実践レポート
小学校6年 理科 SKYMENU Cloud事例

班の考察を学級全体で共有し、妥当性の検討

[グループワーク]による考察の共有で、科学的根拠に基づいた話し合いへ
桑原 有輝 熊本県天草市立河浦小学校 教諭

桑原 有輝教諭

熊本県天草市立河浦小学校

熊本県天草市立河浦小学校の桑原 有輝 教諭は、班から学級全体で意見を交流する活動に『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]や[グループワーク]を取り入れて実践されています。また「予想」「実験」「結果」「考察」という理科の一連の学習展開のなかで[発表ノート]を活用し、科学的根拠を基に伝え合い、分かる実感を得られる授業の実現をめざされています。桑原教諭の理科の授業を取材するとともに、お話を伺いました。

「予想」「実験」「結果」「考察」
理科の一連の学習活動に[発表ノート]を活用

本校では、今年度の校内研修テーマを「自らの学びを見つめ、主体的に学び続ける児童の育成~伝え合い、つながりを大切にし、分かる喜びを実感する授業づくりを目指して」と設定しています。1・2年生はペアトークを中心に、3・4年生は班での話し合い、5・6年生は班を超えて、学級全体で伝え合う活動の充実を図っています。

私が担当する6年理科では、各班で実験、観察した結果や考察に、ワールドカフェ方式の交流を取り入れ、学級全体でその妥当性を検討しています。各班で考察をまとめたり、ほかの班と意見交流をしたりする際に、1人1台端末や『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]、[グループワーク]などの機能を役立てています。

[発表ノート]の活用は、交流の場面だけではありません。「予想」「実験」「結果」「考察」という、理科の一連の学習活動のなかでも活用しています。[発表ノート]に学びを記録していくことで、児童が伝え合うための資料が簡単にできますし、根拠を示しながら伝え合うことで、分かる実感を得られる学びにつながると感じています。6年理科「植物の成長と水の関わり」の実践を基にお話しします。

実践6年生 理科 「植物の成長と水の関わり」

本時のねらい

植物の体のつくりと体内の水などの行方について、予想や仮説を基に実験、観察を行い、根から吸い上げられた水は主に葉から蒸散により排出されることを理解することができる。

学習指導案

予想実験結果考察理科の一連の学習活動に[発表ノート]を活用

予想を共有する

[提出箱]に[提出]された友だちの[発表ノート]を閲覧し、学級全体で予想を共有。多様な考えに触れる

個で実験結果をまとめる

ホウセンカに被せられたビニール袋の様子を観察し、[発表ノート]に記録。写真とテキストでまとめる

班内で実験結果を整理、考察

[グループワーク]を使って、班内で実験結果を整理。1つのページに班の考察をまとめる

自班の考察を示して、他班と交流

班でまとめた考察のページを示しながら、ほかの班で説明。学級全体で交流する

前時に立てた予想を学級全体で共有する

本単元では、根や茎および葉には、水の通り道があり、根から吸い上げられた水は主に葉から蒸散により排出されることを学びます。

前時は、「葉をつけたままのホウセンカ」と「葉を取り除いたホウセンカ」にビニール袋を被せて時間を置くと、一体どのようになるのかを児童と予想しました。予想は、[発表ノート]にまとめ、[提出]させました。

本時は、提出された予想を学級全体で共有するところからスタートしました。まず、教員機の[提出箱]にある「学習者どうしで提出物を閲覧できる」にチェックを入れ、学級全員の[発表ノート]を閲覧できるように設定します。すると、友だちが提出した[発表ノート]を自由に閲覧できるようになります。1つしか予想が思い浮かばなかった児童は、「こんなにたくさんの予想があるんだ」と呟き、興味深そうに閲覧していました。

個で予想を確認した後は、教室前方のスクリーンに児童の予想をいくつか映し出し、学級全体で予想を共有します。児童一人ひとりの予想を視覚的に分かりやすく、しかも効率的に共有できます。GIGAスクール構想以前と比べると、導入場面の指導が充実しています。

