実践レポート

小学校4年 総合的な学習の時間SKYMENU Cloud事例 友達と気づきを共有して比較
多様な視点で考えを深める [気づきメモ]から[発表ノート]へメモをコピーし分類・整理

大阪市立今里小学校の斉田 俊平 指導教諭は、動画教材の個別視聴と『SKYMENU Cloud』の[気づきメモ]を組み合わせ、児童が主体的に学ぶ授業を展開されています。総合的な学習の時間では、地球温暖化を探究テーマに設定したNHK for Schoolの動画を児童が自分のペースで視聴。得られた気づきを蓄積、共有し、考えを思考ツールで整理してまとめるまでの一連の学習を展開し、児童が主体的に取り組む姿が見られました。その実践について伺いました。(2024年1月取材)

斉田 俊平 教頭

大阪市立今里小学校
(実践時:大阪市立今里小学校 指導教諭)

考えを比較、分類、関連付ける場面で[気づきメモ]を活用

本校は、教職員25名と全校児童147名が在籍し、すべての学年が単学級という小規模校です。5年ほど前から「情報活用能力の育成」を研究テーマに掲げ、学校組織が一体となってICTの活用推進に取り組んでいます。日々の教科指導での活用をはじめ、1人1台端末の持ち帰り学習も行っており、ICTの活用が日常化しています。私は4年生の担任に加えて、研究主任、指導教諭を担っており、情報担当の先生とともに本校のICT活用をサポートしています。

本校ではすべての教員が『SKYMENU Cloud』を活用しています。[気づきメモ]はリリース後、すぐに使っており、主に自分の考えを深める過程において、他者の考えと比較、分類、関連付ける場面に効果を感じています。また、子どもたちは気づいたことを記録する場面において、さまざまな協働学習支援ツールの中から[気づきメモ]を自ら選択し、活用します。書き込んだ内容がすぐに全体に共有される一般的なチャットツールと異なり、[気づきメモ]は自分だけのメモとして残したものの中から必要なものを選択して共有できます。画面の見やすさに加えて、こういった点も子どもたちが使いやすいと感じている理由だと思います。

実践 地球温暖化に具体的な対策を考えよう!

本時の目標

  • 二酸化炭素増加の問題が、地球温暖化などの様々な地球問題と相互にかかわっていることを理解することができる
  • 地球温暖化について、世界的な様々な状況と関連付けながら、自分の行動を振り返ることができる
  • 地球温暖化を防ぐために、自ら進んで自分にできることを決め、実行しようとすることができる

本時の展開

時間 学習活動 『SKYMENU Cloud』の活用
導入
5分
  • 日本の気候について振り返る
    クラス全体に問いを投げかけ意見を交流する。
  • 地球温暖化が世界に与える影響を考える
    地球全体の環境に視点を広げて、意見を交流する。
展開①
10分
  • 「地球は放置してても育たない」の地球温暖化に関する番組の前半部分を個別視聴する
  • 友達とメモを共有し、比較検討する
  • 地球温暖化の原因について解説された部分を視聴しながら、考えや意見を[気づきメモ]に記録する。
  • 大事な考えを[グループメモ]に入れ、多様な考えに触れながら考えを整理する。
展開②
15分
  • 「地球は放置してても育たない」の地球温暖化に関する番組の後半部分を個別視聴する
  • 友達とメモを共有し、比較検討する
  • 地球温暖化の対策について解説された部分を視聴しながら、考えや意見を[気づきメモ]に記録する。
  • 他者の[気づきメモ]に評価を行い、それぞれの考えの異同を整理して、自分の考えを発展させる。
展開③
10分
  • 記録したメモを[発表ノート]にコピーし、考えを整理する
  • 思考ツールを使って比較・分類し、自分が実行する対策について考える。
まとめ
5分
  • 学習を振り返る

