実践レポート
小学校6年 体育児童1人1台の活用 1人1台 × SKYMENU Cloud

児童が自ら発信する力を育む

[グループフォルダ][電子連絡板]で、児童が発信しやすい環境をつくる

熊本県菊陽町立菊陽中部小学校では、『SKYMENU Cloud』の[グループフォルダ]や[電子連絡板]が、教員と児童との情報共有のツールとして日常的に活用されています。児童が1人1台端末を使って、自ら情報を確認、入手したり、発信したりすることが当たり前の姿になっています。同校の情報主任である鳩野 明日香 教諭にお話を伺いました。(2023年7月取材)

鳩野 明日香 教諭

熊本県菊陽町立菊陽中部小学校

「発信する力」を高め、情報社会を主体的に生きる児童を育む

本校は、熊本県の中央部に位置する菊陽町にある学校です。本町は、半導体関連企業が多く立地し、最近では世界的大手の半導体メーカーの進出が決まったことで、人口が増加傾向にあります。本校の児童数も年々増加しており、現在は31学級、児童数808名の大規模校になっています。

1人1台端末の活用を積極的に進めており、端末の持ち帰りをはじめ、授業や授業外での端末活用が日常の姿になっています。例えば[電子連絡板]については、コロナ禍で端末の持ち帰りを始めたタイミングで「紙の連絡帳」に代わる連絡手段として運用を開始し、すでに全学年で活用が定着しています。各学級や学年、教科、教職員用、出欠連絡用などさまざまな[電子連絡板]が作られており、児童が[電子連絡板]に自らアクセスして情報を確認することが当たり前になっています図1

図1 [電子連絡板]が校内の連絡手段として定着

▲学年、組ごと、教科ごと、さらには委員会やクラブ活動、教職員の情報共有など、さまざまな用途で運用されている

そうしたなかで、今年度の情報教育の目標を「情報活用能力を身につけ、情報社会を主体的に生きる児童の育成」としました。情報活用能力の育成はもはや必須のことですので、今年度は特に児童が主体となって「発信する力」を育成することに注力をしています。

毎週木曜日朝の「e中部タイム」で、児童のICT活用スキルを底上げ

情報活用能力の育成にあたり、重要な役割を果たしているのが毎週木曜日の朝に15分間実施している「e中部タイム」です。令和3年度からスタートしており、ある程度系統立ったカリキュラムで指導することで、全校児童のICTスキルの向上や底上げを図り、タブレット端末を活用した授業につなげることを意図しています。

具体的な指導内容は、表1のとおりです。タブレット端末を使用する際のきまりから始まり、例えば低学年(1~3年生)では『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]に入力して提出する方法や[電子連絡板]に書かれている情報を確認する方法、タイピングソフトの活用、「Microsoft Forms」で作成したアンケートに答えるといった、基本的な内容に取り組みます。

表1 朝15分の「e中部タイム」で教員も児童もスキルアップ

高学年 期日 内容
1 5月18日 タブレットのきまりを覚えよう
2 6月1日 アンケート(フォームズ)に答えよう(4・6年・5-2・5-4)
モバイルWi-Fiルーターにつなげよう(5-1・5-3)
3 6月8日 アンケート(フォームズ)に答えよう(5-1・5-3)
グループフォルダを使ってみよう(4・6年)
モバイルWi-Fiルーターにつなげよう(5-2・5-4)
4 6月22日 グループフォルダを使ってみよう(5年)
発表ノートに写真を貼り付けて提出しよう(6年)
発表ノートに写真と動画を貼り付けて提出しよう(4-3・4-4)
モバイル Wi-Fiルーターにつなげよう(4-1・4-2)
5 6月29日 発表ノートに動画を貼り付けて提出しよう(6年)
発表ノートに写真と動画を貼り付けて提出しよう(5年・4-1・4-2)
モバイルWi-Fiルーターにつなげよう(4-3・4-4)
6 7月6日 グループワークを使ってみよう
※「e中部タイム」のカリキュラム(高学年のみ抜粋)

