授業でのICT活用
実践レポート

中学校2年 理科生徒1人1台の活用 タブレット端末 × SKYMENU Class 1,000年後の動物・植物のバランスを推測せよ 単元名:生物の移り変わりと進化

有朋 教諭

鳥取県教育センター教育企画研修課 係長
(実践時:鳥取県岩美町立岩美中学校 教諭)

単元計画(全5時間)
第1時

生物(動植物)の進化について理解する

第2時

学習課題を知り、担当記事についてまとめる

第3時

シンプルプレゼン機能で資料に仕上げる

第4時

プレゼンを聞いてマーカーを配置する(本時)

第5時

さらにプレゼンを聞き、最終的な意思決定をする(本時)

※ポジショニング機能を使ってマーカーを配置する場面

本時のねらい

様々な資料をもとに、1,000年後の動物・植物のバランスについて根拠に基づいた予想をするとともに、それをもとに進化について自分なりの考えを記述できる。

授業の実際

進化の学習だが、知識を伝達するような授業ではなく、今自分たちが生きるこの時間も、これからの時代に影響があることを意識させつつ、さらに多様な視点を持たせられる授業をめざして取り組んだ。

まず、ナショナルジオグラフィックのWebサイトから、動物や植物に関する記事を教師が選び、それぞれ異なる内容を印刷し、生徒に配付した【図1】。

生徒は、配付された記事の内容を他の生徒に説明するために[シンプルプレゼン]で資料を作った。その後、[ポジショニング]機能を使い、担当記事をまとめた段階での自分の考えを配置し、自分の考えを文章にした(1回目)。

次に、グループ内で担当記事についてプレゼンを相互に行い、気づいたことをワークシートに記述した。この時点で自分以外の3~4つの記事の内に触れることとなった。ここで再び[ポジショニング]機能を使い、複数の記事について理解した上での自分の考えを再配置し、その配置について自分の考えを文章にした(2回目)。

ただし、このグループでのプレゼンは理科の学習のグループなので、互いに聞き合う内容について自己選択しているわけではない。そこで、今度はワークシートに印刷されている全部のタイトルの中から自主選択し、グループ以外の人のプレゼンを聞く場面を4回設定した。4回のプレゼンの後、最後にもう一度[ポジショニング]機能を使い、自分の考えを配置した後、その判断の理由を文章にした(3回目)。

生徒それぞれがマーカーを配置したところで、一度、[ポジショニング]機能をロック。これ以上変更できない状態にして、学級全体で振り返りを行った。その際、[ポジショニング]機能の[ワード検索]機能を使って頻出語句をランキングで表示させた。これにより教師は、揺れ動いた生徒を素早く見出し、揺れ動いた理由を聞くことができた。

最後に、教師のまとめとして、今回の課題である1,000年後の動物・植物のバランスの予測をもとに、人間も生物全体の生活やさらに進化にも大きな影響を与えている存在であることを確認した。

本時の展開

学習の流れ 主な学習活動 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)
1 本時の流れとめざす姿を確認する。