[発表ノート]に結果と考察をまとめ、班ごとに[グループワーク]で話し合う

予想を交流した後は、班ごとにホウセンカに被せたビニール袋の様子を確かめます。

本単元では、単元の最初に、私から学習の流れに合わせて作成した[発表ノート]を[配付]していました。児童は配付された[発表ノート]にある「葉までいきわたったあとの水のゆくえ(結果)」のページを開き、そこに実験結果の写真や観察から得られた気付きを入力していきました。

[発表ノート]は、「実験結果を[カメラ]で撮影して挿入する」「テキストで気付きを入力する」といった、理科の学習に必要な操作が簡単に行える点が優れています。

各自で実験結果をまとめた後は、[グループワーク]機能を使って、班のメンバーで[発表ノート]を共有化します。班で、それぞれの結果と考察を話し合い、班の考察を1枚のページにまとめていきました。

各班の考察を持ち寄り、学級全体で意見交換。考察の妥当性を考える

各班で考察をまとめた後は、いよいよワールドカフェ方式による学級全体での意見交流です。各班の考察は、[発表ノート]の[グループワーク]を使ってまとめているので、班全員の端末、つまり[発表ノート]には同じページが共有されています。交流が始まると、児童は自分の端末を持ってほかの班の場所に移動。自分の班でまとめた考察のページを示しながら、お互いの班の考察を伝え合いました。科学的根拠を示しながら交流したことで、「ほかの班も、自分たちと同じ実験結果が得られ、同じ考察に至っている。自分たちの考察は妥当な内容だろう」と、自分たちの学びに自信をもつ児童の様子が見受けられました。

交流を終え、班ごとにそれぞれ個人が知り得た情報を整理し始めると、あちらこちらの班から、「蒸散」という言葉が聞こえてきました。実は1つの班だけ、最初の班の考察段階で蒸散という言葉に辿り着いていたのです。ワールドカフェ方式による意見交流を経て、その情報が学級全体に広がっていました。タブレット端末の漢字変換を使って、蒸散の漢字表記まで正しく共有されており、驚かされました。1人1台端末や[発表ノート]の活用効果を感じました。

実は、以前、別の単元でミニホワイトボードを用いた交流活動をしたことがありました。結果は、あまりよくありませんでした。ミニホワイトボードでは、班でまとめた考察が1枚しかできないため、意見交流に赴く児童が持って行ける資料がなかったのです。児童たちは自分の記憶を頼りにして説明をするしかなく、充実した意見交流にはなりませんでした。児童たちも同じように感じていたようで、授業後に「[グループワーク]で班のまとめを共有したらいいと思う。そうすれば意見交換がしやすくなる」という提案をしてくれました。本時の実践は、児童たちのアイデアや感じたことを出発点にして構想しています。

[資料置き場]で、児童の思考に合わせてタイムリーに資料を配付

写真1葉の裏側の画像を[資料置き場]から取り出し、気が付いたことを書き込む

本時の学習では、蒸散という言葉の理解だけでなく、葉の裏側にある小さな穴「気孔」から水が水蒸気として出ていくところまで辿り着かせたいと考えていました。そこで、[資料置き場]にホウセンカの葉の裏側の拡大画像を置き、「2つの画像を見て気が付くことはないだろうか」と問いかけました。児童たちは[資料置き場]に追加された2枚の画像を[発表ノート]に貼り付け、画像を拡大したりして思い思いに観察を始めました。気孔の存在に気が付いた児童は疑問に思って[ペン]で丸く囲んだり、気が付いたことをテキストで入力したりしていました写真1

『SKYMENU Cloud』には、資料や画像を配付する方法がさまざまあるのですが、[資料置き場]は、資料を手軽に配付できる仕組みです。子どもの思考や授業の流れに合わせて手早く使えるので、重宝しています。