高学年(4~6年生)では、[発表ノート]に写真や動画を挿入して提出するといった内容から、校外学習などでも端末を活用できるようにモバイルWi-Fiルータへの接続の仕方なども習得します。ファイル共有などに役立つ『SKYMENU Cloud』の[グループフォルダ]や「Microsoft Forms」でのアンケートフォームの作り方・活用の仕方なども学びます。

なお「e中部タイム」は、各学級担任が実施するため、教員自身がスキルアップする機会にもなっています。

[グループフォルダ]で、児童が情報を発信しやすい環境をつくる

冒頭でも述べましたが、今年度は特に児童が主体となって「発信する力」を育成することに注力しています。そのため、児童が主体的に情報を確認したり、発信したりできる学習環境を整えることを大切にしています。

そこで今年度は、すでに情報共有のツールとして定着している[電子連絡板]に加えて、新たに[グループフォルダ]の運用をスタートさせています。

[グループフォルダ]は、学年や学級で写真や動画、さまざまなファイルを共有する上で役立つツールです。昨年度までは、主に教科担任制をとっている5、6学年を中心に運用していました。各教科で[グループフォルダ]を作成しており、私が担当していた体育では、授業の参考になる動画や資料を保存していました。あらかじめ教員が動画や資料を保存しておけば、あとは児童が必要なタイミングで確認できるので、教員と児童の双方に活用メリットがありました。こうした手応えから、今年度からは4学年を新たに[グループフォルダ]の運用の対象に加えることにしました。「e中部タイム」のカリキュラムも更新し、活用の定着を図っています。

係活動や委員会活動などで、児童のファイル作成や発信が活発に

私が担任している6年2組では、すでに[グループフォルダ]や[電子連絡板]の活用が当たり前になっており、さまざまな教科の授業をはじめ、学級の日常の中に浸透しています。

例えば「6年2組」の[グループフォルダ]は、会社(係)活動で活用されています。学級の日々の様子をタブレット端末の[カメラ]などで記録するアルバム会社(係)の児童は、紹介したい写真をフォルダに毎日アップロードしています。毎週末の帰りの会で写真を電子黒板に提示して紹介してもらいます。ほかにも、学級の友だちを表彰する会社(係)の子は、Wordで作成した表彰状のファイルを保存。印刷は教員が行うことになっているので、児童から「印刷してほしい」と依頼されます。

学級でお楽しみ会を行う際も役立ちました。お楽しみ会用の[グループフォルダ]を作成しておき、お楽しみ会で出したいクイズの問題やイベントに必要な動画や写真のファイル、[発表ノート]で作成したスライドなどを保存してもらうのです。必要なデータがフォルダに集まっているので、当日はテンポよく進められました。

[グループフォルダ]の活用は、学級内にとどまりません。異学年で取り組む委員会活動などでも活用が広がっています。例えば学校のWebサイトを更新する情報委員会では、情報委員会の児童が、Webサイトを更新するネタを考え、必要な写真やテキストなどを準備することになっています。児童は情報委員会の[グループフォルダ]に素材を保存してくれるので、教員はその内容を確認した上で、学校のWebサイトを更新しています。さまざまな場面で、さまざまなファイルを簡単に交換できるのが[グループフォルダ]の良さです。

児童が作成したアンケートフォームのURLを[電子連絡板]で共有

日々の連絡事項を共有する[電子連絡板]も、今では児童の情報発信手段の一つになっています。先日、児童にアンケートフォームの作り方を伝えたところ、「自分たちの会社(係)の活動について、みんながどのように感じているのかを知りたい」「みんなにアンケートを取って、その回答から次の活動を考えたい」といって、それぞれにアンケートフォームを作成していました。そのアンケートフォームのURLを、私が学級の[電子連絡板]にアップロードして、みんなに入力をしてもらいました。

