泰(神奈川県相模原市立東林小学校 教諭)

相模原市立東林小学校は、全校的にICT活用を推進しています。子どもたちが自分の体験を伝え合うためにICTは必要なツール。同校の研究主任、木村徳泰教諭のコンピュータ室での社会「武士の政治が始まる」の授業を取材しました。 ご使用ソフトウェア:SKYMENU Pro

(2007年6月取材)

コンピュータ室で行われた6年4組の「社会」子どもたちが集中する「室町新聞」づくりの授業の様子

コンテンツを使って効果的な復習と知識の定着

コンピュータ室での、6年4組の社会「武士の政治が始まる」の授業。当日の午前中に、子どもたち全員が「茶の湯」と「水墨画」を体験している。

本時の目標は、前時で体験したことや感じたことを各自が作成している「室町新聞」にまとめ、室町文化の特徴に気づくことである。

『SKYMENU Pro』の[電源]機能を使って、授業前に子どもたちのコンピュータの電源を入れておき、[ロック]機能でキーボードとマウスの操作ができなくなっている。これは、子どもたちを話に集中させるための工夫である。

はじまりのあいさつの後、木村教諭は、コンピュータ室の真ん中の空いている学習者機のキーボードを操作しながら、説明に入った。『SKYMENU Pro』の[赤外線リモコン]を使い、その場で教員機をリモコン操作し、[画面送信]機能で、教材コンテンツを全員のコンピュータ画面に送るとともに、プロジェクタを通してスクリーンにも映した。スムーズな流れに、子どもたちは授業へと引き込まれていった。

教諭は、前時までの復習として、足利義満と金閣寺、足利義政と銀閣寺、書院造、茶の湯と教材コンテンツをつぎつぎと提示しながら、子どもたちに発問していく。子どもたちの手が勢い良く挙がる。教諭と子どもたちとが一体となったスピード感ある授業が繰り広げられた。教諭は、何回も復習することで知識を定着させることをねらい、普段からICTを活用している。

コンピュータ室では、プロジェクタ投影と同時に子どもたちのコンピュータ画面にも教材コンテンツが表示されるので、スクリーンから遠い子どもでも授業に注目させられる。

作業を主とした実習では個に応じた指導が中心

体験学習の感想アンケート復習の後、『SKYMENU Pro』の[アンケート]機能を使って、前時に体験した「茶の湯」と「水墨画」について、子どもたちの感想を回収した。子どもたちは、マウスで回答を選択し、混乱なく回答ボタンを操作していた。

その後、室町時代について調べたこと、体験したことを各自がワープロソフトを使って、「室町新聞」にまとめていく作業に入った。新聞に使えそうな写真データを[教材配付]機能を使ってフォルダ単位で学習者機に配った。子どもたちは、その写真データの他に教科書やノート、学習事典などの資料を使って、思い思いに新聞をまとめていった。

[画面受信]機能で子どもの作業の様子を確認教諭は教員機で[画面受信]機能を使い、子どもの作業の様子を見ながら、操作方法についての個別の質問に答えた。また、全員に[メッセージ送信]機能を使って、質問の有無を問いかけた。落ち着いたところで、教諭は机間指導しながら、気になる子どもの支援を行った。

授業のまとめの段階に来たところで、[ロック]機能でキーボードとマウス操作をロック。雪舟の肖像画を[画面送信]機能で子どもたちのコンピュータ画面に送り、水墨画と雪舟の少年時代のエピソードを話して、授業をまとめた。ロックを解除し、[メッセージ送信]機能を使って、データの保存の指示を子どもたちに行い、授業はあっという間に終わった。

コンピュータを活用した資料の収集・活用・整理

今回の授業は「室町新聞」作りの2時間目の実習にあたる。社会科における新聞の作成について、木村教諭にお聞きした。

「室町新聞」づくりの様子「社会科では資料を効果的に活用し、社会的事象を考えることを重視しています。今回の授業は、資料の収集・活用・整理にコンピュータを活用したものです。新聞作りについては、今回のようなディジタル新聞作成の前に、アナログ新聞、つまり手書きの新聞を作らせました。3つ目として共同作業による新聞作りを予定しています」