○ プレゼンを聞き合って、動物・植物のバランスについて考えます。意見が変わること・変わらないことについて、必ず根拠を持って判断しましょう。

  • 思いつきで判断しないことを繰り返し伝える。
2 担当資料のプレゼン内容の最終点検を行う。

○ 担当資料が伝えたいこと、それを読んで自分が思ったこと、その根拠があることと、伝えようと思うことが揃っているか確認しましょう。

1担当の資料読み、プレゼン資料にまとめる。

  • 机間指導しながら、仕上がり状況をチェックし、助言する。
3 自分のプレゼンを踏まえてマーカーを再配置する。

○ 担当資料をまとめた段階で、自分のマーカーを配置し直しましょう。また、そう判断した理由も記入しましょう。

2受付を再開し、マーカーを操作させる。時間を区切って、締め切る。

4 班ごとにプレゼンを行い、気づきや納得したことなどをワークシートに記入する。

○ 班内で順番にプレゼンをしましょう。一人発表が終わるごとに気づいたことや納得したことなどをワークシートに記入しましょう。

  • プレゼン中は、他の生徒は自分のタブレットを伏せるように指示する。
5 班員のプレゼンを踏まえてマーカーを再配置する。

○ 班員の様々なプレゼンを聞いた後、自分のマーカーを配置し直しましょう。変わる場合も、変わらない場合も、判断した理由を記入しましょう。

2受付を再開し、マーカーを操作させる。時間を区切って、締め切る。

6 班員の他のマーカーを見せ合いながら意見交換する。

○ 班員はどのような配置にしているのか、お互いに見せ合い、その理由についても意見交換してください。

  • クラスの分布の様子を短時間提示する。
7 フリーでプレゼンし合い、それぞれの気づきや納得した点を記入する。

○ 自分の関心のあるテーマの人とプレゼン交流して、最終的な判断に向けて視点を増やしましょう。

  • 班員以外の人、少なくとも男女2人ずつとプレゼンし合うように指示する。
8 複数のプレゼンをもとに最終的なマーカーの配置をする。

○ 最終的な自分のマーカーを配置してみましょう。理由は、根拠を組み合わせて書いても構いません。

2受付再開し、マーカーを操作させる。時間を区切って、締め切る。

9 全体の傾向と個人の考えに触れる。

○ いくつか特徴的な結果を見ていきましょう。

  • 動物領域、植物領域が多い生徒の意見
  • 移動の度合いが多かった生徒の意見
  • キーワード検索結果で抽出した生徒の意見

34マーカーの軌跡やワードランキングを提示し、振り返る。

10 進化について改めて考える。

○ 進化についてこの学習を通して考えたことをまとめて記述しましょう。

  • 進化について自分が思うこと
  • そのように判断した理由
11 教師のまとめの話を聞く。

○ 進化の必然性と人類の文明発展と自然界とのバランスなどにも触れる。

考えを明確にし、考えの揺れ動きを記録する[ポジショニング]機能

本時で活用した[ポジショニング]機能は、ある課題に対して、自分はどの位置にいるのかをマーカーで示し、その時のコメントを入力することで、考えの揺れ動きを記録できる機能だ。自分の意思を自分で確認しながら、考えることを支援してくれる。丸いマーカーを配置するだけだが、ぼんやりとしていた思考を明確化できるのだから、マーカーが果たす役割は大きい。加えて、自分の考えをコメントとして文字化することは、根拠を自分自身が認知する機会になる。深い学びで求めている「知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり」につながるものと考えている。

タブレット端末活用のポイント (効果と児童生徒の反応)

1クラスの仲間に伝えるために

シンプルプレゼン

全員に異なる記事を配付し、[シンプルプレゼン]で資料にまとめさせた。「クラスの仲間は自分がまとめたプレゼンも見て、最終的に自分の判断をする」ということを説明されているので、生徒は切実感を持って意欲的、主体的に取り組んだ。[シンプルプレゼン]は、限られたスライド数や文字数で端的に情報をまとめなければならない。今回扱った記事は、専門的な表現もあり、読解に苦慮する生徒もいた。しかし、意味を理解しようと積極的に質問し、自分なりに解釈して端的に情報をまとめる姿が見られた。

2「今の自分」と「前の自分」で対話し、考えを形成する

ポジショニング

[ポジショニング]は、マーカーを軸上に配置する行為を通じて、自分の考えを明確にできる機能だ。本時、[ポジショニング]を使う場面を3回設定した。1回目は「自分の考え」、2回目は「何人かの記事のまとめに触れた後の自分の考え」、3回目は「自分が関心を示した更なる記事に触れた後の自分の考え」を表明させた。様々な視点の知識を得ることで、自分の考えに揺らぎが生まれる。自分の中(今の自分と前の自分)での対話で、考えを明確に形成できた。

3生徒の記述を分析し、振り返りに生かす

ポジショニング(ワードランキング) 

[ポジショニング]には、[ワードランキング]機能がある。生徒の記述を分析し、その中から頻出語句をランキングで表示できる。さらに、ランキング表に抽出された語句をクリックすると、その語句を記述した生徒が太枠で示される。
教員機の画面から、どの生徒が、どの抽出語句を記述しているのかをすぐに確認できるので、全体で振り返りを行う際に役立った。

4軌跡の表示で、考えの揺らぎを把握

ポジショニング(回答の一覧表示、変化の軌跡)

本時のように、1時間の中で何度かに分けてマーカーを配置する活動をすると、生徒たちが動かしたマーカーの変化を軌跡で表示できる。生徒1人ひとりがどの程度変化しているのかは、一覧表示で確認できるので、わかりやすい。例えば、左右に大きく揺れ動いている生徒がいれば、その生徒の画面をタップするだけで、ピックアップして表示することも可能だ。こうした仕組みによって、揺れ動いた生徒を素早く見出すことができ、その生徒から揺れ動いた理由を直接聞くことができた。

こんな場面でも使える! 実践を振り返って

授業後、生徒から「今までの黒板での意見整理は、みんなと似ていればいいと思っていた。今回は1人1台だったので、もう自分もどんな意見を出してもいいんだと思えた。自分の意思が通せるようになった」といった感想が得られた。

これまでの黒板を使った授業では、自分の名前の書かれたマグネットシートを各自が動かして、自分のポジション(考え)を示していた。この場合、他の人の位置も分かるので、多少は他者の配置に影響されることもあった。しかし、本時のように1人1台の環境で、自分のポジションだけしか表示されていなければ、他者の位置に左右される影響は少ない。明確な意思決定の行為は、周りに同調するのではなく、自分の考えを持ち、それを「表現していい」という自己肯定にもつながる効果があった。

また、マーカーの位置情報は記録されているので、画面下部の時間の「スライダ」を動かして、自分の意見(マーカー)が時間とともにどのように変化してきたのかを確認できる。授業の中で自分の変化に出会える場面があるのではないだろうか。

そして、このような自己内対話を通して深く考え、学ぶ学習につなげるために、私たち教師はどのような軸を与え、どのように揺さぶったり、絡ませたりすればよいのかを考えなければならない。今まで以上に「学習課題を精選する力」が求められていると感じる。

(2020年10月掲載)