ほかには、タイピングスキルの向上をめざして、児童がアンケートフォームでタイピングの課題を作成し、[電子連絡板]でURLを共有。みんなでタイピングの課題に取り組むという活動もあります図2

図2 児童が作成した問題を[電子連絡板]で共有し、タイピング大会

▲児童がアンケートフォームで作成したタイピングの問題。鳩野先生が学級の[電子連絡板]で公開して共有している

[グループフォルダ][電子連絡板]によって、児童の「やってみたい」という意欲が高まり、主体的に物事に取り組んで自ら発信しようとする姿がみられています。先ほど述べた情報教育の目標にもあるように、これからの子どもたちは、さまざまな情報を取捨選択する力だけでなく、責任を持って自分の考えを発信する力が求められます。私たち教員は、そのために必要な学習環境を整えることで、児童に自ら発信することをたくさん経験させてあげたいと考えています。

[発表ノート]で評価を効率化 個別から協働への移行もスムーズに

このようなお話をすると、「私がICTに詳しいから取り組めている」と思われるかもしれません。でも決してそのようなことはなくて、ICT支援員の方に相談して、協力を得ながら、ここまで活用を進めることができました。

そして、ICTに堪能ではないからこそ、授業を考える際には[発表ノート]と「紙」のどちらを使えば、教員や児童にメリットがあるだろうかと考えて、選択をしてきました。その結果、『SKYMENU Cloud』を使った方が指示が通りやすい、評価の場面で効率的になると判断できることが多く、活用が日常化していきました。いつの間にか『SKYMENU Cloud』がなくてはならないツールになっていたという感覚です。

特に評価に関しては、「もう[発表ノート]がない紙の時代には戻れない」と感じるほど、大きなメリットがあると思っています。例えば、体育の跳び箱など技能に関する評価の際、これまでは児童に跳び箱の後ろに並んでもらい、1人ずつ跳び箱を跳んで技を見せてもらっていました。しかし、40人の児童を一度の演技で評価するのは容易なことではありません。

そこで役立ったのが[発表ノート]です。まず、児童同士でお互いの演技の様子を動画撮影させ、[発表ノート]に挿入。自分の動きを確認しながら練習に取り組ませました。さらに技能を評価するタイミングでは、自分が一番良くできた演技の動画を[発表ノート]に挿入させ、技の改善点なども入力して提出させました。教員は[提出箱]を確認すれば、いつでも何度でも技を確認して評価できるので、評価の取り組み方が大きく変わりました。児童の提出の有無もひと目で分かるので、チェックする時間も短縮され、効率化されています図3

図3 動画を挿入した振り返りシート。[発表ノート]で評価が効率的に

もちろん効率の良さや便利さだけではありません。個別の学習から協働的な学習へと、授業中にスムーズに移行できる点も『SKYMENU Cloud』を活用する理由の一つです。[グループワーク]機能は、グループの番号を選択するだけで簡単にグループ化してつながれますし、[提出箱]は「学習者どうしで提出物を閲覧できる」にチェックを入れるだけで、児童がお互いの[発表ノート]を自由に閲覧できます。『SKYMENU Cloud』は、児童に考えを出し合わせたり、お互いの考えの違いに気づかせたりする場面で、とても有効なツールだと思います。

6年生の情報活用の姿から育成のイメージを教員間で共有する

今後、情報活用能力のさらなる育成にあたっては、「e中部タイム」のカリキュラムをより系統立てた内容に見直しを進め、全学年、全教室で足並みをそろえた指導を実現したいと考えています。

そのためにも大切にしたいのは、最高学年である6年生の情報活用能力の育成です。6年生の情報活用の姿を見ることで、下学年の児童が目標を意識できますし、「6年生までに、ここまでの力を身に付けさせなければならない」という育成のイメージを、教員間でも共有できます。6年生の担任、そして情報担当として、こうしたこだわりを持って取り組んでいきたいと思います。

(2023年11月掲載)