動画を視聴しながら気づきをメモに残す

[気づきメモ]は動画教材との相性が良いと感じています。これまで子どもたちは、大型モニターに流れる動画を見ながら、ワークシートなどに気づいたことを書き込んでいました。手元のノートと遠くのモニターの視線を行き来することで、メモするべき個所を見失い、作業に追いつけなくなることがありました。

そうした課題を解決するのが、1人1台端末と[気づきメモ]です。[気づきメモ]は、『SKYMENU Cloud』の拡張機能を用いれば、動画と[気づきメモ]を同時に表示させることができます。一つの画面の中で動画を視聴しながら、 [気づきメモ]に入力することができるので、視線を大きく動かす必要がなくなりました。写真1

動画と[気づきメモ]を同時に表示させ、動画を見ながらメモを残す
写真1動画と[気づきメモ]を同時に表示させ、動画を見ながらメモを残す
「地球は放置してても育たない ~放置しないで!地球温暖化~」 https://www.nhk.or.jp/school/sougou/houchi/

「地球温暖化」の問題を動画から読み取る

動画と[気づきメモ]を組み合わせた総合的な学習での実践をご紹介します。本時で活用した動画は、NHK for Schoolの「地球は放置してても育たない」というSDGsをテーマにした番組です。私は番組委員を務めており、SDGsの各目標に沿った内容で番組が展開され、授業でSDGsを扱うきっかけにできる番組です。その中から本時では「地球温暖化」を探究テーマに設定する15分の動画を取り上げました。動画は地球温暖化をテーマに探究プロセス(課題設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現)に沿って、分かりやすく解説する内容になっています。

総合的な学習の時間(文部科学省 2018)では、「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する」ことが重要です。そして、SDGsの目標と現在の問題を結び付け、「自分事として捉える」ことがポイントとなります。そうしたことを踏まえて、本時の目標を設定しました。

気候の変化について全体で考える

本時ではまず導入として、日本の気候の変化について感じることを全体に問いかけると、「暑すぎる」「秋がなくなった」などの意見が出てきました。その後、「じゃあ、世界ではどうかな?」と世界に意識を向けることで、地球規模で起きている状況を把握し、緊急性の高い課題であることを理解しました。「地球温暖化の具体的な対策について話し合って、自分にできることを考えよう」と、本時の学習への興味や関心を高め、次の展開へとつなげました。

動画から得た気づきをメモして、全体で共有

学習の見通しを立てた子どもたちは、ヘッドホンをつけ、まずは動画の前半部分をそれぞれに視聴します。前半は温暖化の影響や原因などについて学べる内容で、子どもは動画を視聴しながら気づきを入力したり、図をスクリーンショットして切り取ったりします。その間、私は子どものメモを確認しながら、いろいろな見方や考えがある気づきに、「いいね」をつけたり、コメントを残したりしました。

個人で残したメモの中から、大事だと思う考えを[グループメモ]に入れることで、クラス全員でメモを共有することができます。メモの共有により、それぞれの考えの違いや特徴を確認し合いながら、温暖化の原因についての自分の考えを振り返り、考えを深めることができます。

このとき[グループメモ]で共有された友達のメモに「いいね」をつけて他者評価を行うことで、正確性が高くなったり、他者の意見を積極的に取り入れようとします。

その後、地球温暖化の具体的な対策について解説された後半部分の動画を視聴。先ほどと同様に、子どもたちはそれぞれにメモを残し、[グループメモ]に大事だと思うメモを入れた上で、全体で考えを発表して共有し、比較検討しました。[気づきメモ]によって、手を挙げて発言する子の意見だけでなく、すべての子どもたちの考えを通じて、さまざまな視点や考えが存在することに気づき、その特徴を捉えることができます。

[グループメモ]と全体発表で考えを共有・整理
▲ 個人で残したメモの中から大事だと思う考えを[グループメモ]で共有する
▲ [グループメモ]を確認した後、考えを発表する

