実践レポート
中学1年 道徳 / 数学 SKYMENU Cloud事例

『SKYMENU Cloud』の活用による情報活用能力の育成

長島 憲宏 茨城県土浦市立土浦第五中学校 教諭

長島 憲宏教諭

茨城県土浦市立土浦第五中学校

はじめに

本校で令和4年5月に情報活用能力についてのアンケートを実施したところ(全校生徒402人対象)、「タブレットを使用して情報を取捨選択できる」「タブレットを使って、自分と友達の意見を比較することができる」という項目において、「できる」と答えた生徒は、50%前後であり、半数程度の生徒が情報の活用に課題を感じていた。そこで、生徒の実態に合わせて、教科毎のねらいを達成するために必要な情報活用能力に関する重点項目を決め、ICTを活用した実践を構想した。本稿では、その取り組みをレポートする。

中学1年・道徳科「権利と義務ってどっちが大切?」[ポジショニング]で考えを比較し、深める

中学校第1学年道徳科の授業では、「権利と義務の関係を多面的・多角的に捉え、集団の一員であることを自覚し自分の考えを正しく主張するとともに主体的に義務を果たそうとする心情を育てる」ことを本時の目標として、情報活用能力のうち、「友達の意見と自分の意見を比較することで、生徒一人一人の考えを深めさせる」ことを重点的に実践を行った。

[ポジショニング]で自分の「立ち位置」と「考え」を可視化

本時は、体育祭において、足が速いA君を強引に推薦する学級と、勉強を優先したいため出たくないと言うA君のどちらを支持するか「権利と義務」について考える授業である。

まず、どちらを支持するか問いかけ、自分の立場を[ポジショニング]機能に入力させ、全体がどのように考えているかを可視化した。すると、A君を支持する人と、学級の皆を支持する人が半分に割れた。

そこで、「もし自分がA君だったらどうする?」等の質問をして、その都度自分の立場を修正・入力させた。また、授業終わりにも同じ質問をして、どのように思考が変容しているのかを確認した。すると、学級を支持する人が減り、A君を支持する人が増えていることが分かった図1

図1授業の開始時と終了時のポジション変化

多様な他者の意見と自分の意見を比較し、自分の考えを再構築

授業後のアンケートでは、「自分の意見と友達の意見を比較することで考えが深まった」と答えた生徒が34人中30人いた。これは、多様な他者の意見と自分の意見を比較でき、それらを参考にして、自分の考えを再構築した結果と考える。その要因として、[ポジショニング]機能を使うことで瞬時に全体の意見を可視化できたこと、変容を見ることができたことが、大きく影響していたと考える。

中学1年・数学科「文字と式」[発表ノート]で解法を整理・比較する

数学科では、「マグネットの個数の効率の良い求め方を考えることができる」ことを本時の目標に、情報活用能力のうち「友達の意見と自分の意見を比較し、検討することで、情報を整理・比較する力を育成する」ことを重点的に実践した。今回の授業では、[発表ノート]とプリントの両方を活用し、正三角形の形に並んでいるマグネットの個数を様々な方法で求め、自分が効率の良いと思う求め方はどれかを考える活動を行った。

友達の[発表ノート]を閲覧し、自分とは異なる求め方に気づく

まず、「正三角形の1辺に並んでいるマグネットの個数が、100個だったら何個になるのだろうか?」と問いかけ課題を確認した。解法を直接プリントに書き込んでから写真を撮影して[発表ノート]に取り込む方法と、タブレット上に直接書く方法のどちらでも可ということにした図2。その後、他とは違う方法で考えている生徒1人の考え方を画面上に映して紹介した図3。その際、解答を映すのではなく、マグネットの個数を求めるための囲み方のみ映し出し「この囲み方だったら個数はどのようになるかな?」と全体に問いかけ、自分とは違う考え方で求めることができるよう促した。

授業の終盤では、「SKYMENU Cloud」上で他の友達の求め方を見ることができるように設定し、自分とは違う考え方や気づいたことをプリントに書き留めるよう指示をした図4。さらに、気になる求め方や、端末からでは分かりづらい求め方を見つけた際には、直接友達のところに行き、互いに教え合う時間を設けた。最後に、教わった考え方や自分の考え方の中から1番分かりやすく、効率良く求められる方法について考えさせた。

図2(個別)生徒がまとめた[発表ノート]。写真も使って説明
図3(一斉)他とは違う考えの生徒の画面を電子黒板に投影して共有
図4(個別・協働)[提出箱]を閲覧し、友達と自分の意見を比較して考える

自分と友達の意見を比較、検討することで、情報を整理・比較する力も向上

文字を使って個数を求めるという課題は、苦手な生徒が多い分野であったが、授業後のアンケートで「マグネットの個数の求め方が分かった」と答えた生徒が112人中100人いた。囲み方を全体で共有したことや友達の考えを、端末を用いて自分のタイミングで見ることができた成果だと考えられる。また、端末上でいくつかの考え方を同時に見ながら、どの方法が良いかを比較している生徒が何人もいた。さらに、友達の考えを参考にし、本当にその求め方は合っているのかと具体的な数字で確認している生徒もいた。これらのことから、情報を収集し、自分と友達の意見を比較し、検討することで、情報を整理・比較する力が向上したと考えられる。

「情報を取捨選択できる」「友達の意見を取り入れられる」
生徒が情報活用能力の向上を実感

図5実践前5月と実践後12月に実施した生徒へのアンケートの結果比較

実践前の5月と実践後の12月に実施した生徒へのアンケート結果から、「タブレットを使用して情報を取捨選択できる」という項目で、できると回答した生徒の割合は44%から58%と14%向上した。また、「タブレットを使って、自分と友達の意見を比較することができる」という項目では、できると回答した生徒の割合は51%から68%と17%向上した図5。実際の授業の様子でも、友達の意見をただ見るのではなく、自分では思いつかなかった意見や大切だと思った意見をノートに書き留めた上で、改めて自分の考えを再構築している生徒が増えた。

また、インターネットで情報を集める際には、情報をそのままコピーするのではなく、目的に合った情報を自分の言葉でまとめる生徒や、イラストを使う際には、見やすさや分かりやすさなどを考えながら情報を収集し使用している生徒が増えた。ICTを活用し自分の意見と友達の意見を比較する活動や、2つの資料を見比べて違いを検討する活動を通して、生徒の情報を整理・比較する力が向上したと考えられる。これらの学習を通して、情報を整理・比較する力が身につくことで、情報の溢れた社会でも、自分が求めている正しい情報を自分で見つけ出し、誤った情報に左右されずに生活していくことができる生徒を育成できるのではないかと考える。

(2023年5月掲載)