アナログとディジタルの両方の新聞を作らせる理由は、「それぞれの特徴を体験し、自分で選べる力を育てたい」からとのこと。

茶の湯体験のアンケート結果また、「茶の湯」と「水墨画」の体験は、「歴史はどうしても事柄を表面的に覚えてしまい、体感的なものが欠けてしまうため、このような体験を重視しています」。アンケートの結果では、「よかった」「まあまあよかった」を合わせて、「茶の湯」体験が78.9%、「水墨画」体験が71.1%。この結果を見ながら、「どちらもよくなかったと答えている子どもがいますよね。こういう子どもをフォローすることも大切です。誰がどのように答えたのかと応答時間が分かるところもいいです」とICTを活用して、効果的な学習指導を行っておられる。

コンピュータ室を有効に活用

同校のコンピュータ室は全校的に使われている。各クラスが、週1回のコンピュータ室での授業が行えるように時間割に設定されている。いつも、どこかのクラスが使っており、コンピュータ室は取り合いの状態だ。低学年では、操作方法の授業が主体だが、中・高学年では、作品作りなどの作業が主体になる。

木村教諭は、クラス全員が黙々と作業する授業にならないよう、今回のように授業の最初に子どもたちを一つに集中させる導入を必ず入れるようにしている。「コンピュータ室は、子どもたち一人に一台のコンピュータがあるので、普通教室ではできない授業が行えることは魅力」と木村教諭。

他のクラスの先生方も『SKYMENU Pro』を活用されており、[ロック][リモート操作][Webページ閲覧][プリンタ制御]がよく使われている機能とのこと。

ICT活用をはかり子どもたちに伝え合う力を

同校は、平成16~18年度の3年間のフロンティアスクール推進校、平成19年度から2年間の特色ある学校づくりの指定を相模原市教育委員会から受けており、そのテーマは「ICT活用」。木村教諭は研究主任で、2週間に1回の校内研究、月に1~2回の推進委員会や研究授業で忙しい。

研究テーマは「伝え合う 創造性あふれる子ども ~ICT活用による わかる授業づくり~」。教諭に同校がめざすところをお伺いした。

「自分の思いや願い、体験したことを豊かに表現し、相手を意識しながら伝える。この伝え合うことを核にしてICTを活用していきます。先生方が各教科やさまざまな場面で日常的にICT活用を行うことで、子どもたちもICTを普通に使っていきます。一人ひとりが自分の考えや思いを進んで伝えようとすることができる子どもの育成をめざしています」

同校の「学校の情報化」推進としては、わかる授業づくりとしての「学習指導の情報化」、開かれた学校づくりとしての「学校ホームページ」、安全安心な学校づくりとしての「セキュリティポリシー」、効率的な校務処理を行う「教育事務の情報化」の4つを柱としている。

最後に学校でのICT活用では、何が大切かをお伺いした。

「ICT活用を推進するには、人、物、事の要素を欠くことができません。人は、「便利だ」「効果的だ」と思わないと何事も使おうとはしません。ICTを活用した授業も子どもがあれほど集中し、身を乗り出して考える場面に遭遇すれば「人=先生」はそのとりこになるものです。そのためには、『SKYMENU Pro』のようなシステムとともに、コーディネータの役割をする人がいかに先生方に関わるかが、ICT活用推進の肝だと思っています」

社会科 学習指導案

学校紹介
神奈川県相模原市立東林小学校

神奈川県相模原市立東林小学校

昭和41年4月1日開校、平成17年度に創立40周年を迎えた。同校は、「心も体も健康で たくましい実践力を持った子」の育成を重点教育目標とし、「よく考える子」「明るく元気な子」「仲よく協力する子」「進んで働く子」の育成をめざす。相模原市の南東部に位置し、閑静な住宅街にある27学級の学校。

http://www.sagamihara-torin-e.ed.jp/