[発表ノート]の思考ツールで分類・整理

[グループメモ]に残したメモは、[発表ノート]にコピーできます。子どもたちにはあらかじめ、座標軸の思考ツールを[発表ノート]で配付しています。座標軸は、縦軸に「自分の課題(自分事)」「みんなの課題」、横軸に「未だ」「今すぐ」と設定しました。この座標軸で整理させることで「自我関与」と「時間」の2軸で捉え、目標の一つである「自分事」にすることを目指しました。

[グループメモ]を使って全体で共有したメモの中から、子どもたちはそれぞれに大事だと思うメモを[発表ノート]へ移し、座標軸に分類して整理しました図1。このとき、[発表ノート]の[グループワーク]機能を活用することで、子どもたちは作業状況を互いに確認し合うことができます。整理の仕方に迷う子は、友達がどんな分類をしているのかチェックしたり、比較して自分のノートに生かそうと他者参照する姿が見られました。

『SKYMENU Cloud』では、残したメモをシームレスに[発表ノート]に移行できるため、再度ワークシートなどに書き直す必要がありません。その結果、全体で話し合ったり、思考ツールで考えを整理したりする時間を十分に確保することができました。その後、思考ツールで分類・整理した後、自分にできる温暖化対策について発表しました。

図1気づきを[発表ノート]の座標軸で分類・整理
気づきを[発表ノート]の座標軸で分類・整理

自分にできる温暖化対策を考える姿も

子どもたちが提出した[発表ノート]を授業後に確認すると、ほとんどの子が横軸の「今すぐ」と縦軸の「自分の課題(自分事)」の間にたくさんの付箋を置いていました。そして、動画の内容から得た気づきをさらに発展させ、自分にできる温暖化対策を考えて記述していたのです。

[気づきメモ]は、動画のスクリーンショットをメモに残すことができます。さらに[グループメモ]では、共有された友達のメモを自分の[発表ノート]にコピーすることもできるため、友達のメモも使いながら思考ツールで整理することができていました。

考えの共有や「いいね」で情報整理がスムーズに

本時を通して、より活発な思考活動を促すために、全体で考えを整理する時間の大切さを実感しています。以前、同様のケースで実践を行った際は、全体で考えを整理する時間を設けませんでした。そのため、子どもたちは情報の取捨選択ができず、たくさんのメモを[発表ノート]に移して、思考ツールで整理し切れなかったというケースがありました。子どもたちの発達段階に合わせて状況を判断することが重要です。

また、「いいね」の活用も大切です。本時では「いいね」をつける基準として、本時の目標に沿っているかどうかを意識しました。[グループメモ]では友達同士でも「いいね」をつけることができます。「いいね」がついているメモを優先的に[発表ノート]に移していくことでも、情報を整理しやすくなっていると思います。

▲ [発表ノート]の思考ツールで整理した内容を全体で共有

学習を自ら調整する場面を作っていく

動画と[気づきメモ]を組み合わせることで、子どもたちは探究的態度をもって、能動的に取り組むだけでなく、それぞれに巻き戻して見返したり、字幕を表示させたりすることで、学習の個性化の実現につながっていることも実感しています。また、[気づきメモ]と[発表ノート]の両方を活用することで、子どもの思考を止めることなくスムーズに考えを整理することができました。

令和の日本型学校教育の構築を目指す上で、これからの学習はICT機器の有無に関わらず、学習者主体の自律的な学びが求められていくと考えています。実現に向けては、子ども自身が計画を立て、学習方法を選択し、振り返りをして次に生かすというプロセスを繰り返すことで「学び方」を身につけ、子どもたちは将来にわたって学び続けることが重要です。

とはいえ、いきなり学習計画を立てて、学習方法を選択できるようになるわけではありません。スモールステップで取り組むことが大切です。本時では授業の冒頭で本時の目標とともに学習展開を示し、それを達成するために、自分のペースで動画を見返したり、友達のノートと比較して考えを深めたりと、自ら学びを調整していく場面を意識して指導しました。このような学びの経験を積み重ね、徐々に発展させることで、子どもたちが学びを自己調整する力を育んでいきたいです。

(2024年4月掲載)