紙媒体と同じような感覚で[添削]して[返却]し、形成的な評価を返す

終末では、「発表ノート」で本時の振り返りを入力し、[提出]してもらいました。

振り返りを見ると、「茎だけのホウセンカには、水滴がまったくつかない」と予想していた児童が、実際はどちらにも水滴がつくことを知り、認識を改めている様子が見られました。事実を大切にして意見が交流された結果だと思います。

児童が[提出]した振り返りは、授業後に[添削]機能で確認し、[スタンプ]を押したり、[ペン]で書き込みをしたりして[返却]しています。例えば、本校では振り返りにおいて「分かった」「この友だちの意見がいい」など、5つの視点で書かせています。良い記述があれば、紙のノートやプリントのときと同様に、[ペン]で下線を引いたりして形成的な評価を返しています。これまでの紙媒体で添削していたときと同じような感覚で取り組めているので、扱いやすい機能だと思います。

また[発表ノート]で振り返ることの良さは、[添削][返却]の便利さだけではありません。学級全体で振り返りを簡単に共有できることにあります。例えば授業のまとめや次時の導入の場面で[グループワーク]を使えば、ボタン一つで全員の振り返りを共有できるのです。[発表ノート]をうまく活用することで、児童の共感や学びの実感を大切にした授業を実現できると感じています。

[発表ノート]で、ノートチェックや教材づくりを効率化

ここまでお話ししてきたように、[発表ノート]や[添削]などの活用で、授業に変化が生まれています。そして、それは日々の業務の取り組み方や時間の使い方にも変化をもたらしています。

例えば、紙のノートやプリントのチェックです。これまでは、児童からノートやプリントを回収したら、急いで中身をチェックして、帰りの会までに返却するといったことを当たり前のようにしてきました。

今は[発表ノート]に学習のまとめや振り返りを入力して、[提出]してもらっているので、チェックが必要なデータはすべて[提出箱]にあります。ですので、ノートを返却するために慌てる必要がありません。そして教員のタブレット端末があれば、いつでも、どこでも[提出箱]で開いて、[添削]し、[返却]することができます。場所や時間に捕らわれず、隙間の時間を有効に使って取り組むことができています。

教材づくりも同様です。[提出箱]から子どもの[発表ノート]の画面を閲覧して、紹介したいノートを画像保存。画像を[発表ノート]に挿入して作成、といった手順で、簡単に教材や資料が作れるようになりました。

このような作業負担の軽減は、教員の「多忙感」の軽減にもつながっています。以前は紙のノートやプリントのチェック、教材づくりには、まとまった時間が必要でした。「今日一日のどの時間で取り組めるだろうか」と、いつも頭の片隅で心配しながら過ごしていました。業務に追われる感覚があり、落ち着かない気持ちがありました。[発表ノート]を活用し、クラウド上でチェックをしたり、添削をしたりすることを始めてからは、追われる感覚をもつことが少なくなっています。以前よりも気持ちに余裕をもって、授業や業務に臨めていると思います。

ホウセンカの葉に関心をもち、実際に触れて確かめようとする児童

写真2端末から手を放し、興味深そうにホウセンカの葉に触れる児童

ここまで理科におけるICT活用を中心にお話ししてきました。ICTはとても便利なツールですが、その一方で端末上だけで、理科の学習を完結させてはいけないとも考えています。写真2は、本時で気孔のことを知った後、子どもたちがホウセンカの葉を手に取って観察したり、夢中になって表面の薄皮を剥いたりしている様子です。ホウセンカの葉に関心をもち、目の前にある実物に触れ、確かめようとする児童の姿が見られました。

理科の学習において、目の前の実物にきちんと触れ、実物に立ち戻って考えることはとても重要なことです。ICTを積極的に授業に取り入れつつ、理科の事実や実物に触れることを大切にした授業づくりをしたいと考えています。

(2023年1月掲載)